株式投資の企業別年間リターン解説シリーズ

株式を買う際、配当や優待だけでなく、気になるのが「株価の変動」でしょう。
配当や優待を受けとっていても、株価の変動は社会情勢や企業業績などによって時に大きく動き、リターンに影響を与えるもの。
株式投資において、「株価の値上がり・値下がり」は見逃せない要因です。
今回はJT(2914)について、配当金や株主優待、株価もあわせた「1年前に100株を買った人の本当のリターン」を確認します。
【関連記事】商船三井の株「1年前に買った人」トータル・リターンはいくら?【株主優待・配当金・株価】(2023年3月第2週)
1. JTの配当金のリターンはいくらか
JTの株式を1年前に買い、持ち続けたとすると、「2022年12月期の中間配当と期末配当」の計2回を受け取ることができます。
なお、配当基準日を迎えた時点でリターンが確定したとします。

出所:日本たばこ産業株式会社「2022年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」
今回の検証では、以下のような想定となります。
株式の取得日:2022年3月17日
株式の取得価格:2031
円(取得日の終値)
2022年12月期・期末配当:75.00円
2022年12月期・中間配当:113.00円
100株ベースの配当金のリターン:1万8800円
それでは次に、株主優待のリターンを計算していきます。
2. JTの株主優待のリターンはいくらか
JTは「12月31日基準日」の株主の中から、株式100株(1単元)以上を1年以上継続保有している株主に対し、優待を提供しています。

出所:日本たばこ産業株式会社「株主優待」
株数ごとに以下のように相当額のグループ会社などの商品を提供しています。
100株以上200株未満保有:2500円相当
200株以上1000株未満保有:4500円相当
1000株以上2000株未満保有:7000円相当
2000株以上保有:1万3500円相当
注意したいのが、「株式100株以上を1年以上継続保有」という点です。
JTの場合、2023年度(2022年12月31日基準日)を例とした場合、「2021年12月31日、2022年3月31日、6月30日、9月30日、12月31日現在」の株主名簿に記録されていることと、すべての時点で保有株式数が100株以上であることが条件となります。
なお、JTは次回(2023年)の株主優待商品の発送をもって、株主優待制度を廃止します。
今回の検証では、上記条件を満たさずに優待は受け取れないため、優待のリターンは0円です。
3. JTの株式投資のトータル・リターンはいくらか
以上、配当金と株主優待のリターンについて振り返ってきました。
次に、株価変動によるリターンを計算します。
株式の取得日:2022年3月17日
株式の取得価格:2031円(取得日の終値)
取得から1年後の日付:2023年3月17日
1年後の株価の終値:2722円
100株ベースの株価変動によるリターン:+6万9100円
そして最後に、トータル・リターンを計算します。
配当金のリターン:1万8800円
株主優待のリターン:0円
株価変動によるリターン:+6万9100円
トータル・リターン(金額ベース):+8万7900円
トータル・リターン(%ベース):+43.3%
トータル・リターンは金額ベースで+8万7900円でした。
4. JTの2022年12月期決算を確認
JTの株式の年間リターンは+43.3%でした。
株価、配当金とあわせて利益が出ましたね。
なお、最初に見たように、JTは2023年12月期の配当予想を中間・期末ともに94円、合計で188円と予定しています。
「2022年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」によれば、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比30.8%増の4427億円でした。

出所:日本たばこ産業株式会社「2022年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」
配当金・優待・株価とそれぞれの要素を確認すると、どのような影響が株式投資のリターンにあらわれているかわかりやすいでしょう。
今回確認した通り、株式投資の際は配当や優待だけでなく、株価水準についてもきちんと確認してみてください。
また、今期の業績だけでなく、リスクなどもあわせて総合的に考えましょう。
参考資料
日本たばこ産業株式会社「2022年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」
宮野 茉莉子