アミドやエステルをそのまま原料として使うことができる触媒系を東大が開発

アミドやエステルをそのまま原料として使うことができる触媒系を東大が開発

  • マイナビニュース
  • 更新日:2021/04/07
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東京大学(東大)は、医薬品原料である「光学活性β-アミノ酸誘導体」を合成できる「触媒的不斉マンニッヒ反応」における新たな高活性触媒系を開発し、有機合成化学において40年来の懸案であった、反応性の乏しい「アミド」や「エステル」をあらかじめ活性化することなく、そのまま原料として用いる反応を実現したことを発表した。

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同成果は、東大大学院 理学系研究科 化学専攻の山下恭弘准教授、同・小林修教授らの研究チームによるもの。詳細は、米化学学会が発行する「Journal of the American Chemical Society」に掲載された。

現在、医薬品をはじめとするファインケミカルズについては、石油などの天然資源を原料として作り出す有機合成が重要視されている。しかし、それらの生産に伴って副生される二酸化炭素や有害な金属を含む廃棄物は、地球環境保護の観点から改善が強く求められる状況となっている。こうした課題解決の鍵となるのが、「触媒」の活用であるが、医薬品などのファインケミカルズは、構造上の特徴として、原子や官能基などがつながる部分である「不斉点」が存在することが多く、それら不斉点の効率的かつ立体選択的な構築が困難であったことから、従来手法では多くの廃棄物を副生させることとなっていた。

この問題に対し、不斉点を持つ化合物の高効率的かつ高立体選択的な合成手法として、2001年にノーベル化学賞を受賞した野依良治博士の研究に代表されるような、高活性な不斉触媒を用いるさまざまな触媒的不斉合成反応が開発され、化学産業でも応用がなされてきているという。

「β-アミノ酸誘導体」は、医薬品合成にしばしば使われる窒素原子を持つ重要な有機化合物であり、その効率的な合成法の開発が求められている。

特に、光学活性なβ-アミノ酸誘導体の合成法の1つである不斉マンニッヒ反応は、基本的かつ重要な反応として知られてきた。同反応は約40年前に、カルボニル化合物をあらかじめ活性化しておいてマンニッヒ反応を行う手法が報告されて以降、触媒的不斉反応の開発を含めて多くの研究例が報告されてきたが、事前の活性化に多くの反応剤が別途必要となってしまうため、反応で用いた原料に含まれる原子うち、どのくらいの割合の原子が生成物に含まれたかを示す値である「原子効率性」が低くなってしまうという課題があったという。

そのため、原子効率性の高い、原料のカルボニル化合物をあらかじめ活性化することなく使用する不斉マンニッヒ反応の開発が各所で進められ、原料として反応性の高い「マロン酸エステル」や「アルデヒド」、「ケトン」などを用いる反応が多数報告されるようになってきた一方で、β-アミノ酸誘導体を直接的に合成でき、入手が容易なアミドやエステルを原料としてそのまま用いることのできる不斉マンニッヒ反応は、従来の触媒では活性が低く実現が困難とされてきたという。

研究チームは今回、窒素原子上に置換基を持つイミンと、市販品である「N,N-ジメチルプロピオンアミド」を原料とし、不斉塩基触媒を用いた反応開発を進めた結果、これまでに頻繁に用いられてきた光学活性な「クラウンエーテル」はほとんど機能しないことが判明する一方で、さまざまな金属に対してよく用いられる不斉配位子である光学活性な「ビスオキサゾリン」が有効に機能することを確認したという。

また、有効な触媒種の構築のためには、ビスオキサゾリンに対して、強力な反応性をもつカリウム強塩基である「カリウムヘキサメチルジシラジド(KHMDS)」を過剰量用いることが重要であることも判明。最適条件で、さまざまなイミンとアミドやエステルを用いて反応を行ったところ、高い不斉選択性が発現することが判明したという。

さらに、今回の手法を使ってコレステロール吸収阻害活性を有するβ-ラクタム化合物「SCH-48462」を効率的に合成できることも確認したという。

加えて、今回の触媒系について、核磁気共鳴(NMR)分光法や計算化学的手法を用いて、構造解明を行った結果、ビスオキサゾリンの2つの窒素原子の間に2つのカリウムイオンが均等に収まるような、これまでにない特殊な構造を取っている可能性が示唆されたという。

なお、研究チームでは今回の成果を受けて、反応点上に存在する水素原子の酸性度が低く、地球上に豊富に存在する原料を用いる、さまざまな触媒的不斉合成反応の開拓につながることが期待されるとしている。

波留久泉

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