再建が進められている首里城。その正殿の顔ともいえる扁額の再建には見慣れた朱色ではなく「黄色」の漆が使われています。琉球王国時代の扁額の詳細を書き残した古文書の発見によって、令和の扁額は装いを新たに、生まれ変わろうとしています。
【写真を見る】首里城再建へ、琉球王国時代の日記で判明した「扁額」の色 職人が「全く違う」という令和の首里城
首里城再編へ 扁額はこれまでと異なる色に
黄色の地板に据えられた、世土の2文字。首里城再建に向けて職人たちが手がけている扁額の試作品です。かつて正殿に掲げられていた、3点の扁額。「琉球は中山が代々治める土地」だと意味する「中山世土」は、その中央に位置していました。
さて、漆特有の朱色を放つ以前の扁額と比べると、今回の試作品の色は、かなり異なり、黄土色に近いものです。
那覇市歴史博物館 鈴木悠学芸員
「こちらが首里城内にあった扁額を作成した時の日記になっています」
琉球王国時代に書かれた尚家文書。国宝の「御筆御表具并御額御仕立日記」(ぎょひつごひょうぐならびにおんがくおしたてにっき)。扁額や表具を仕立てた伊良波親雲上(いらはぺいちん)が書き残したものです。
平成の復元後に新たに見つかり、解読が進められました。
那覇市歴史博物館 鈴木悠学芸員
「ここを読んでいきますと『鏡黄色塗』と書かれていますので、扁額のベースは黄色で、御字とありますので、扁額に書かれている文字が『金箔磨』になっている」
「鏡黄色塗」という扁額に関する記述から、朱色だと思われていた地板が黄色だったとわかったのです。
那覇市歴史博物館 鈴木悠学芸員
「これまでは我々も朱がベースになっているものだと思っていたので、なかなか文字を見るまでは、黄色があるとも思ってみませんでしたので驚きでした」
「はっきり言って全く違う」今回の方がいいと職人も太鼓判
漆職人 諸見由則さん
「現代のもので色を近づける。それでやったのがこれですよ、これが黄色の顔料を混ぜたやつ」
新たに生まれ変わる扁額制作のリーダー、漆職人の諸見由則さん。黄色の漆を再現しました。
漆職人 諸見由則さん
「要するにこの漆に顔料を混ぜたらこれになります。基本的にもうちょっと明るいですよ。もっともう少し色が出るんですけど。沖縄は特に朱と黒ですよ。器物もそうなんだけど、黄色を塗ることはほとんどないですよ」
かつての原料にはヒ素が含まれるため、同じものは使えません。さまざまな顔料や漆の配合を試して、この黄色の漆にたどり着きました。
試作品は「中山世土」の半分、「世土」を作りますが、それでもこの大きさです。額がつけば、さらに迫力が増します。
実は尚家文書でわかったことは「黄色塗」だけではありません。「御印朱塗」=「御印は朱塗りであること」。そして「御字金薄磨」=題字には金箔が施されることです。
この日は、試作の最終段階「金箔押し」、題字に金箔を貼る工程です。接着剤の役目をする漆を塗り、慎重に金箔を置くこの作業。「金箔押し」を2回行い、「金箔磨き」を施せば、完成です。
この試作品が成功すると、いよいよ来年から本制作に入ります。
漆職人 諸見由則さん
「前回携わっていたので、はっきり言って全く違いますよ。僕はこの方がいいのかなと思って、1日でも早く、焼失したことよりも新しいものを見てもらった方がいいのかなと思っている」
黄色の地板に映える金の文字。色彩と装飾を新たにした、正殿の顔がみえてきました。