
夫婦2人のヨーロッパ車中泊での1か月の生活費を公開(撮影:Dois de Nós)
近年、車で寝泊りをする「バンライフ」や「車中泊」がSNSなどで紹介され、人気が急上昇している。週末の休みを利用したお手軽な車中泊旅から、生活の拠点を車に移して日本一周する本格的なものまで、楽しみ方はさまざまだ。
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しかし、長期の旅となると「1か月の食費や光熱費はいくらなのか?」「ほかにどんなコストがかかるのか」とお金事情が気になる人も多いのではないだろうか。
今回はキャンピングカーで暮らしながらヨーロッパを周遊中の夫婦2人が1か月生活するのにかかった費用を公開する。日本と海外で物価の違いはあるものの、車中泊にはどういったコストが掛かるのか、参考になれば幸いだ。
■人気のバンライフを欧州で満喫!

ヨーロッパの雄大な自然を堪能しながらゆったりと旅を続けている
筆者夫婦が旅を開始して10か月になる。2万5000ユーロ(約397万円)で購入した2005年製の中古キャンピングカーはベッド、キッチン、冷蔵庫、シャワー、トイレを完備しており、暮らしはとても快適だ。
リモートワークで働きながら、時間やルートに縛られないゆったりとした旅を満喫。これまでにイタリア、サンマリノ、スロベニアの3か国を巡ってきた。
現在円安、ユーロ高なので円に換算するとどうしても高く感じてしまうが、贅沢はしないけれど我慢もせず、ゆるく自由なシンプルライフを送っている。今回公開するのは半分をイタリア、残り半分をスロベニアに滞在した2023年9月の生活費である。
※1ユーロ=約159円(11月3日現在)
■1か月にかかった生活費を大公開!それぞれの内訳
⚫︎食費:412ユーロ(約6万5000円)基本は自炊、地域の食材を活用

食費を抑えるために外食は控えて毎日自炊するようにしている
出費が一番かさむのは食費。なるべく低く抑えるためにスーパーで野菜や肉などをまとめ買いして小分けに冷凍保存し、毎日自炊している。海外のスーパーは日本では珍しい食材や商品が多いので買い物も楽しみのひとつになっている。地域の食材を生かした調理も車中泊の醍醐味だ。
⚫︎外食費:95ユーロ(約1万5000円)時には名物料理を堪能!

時にはちょっと贅沢して各国の美味しいグルメを味わうのも大事
ただ、自炊ばかりではつまらないので、時には我慢はせずに地元のレストランに入ってその土地の名物料理を食べ、ヨーロッパ各国のグルメも堪能している。
⚫︎ガソリン代(ディーゼル):142ユーロ(約2万2000円)給油は月2回、割安スタンドで
ガソリン代は移動した分だけ高くなるため、長距離を移動しないようにしており、そこまでかかっていない。給油は月に2回ペース。給油前にネットで調べて、割安なガソリンスタンドを選んでいる。
⚫︎インターネット:100ユーロ(約1万5000円)高額でも必要不可欠!
車中泊生活でもパソコンを使ったリモートワークをしているのでインターネット環境がとても大事になってくる。現在は「スペースX社」が提供しているスターリンクの衛星インターネットアンテナを利用中だ。
月々の費用約1万5000円となかなか高額だが、携帯の電波が繋がらない山奥でも高速インターネットに接続でき、仕事に支障もなく快適な旅をサポートしてくれている。
⚫︎宿泊費、水道、電気代:0 宿泊費と水道代は「ゼロ!」電気代はソーラーで
ヨーロッパでは無料のキャンピングカー施設(車中泊可能駐車場)やRVパーク、ダンプステーションが数多く存在する。これらを利用することによって月々の宿泊費はゼロで済む。
こうした施設では水の補給、汚水処理も無料でできるので月々の水道代もタダ!さらにキャンピングカーにはソーラーパネルとバッテリー、インバーターを搭載しているので、ソーラーパネルを使って太陽光からの再生可能エネルギーを利用し、電気代もタダで済んでいる。太陽のない曇りや雨の日はRVパークにある外部AC電源に繋ぐようにしている。

水は無料で補給できる場所を利用している
⚫︎ガス代:26.50ユーロ(約4200円)シャワーや暖房に使用、交換は月1ペース

ガスは10Lを月1回ほどのペースで交換している
キャンピングカーではガスコンロ、シャワーの温水、ヒーター、そして冷蔵庫にガスが使われている。10Lのガスボンベだと季節にもよるが大体20日〜1か月もつので月1回のペースで取り替えている。冬場はシャワーの温水や暖房ヒーターで消費量が増え、交換期間が早くなる。
⚫︎洗濯代:25ユーロ(約3900円)なるべくためてまとめ洗い!
洗濯はコインランドリーを利用。なるべくためて月2〜3回洗っている。
⚫︎観光費:25.76ユーロ(約4100円)山や海など自然を満喫
駐車場代や施設の入場料などがかかることもあるが、観光はお金のかからない自然スポットが多い。山や海で自然を満喫したり、街中を探索したりとお金をかけずに楽しむようにしている。
⚫︎日常品、消耗品:50ユーロ(約7900円)
トイレットペーパーやシャンプーなどの消耗日用品を購入している。
⚫︎車の雑費や維持費:26ユーロ(約4100円)
キャンピングカーのトイレで使用する薬剤や車の修理などにも費用がかかる。月によっては急な車のトラブルが発生することもある。
■キャンピングカーで夫婦旅、生活費は月14万円!
1か月のトータル生活費は902ユーロ(約14万4000円)。月によって若干の変動はあるが、月1000ユーロから1200ユーロ(約15万9000円〜19万1000円)の間に収まるように工夫しながら旅をしている。
家賃代わりの宿泊費や水道、電気代がタダになっているので随分抑えられている方だと思う。訪問する月や国、季節によってこの金額は変わってくるが、大体毎月これくらいの費用で車中泊旅が続けられている。
※上記で記載した生活費以外にも税金や年金、保険料(医療保険や自動車保険など)がかかってくるが今回のトータルには含まず、車中泊での生活費のみを公開した。
■東京と比べ、安くゆったりと
ヨーロッパでの車中泊旅を始める前は東京都内に夫婦2人で暮らしていたが、その時は家賃代と光熱費だけで現在の生活費に近い金額がかかってしまっていたので、車中泊生活の方が随分と安く生活費を抑えられている。
さらに、都内暮らしの時は外食や交際費、服代、娯楽などにお金をかけていたが、車中泊生活を始めてからは物欲がなくなり、美しい景色や美味しいご飯、自然の中でゆっくり過ごす時間など小さな瞬間に幸福を感じるようになったことも大きい。
■車中泊旅は工夫次第でお得にすることも可能
今回紹介した費用はあくまで筆者夫婦の場合のものだ。コストはシャワー、トイレの有無などキャンピングカーの車種によっても大きく変わってくる。
贅沢に毎日おしゃれなレストランで食事をしたり、観光メインで旅をすればそれなりに高額になるし、シンプルな旅にしたければコストは抑えられる。日本だけでなく、海外でもそれぞれのスタイルや予算に合わせて工夫次第でいろんな形の車中泊旅が実現できるのだ。
自分のスタイルに合わせて生活や環境を自由に変えることができる、それこそがキャンピングカーライフの魅力だと感じている。
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セイノ ルアナ