教員資格にも影響を与えかねない【教員のデジタル化・オンライン化】

教員資格にも影響を与えかねない【教員のデジタル化・オンライン化】

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  • 更新日:2020/10/18
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■教育現場のデジタル化はより加速する

教員の資格要件や雇用制度の規制を緩和する方向に進んでいきそうな気配である。教員免許がなくても学校で子どもたちを教えることができるようになるかもしれないのだが、免許を持つ教員は根本的な問題を突きつけられることになりそうだ。

10月12日、政府の規制改革推進会議の雇用・人づくりワーキング・グループ(WG)は初会合を開き、教員の資格要件や雇用制度の整理、見直しについて議論していくこを了承した。
10月2日には、萩生田光一文科相と平井卓也デジタル改革担当相、河野太郎規制改革担当相の3閣僚による会談が行われ、デジタル教科書への移行と無償化の検討を進めていくことで一致している。しかし、オンライン教育を恒久化していくことについて、平井デジタル改革担当相と河野規制改革担当相は前向きだが、萩生田文科相は異を唱えている。

規制改革推進会議のWGが、教員の資格要件などに関する規制緩和の議論を了承したのは、教育のデジタル化推進を前提にしているからである。デジタル庁を創設しようとしていることからもわかるように、菅義偉首相はデジタル化推進に積極的で、10月7日の規制改革推進会議でもオンライン診療などとともにオンライン教育についても「デジタルのもつ可能性を十分に発揮し、改革をすすめていただきたい」とも述べている。
こうした首相の意もあって、WGで教員資格の規制緩和も議題にのぼってきているわけだ。教育におけるデジタル化の動きは急加速している、といってもいい。

そうした教育のデジタル化を急速に推し進めていくについての問題は、やはり「人」である。新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)対策の補正予算で、ネット環境を整えて「1人1台端末」の実現を前倒しすることになっている。デジタル教科書も、そうした環境整備の一環ということになる。
しかし、環境だけ整えてみても教育のデジタル化が完成するわけではない。それを利用してデジタル化を活かした教育を展開していくためには、人、つまり教員の技術・能力が必要になってくる。

■教員資格の規制緩和へ向かう理由

新型コロナウイルスによる長期休校が強いられた中で、小中学校でもオンラインで授業することを教員は求められた。しかし、多くの学校で実施されたわけではなかった。
6月23日時点での「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた公立学校における学習指導等に関する状況について」を、文科省が公表している。それによると、休校中に「同時双方向型オンライン指導」を実施していた割合は、小学校で8%、中学校でも10%にすぎない。
ネット環境や端末普及が不十分だったという理由もあるが、教員が対応できなかったという理由もある。もちろん積極的に取り組んでいる教員もあったが、オンラインでの授業に対応できない教員も少なからずいた。

そういった教員を責める声もあるが、そもそもオンラインによる授業は想定外であったし、教員にはオンラインを勉強する機会も余裕もなかったのが実態だった。つまり、想定外の休校下において突然「オンライン授業をしろ」と言うほうが無理というものだ。

それにも関わらず、菅首相をはじめとして政府はオンラインでの授業を通常化させる動きを活発化させている。そして、「既存の教員が対応できないのなら、外部から人をつれてきてやらせましょう」というのが教員資格などの規制緩和である。
民間企業などからノウハウのある人材を引っ張ってきてオンラインでの授業をやってもらおうというわけだ。そうなると教員免許という資格は邪魔になるので、規制緩和の対象にしようとしている。

■曖昧な文科省のビジョンに、教員はどう対応すればいいのか

これがストレートに実現されるとなれば、教員免許を持たない人がオンライン授業を行う風景が当たり前になるかもしれない。
そうなった時、教員免許は持っていてもオンライン授業が得意ではない教員の居場所はあるのだろうか。オンラインで授業する力をつけるための研修や自主学習に追われて、さらに教員は多忙化を強いられるかもしれない。それでも力不足と評価されれば、肩身の狭い思いをすることになるかもしれない。

しかも、萩生田文科相をはじめ文科省の姿勢が定まっているとは思えない。
10月9日の記者会見で萩生田文科相は、オンラインで授業を行う際には原則として児童や生徒のそばに教員が同席することが必要だという考えを強調している。
オンラインの授業といえば、子どもたちの端末のモニターの向こうに教員がいる姿を思い浮かべる。しかし萩生田文科相は、モニターと向き合っている子どもたちと同じ場所に教員がいることを求めているのだ。
はたして、それがオンラインの姿なのだろうか。萩生田文科相がオンラインによる授業をどのようにイメージしているのか、まったく分からない。

■オンライン授業には人と環境、そしてゴールが必要

さらに萩生田文科相は16日の記者会見で、後期授業の対面割合が3割以下と回答した国公私立大などを対象に再調査したうえで、対面授業の割合が少ないところについては、11月上旬をめどに大学名も含めて結果を公表すると述べている。これはオンラインを減らして対面の授業を増やせとの「圧力」でしかない。
菅首相などはオンラインでの授業を大いに推進する姿勢をみせているにもかかわらず、萩生田文科相は対面授業を増やせと言っているわけだ。

大学だけでなく、こうした萩生田文科相の姿勢は小中高校にも影響してくるはずだ。オンラインに力を入れようとすれば、対面での授業を求められることになりかねない。積極的にオンラインでの授業に取り組むべきなのかどうか、学校現場は悩ましい状況になってきているのだ。

そうしているうちに、規制緩和が実現すれば、教員免許は持たないがオンライン授業はできる人材が増えていくことになる。
対面での授業を強調する萩生田文科相の意向を汲んで、オンラインへの取り組みが遅れれば、外部からの人材に教員の役割は奪われることになる。いたずらにオンライン化の動きに振り回されのではなく、教員の役割を根本から問い直す必要があるかもしれない。
教員にとって、死活問題につながる可能性すらある事態が進行しようとしている。

前屋 毅

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