三菱商事の2022年の株価推移をチャートで確認

三菱商事(8058)の株価は、2022年の4月ごろまで上昇し、その後も6月には年初来高値の4845円をつけました。
その後は何度か下落・上昇を繰り返し、1年を通じて見るとレンジ内推移で横ばいの値動きとなりました。
三菱商事の株価推移(2021年12月30日~2022年12月30日)

出所:各種資料をもとに筆者作成
インフレに伴う資源価格の高騰は三菱商事にとって追い風で、実際に2023年3月期第二四半期決算では第二四半期における過去最高益を実現するなど、業績も好調だった点などは株価の上昇要因になったと考えられます。
しかし、グローバルな株式市場などの悪化は、景気動向の影響を受けやすい商社株全般に対して下落圧力をもたらしたとも思われるでしょう。
今回は三菱商事の2022年の株価についてみていきます。
※記事中で記載の株価は全て終値となっています。
※株式分割の影響は全て遡及修正して株価を調整しています。
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【画像】2022年の三菱商事の株価チャートを確認。S&P500も
1. 三菱商事の株の上昇要因1.資源価格の高騰
米FRBが開催するFOMCにおいてインフレに対する懸念が示されたように、2022年は世界的にインフレ加速が意識された一年でした(参考:FRB「FEDERAL RESERVE press release」January 26, 2022)。
インフレの影響もあり、特に2022年前半にかけては資源価格が上昇しました。2022年2月にロシアのウクライナ侵攻が発生したことも、資源価格の高騰に拍車をかけたと言えるでしょう。
三菱商事をはじめとした総合商社は莫大な量の資源の取引を行っているため、資源価格の高騰は売上高の拡大につながります。実際に2022年3月期の通期決算でも、増益要因の一つとして石炭取引が好調であったことがあげられています。
資源価格が高騰する中で、三菱商事の業績に対する期待感が高まり、株高要因となったと考えられるでしょう。
2. 三菱商事の株の上昇要因2.三菱商事の好決算に対する期待が追い風に
資源価格の動向などから、市場関係者の多くが三菱商事の好業績を期待していたため、株価は秋口から2023年3月期第二四半期決算が発表される11月にかけて堅調な値動きを示したと思われます。
決算を先取りして株価の上昇が進み決算発表後は頭打ちとなったと考えられますが、実際に三菱商事の第二四半期決算は好調な結果となっています。
前年同期比ベースでは+3594億円の増益となり、第二四半期における過去最高益を更新しています。
市況動向から好調が期待されていた金属資源に加えて、自動車や石油・化学など幅広いセグメントが堅調に推移したことが、三菱商事の第二四半期の最高益達成の要因となりました。
3. 三菱商事の株の下落要因1.世界的な景気減速懸念や金融引き締めの波及
世界中のさまざまな原料や商品の売買で収益を稼ぐ商社は、景気動向に比較的敏感な業種とみなされます。
そのため、国内外の景気動向や株式市場の影響を受けやすいという特徴があります。
2022年は3月に米国FRBにゼロ金利の解除が行われたのを皮切りに、高止まりするインフレを抑えるための急速な利上げが先進国で実施されました。
インフレの過熱と、急速な金融引き締めは株式市場にとってマイナス要因です。
2022年半ばごろからは景気減速に対する懸念も高まっていったこともあり、たとえば下図の米国株式の値動きのように、2022年の株式市場は総じて不調でした。
米国株式「S&P500」の値動き(2021年12月30日~2022年12月30日)

出所:各種資料をもとに筆者作成
三菱商事も、2023年1月期第二四半期の決算発表における質疑応答などで、景気動向に対する不透明感に対する懸念を示しています。
2022年の商社株においては、このような世界的な株安の影響を受ける形で下落する局面も見られたと考えられます。
特に米国において+0.75%の急激な利上げが行われた2022年6月ごろには、米国株などが急落したことを受けて、三菱商社の株価も大きく下落したと思われます。
4. 三菱商事の株の下落要因2.慎重な業績見通し
2022年11月に発表された2023年3月期第二四半期決算は好業績だったにもかかわらず、決算発表後の株価は反落しました。この時には、決算と共に発表された業績見通しが保守的だったことも下落要因と考えられます。
資源価格の高騰などにより、2022年11月時点で三菱商事の業績が良好であることはすでに市場に認識されていたと思われます。そのような中、想定より業績の見通しが慎重だったことが、かえって市場に失望をもたらすことになったのではないでしょうか。
実際に、2022年度第2四半期決算説明会の質疑応答においても、業績見通しが保守的であることに対する指摘が出ています。
5. 三菱商事の株は資源価格と世界景気の動向に着目
今回紹介したように、三菱商事の株価は資源価格の動向や世界景気、および株価動向の影響を受けやすい株式といえます。
IMFが2023年は多くの国で経済が減速するとの見通しを示しているなど、今後の景気動向には留意が必要です。
三菱商事の株価を考えていく上では、このような景気動向や資源価格の動向に着目していきましょう。
参考資料
三菱商事「2022年度第2四半期決算 決算説明資料」
新電力ネット「石炭価格の推移」
FRB FOMC「Federal Reserve Press Release」
IMF「世界経済見通し」
LIMO編集部