名鉄名古屋駅は全面見直しに - ターミナルビル開発の潮流が変わる?

名鉄名古屋駅は全面見直しに - ターミナルビル開発の潮流が変わる?

  • マイナビニュース
  • 更新日:2020/11/22
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○■名鉄名古屋駅の2面4線化計画も再検討される見通し

名鉄名古屋駅「面的にも機能的にも拡張」へ - 車両新造など2017年度も実施

名古屋鉄道(名鉄)は11月10日の決算記者会見で、名鉄名古屋駅周辺で進めていた大規模再開発計画を全面的に見直すと表明した。同駅直上にある、名鉄百貨店をはじめとするビル群を再開発し、南北400m、高さ60~180mの大型ビルを2022年度に着工する計画であったが、代表取締役社長の安藤隆司氏は、「いったん立ち止まって見直したい」と述べた。

これは新型コロナウイルス感染症の影響などによる、同社の経営状況の悪化に伴うもの。11月10日発表の2021年3月期第2四半期決算によると、営業収益で対前年同期比マイナス28.2%の大幅減収に見舞われている。セグメント別では、鉄道など交通事業がマイナス43.0%の減収、レジャー・サービス事業がマイナス70.9%の減収となっており、とくにこの両分野における悪化が著しい。

また、この再開発計画と一体的に計画されていた、名鉄名古屋駅の2面4線化計画も再検討される見通しになった。同駅は通勤ターミナルとしてだけでなく、中部国際空港へのアクセス拠点としても拡充が期待されていたが、海外への観光旅行が事実上、不可能になっている現状では、計画を推進するわけにはいかない。

名鉄名古屋駅の再開発計画は、2017年度から都市計画など必要な手続きが進められており、着工目前にまでこぎつけていただけに、名鉄にとっては痛手だろう。
○■リモートワークの普及で鉄道利用者が大幅減少

新型コロナウイルス感染症は、各方面に大きな経済的影響を及ぼしているが、鉄道においては、利用者数減少の形で如実に表れている。日本では都市の大規模なロックダウンは行われなかったものの、感染症を怖れての外出自粛が広まり、各企業は出社せずとも、自宅などで業務を遂行できる「リモートワーク」を模索。多くの組織が採用するに至った。その結果、とくに通勤利用者の減少が著しく、各鉄道事業者の収支を大幅に悪化させてしまったのである。

新型コロナウイルス感染症が収束しても、各企業が享受したリモートワークの恩恵は大きいため、鉄道利用者数、ひいてはターミナル駅の商業施設の売上げの急激な回復は難しいとみられる。リモートワークは通勤にかかる経費を不要とするばかりか、高価な賃料がかかる事務所などの設備への投資を大きく節約する効果があるからだ。製造業をはじめ、導入が難しい業種もあるが、社員を都心へ通わせる前提でビジネスモデルを構築する企業は、これから減る一方ではあるまいか。

日本の大手私鉄はいずれも、鉄道事業以外に流通・小売事業にも進出しており、ほとんどの会社が都心部のターミナル駅に隣接してデパートを中心とする商業施設を持っている。名鉄百貨店もその典型だ。それが今回の決算でも、名鉄の流通事業はマイナス32.2%の減収という「被害」を受けた。やはりこれも、都心への出控え、ひいては鉄道利用者減少の大きな影響のひとつである。

この状況を受けたならば、大規模な商業・オフィスビルをターミナル駅付近に建設する計画が、大幅な見直しを余儀なくされるのも無理はない。名鉄の決断は早かったと言えよう。

他方、東京では9月9日に、小田急電鉄と東京メトロによる新宿駅西口の再開発計画が発表されたばかりだ。そちらは現在、計画変更などの動きはないようであるが、ターミナル駅至近に大型商業・オフィスビルを建設する計画としては、名鉄と変わりはない。今後の動向が注目される。
○■「繁華街」の構造にも変化があるか

通勤、レジャー・買い物を問わず、都心部への人出が大幅に減少した結果、新宿など都心部の繁華街への影響も顕著に表れている。飲食店の営業自粛、営業時間短縮などは、確実に繁華街の商業施設を訪れる客の減少を招いているだろう。

しかし、休日のレジャーや買い物などへの需要が消失するはずもない。すでに、以前から自家用車利用者の足は、都心部ではなく、おもに郊外型の商業施設へと向かっている。次は、鉄道利用者の足が都心から遠のくとすれば、どこへ向かうのだろうか。

その答えのひとつが、郊外の拠点駅とその周辺に分散して存在する、商業・レジャー施設ではないだろうか。新宿などに比べるとたしかに小規模ではあるが、自宅からは近く、都心と比べれば混雑も少ない。全国的な商業チェーンの進出で、必要にして十分な需要の受け皿もある。「(日常的な買い物なら)都心に出なくても済む」生活こそ、新しい生活スタイルではないかとも思う。

最近の例では、アウトレットモール「グランベリーモール」を“再々開発”した、総合ショッピングゾーン「南町田グランベリーパーク」が挙げられるだろう。2019年11月のまちびらきに際して、同年10月1日には、中核となる東急田園都市線の駅も「南町田グランベリーパーク」に改称された。

西武鉄道でも、2016年に起工した「所沢駅東口駅ビル計画」が進捗。「グランエミオ所沢」の愛称が付き、2018年3月の第1期開業に続き、2020年9月2日に第2期開業を迎えている。まさにコロナ禍のまっただ中ではあるが、郊外の拠点駅を中核とした、計126店舗の大型商業施設が姿を現した。

これに対し、既存の都心繁華街の再開発はいかなる方向性を持って進むべきか。大型商業施設があり、飲食街があり、エンターテインメント施設があって、オフィス街も隣接し、とにかくそこへ行けば、なにか便利で楽しいことがあるというだけでは、もう客の誘引効果としては薄いのではないか。

一方で、原宿や上野アメ横、巣鴨、秋葉原のように、なにか明確な個性があり、郊外では充足できない非日常的な需要を引きつけるのなら、まだまだ都心部にも発展の余地は残っているだろう。

ただし、地元と連動しない、個性を打ち消すような開発は成功するまい。JR秋葉原駅前の再開発が高層ビル中心で、「周辺の景観や環境と調和していない」とネット上で皮肉られた前例もある。慎重な進め方をしている例としては、小田急線の下北沢駅付近を地下化した跡地の再開発を挙げておく。

新型コロナウイルス感染症の奇禍によって、単に大型資本が主導して都心に大型ビルを建てればいい時代は、いきなり終焉を迎えたのかもしれない。

土屋武之 つちや たけゆき 1965年、大阪府豊中市生まれ。鉄道員だった祖父、伯父の影響や、阪急電鉄の線路近くに住んだ経験などから、幼少時より鉄道に興味を抱く。大阪大学では演劇学を専攻し劇作家・評論家の山崎正和氏に師事。芸術や評論を学ぶ。出版社勤務を経て1997年にフリーライターとして独立。2004年頃から鉄道を専門とするようになり、社会派鉄道雑誌「鉄道ジャーナル」のメイン記事を担当するなど、社会の公器としての鉄道を幅広く見つめ続けている。著書は『鉄道員になるには』(ぺりかん社)、『まるまる大阪環状線めぐり』(交通新聞社)、『きっぷのルール ハンドブック 増補改訂版』(実業之日本社)、『JR私鉄全線 地図でよくわかる 鉄道大百科』(JTBパブリッシング)、『ここがすごい! 東京メトロ - 実感できる驚きポイント』(交通新聞社)など この著者の記事一覧はこちら

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