キヤノン「EOS R3」レビュー 視線入力AFなど革新的な装備の仕上がりは?

キヤノン「EOS R3」レビュー 視線入力AFなど革新的な装備の仕上がりは?

  • マイナビニュース
  • 更新日:2022/01/15
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2021年11月27日、キヤノンのフルサイズミラーレス「EOS R3」の販売が始まりました。現時点で、EOS Rシリーズのトップエンドに位置付けされ、プロフェッショナルカメラマンやアドバンスドアマチュアをメインターゲットとする高性能モデルです。発売前から高い注目を集めていて、現在も強い品薄ですぐには入手できない状況が続いています。今回は、卓越した機能を使用感とともに注目ポイントをチェックしていきます。

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デジタルになって花開いた視線入力AF

EOS R3の注目ポイントのひとつが視線入力。ファインダー内の瞳の動き(=視線の位置)をカメラが検出し、フォーカスポイントの移動選択を行う機能です。過去、キヤノンは「EOS 5」や「EOS 55」、「EOS 7」などフィルム一眼レフカメラで採用した実績がありますが、デジタルとなってからは初搭載となります。もちろん、視線の検出速度や検出精度、使い勝手など、内容は飛躍的に向上しています。

視線入力は「角膜反射法」と呼ばれる方式を採用しています。目には見えない赤外線LEDの光を瞳に投射し、その反射光を視線検出センサーで捕捉。瞳の見ている被写体を検出し、その位置のフォーカスポイントで測距を行うものです。ファインダーをのぞくと視線入力を開始し、瞳を動かすと視線入力のポインターが瞬時にその動きを追うように移動していく様子は、最初ちょっと不思議な感じを受けます。

応答が素早いのもEOS R3の視線入力の特徴です。ファインダー内の被写体を見つめると、間髪を入れずに視線入力用のポインターが移動。スマートコントローラーやマルチコントローラーでフォーカスポイントを選ぶよりも格段に速いうえ、右手がシャッターボタンの操作に集中できるため、シャッターのタイミングを逸することが少なく感じます。

フィルム一眼レフ時代は選択できるフォーカスポイントが5点前後とわずかしかありませんでしたが、EOS R3は2,410万あるイメージセンサーの画素すべてが撮像面位相差AFとして機能するため、結果的に画面上どの位置に視線を持っていってもピントを合わせることが可能です。

視線入力が得意とするのは比較的動きの把握しやすい被写体で、動体ではクルマのレースや鉄道などに特に適しているようです。サッカーやラグビーの選手など動きを読むことの難しい被写体はあまり得意ではないようです。それでも、被写体に一度ピントを合わせるとSERVO AF(コンテニュアスAF)の場合はトラッキング機能で捕捉し続けるので、使い方によっては有効に活用できると思われます。日常的な撮影やスナップ撮影など、ONESHOT AF(シングルAF)でも有効な機能だと感じました。瞬時に思った位置にフォーカスポイントが移動でき、正確なピント合わせが可能だからです。

キャリブレーション機能も搭載しており、撮影者の瞳の動きをより正確に検出できるようになります。人間の瞳は時間や健康状態、周りの環境などによって状況が変わるので、キャリブレーションは撮影の都度行うのがオススメとのこと。ただ、瞳の動きを検知する精度は高いようで、筆者の場合キャリブレーションを行う前の状態でも視線をよく認識してくれました。

視線入力は、今後「EOS R5」や「EOS R6」などの後継機にも搭載されることを期待したいと思います。特に、マルチコントローラーを搭載しない「EOS RP」では、強力な武器になること請け合い。フィルム一眼レフ時代、視線入力はどちらかといえば飛び道具的な存在でしたが、EOS R3では撮影者をしっかりサポートする実用的で頼もしい存在になったといえます。
電子シャッターでも不満のない撮影が可能

電子シャッターがEOS R3のデフォルトになった点も注目です。これまで電子シャッターといえば、動いているものを写したときに被写体がゆがんで写る「ローリングシャッターゆがみ」が現れやすく、静止している被写体ならともかく、スポーツなどの動体撮影では無縁ともいえる存在でした。そのため、ミラーレスでは標準でメカシャッターもしくは電子先幕シャッターとする機種が多く、電子シャッターはどちらかといえばメカシャッターよりも高速のシャッター速度で撮影したいときなど限定的に使われる存在でした(シグマ「fp」シリーズのように電子シャッターのみのミラーレスも存在します)。

しかしEOS R3は、ローリングシャッターゆがみがメカシャッターに迫るほど小さく、さらに撮影コマ速のさらなる高速化にも成功しています。電子シャッター撮影時の最高コマ速はAF・AE追従で30コマ/秒で、これはメカシャッターでの実現は現時点では難しいといえます。最高シャッター速度については1/64000秒を達成しています。メカシャッターは、最高コマ速12コマ/秒、最高シャッター速度1/8000秒で不足を感じさせないものとなります。

電子シャッターでは、高速連続撮影の場合に最初の1コマ目と2コマ目を除いてブラックアウトしないのも特徴。ブラックアウトをしないメリットは、動いている被写体がとにかく追いやすいことで、アングルも安定させやすく感じます。シャッターを切っている感じが一見しないように思われますが、ダミーのシャッター音が秀逸で、1コマ1コマのシャッターを切った気にさせてくれます。ただ、最高コマ速は秒30コマですので、気をつけないと撮りすぎてしまうことも。

電子シャッター、電子先幕、メカシャッターのいずれでも、連続撮影時のストロボ調光制御も可能としているのもトピック。ストロボ撮影時、被写体の明るさなどが変わったときなど重宝するものと思います。もちろん、電子シャッター時のブラックアウトフリーも機能します。電子シャッターについては、EOS Rよりも遅れて登場したニコン「Z 9」はメカシャッターを省略し、完全に電子シャッターのみとしています。スピードモデルといわれるハイエンドクラスのカメラがそのような状況ですので、今後ミラーレスでは電子シャッターが主流になるのは確実でしょう。

画質の追求も手抜きはありません。EOSとしては初となる裏面照射タイプの積層型CMOSセンサーを採用。フォトダイオードの集光効率を高める裏面照射型に加え、回路基板が強化されたことにより、高速の信号読み出しを実現。結果、電子シャッターでもローリングシャッターゆがみを抑えることに成功しています。画素数は有効2,400万画素で、4,000万画素オーバーのカメラが珍しくなくなった今となっては特筆すべきものはありませんが、それゆえ安定した結果の得られやすい画素数といえるでしょう。画素ピッチが大きいので、ノイズレベルの低減や階調再現性の向上にも寄与していると思われます。ボディ内手ブレ補正機構は、レンズ内光学式手ブレ補正機構を内蔵するRFレンズとの組み合わせで最大8段分の補正効果が得られ、高精細な画像の生成をサポートします。

画質といえば、HDR記録も注目しておきたい部分です。HDRディスプレイの再現領域をフルに活かすリアリティある画像の得られるHDR PQ撮影と、0.02秒で3枚撮影し合成するHDRモードを搭載しています。どちらも広いダイナミックレンジが得られるのは当然ですが、特にHDR PQ撮影ではオートライティングオプティマイザ機能も有効になるため、より思い通りの明るさのHDR記録が可能です。本機の得意とする分野ではないかもしれませんが、被写体とじっくりと向き合い、階調豊かな画像を得たい撮影では重宝する機能だと思えます。

縦位置グリップ一体型のボディは、それなりに押しの強い大きさですが、デジタル一眼レフEOSのフラッグシップ「EOS-1D X Mark III」と比較すると、一回りまではいかないもののコンパクトで軽量に仕上がっています。具体的には、EOS-1D X Mark IIIが158.0×167.6×82.6mm、1,440g(幅×高さ×奥行き、重さ)であるのに対し、EOS R3は150.0×142.6×87.2mm、1,015g(同)。EOS R3は奥行きこそ5mmほど大きいものの、それ以外はEOS-1D X Mark IIIを下回っています。特に重量は顕著で、持った瞬間これまでのタテ位置グリップ一体型と異なることがハッキリと分かる軽さです。ボディサイズはもっとコンパクトにできなかったかと思う人もいるようですが、ボタンやダイヤル類の操作性を考えたとき、指の動きを制限するようなことがなく、速やかで確実に操作できる最小限の大きさであるように思えます。

EVFは576万ドットと高精細なものを搭載しており、鮮明でくっきりとした再現性を誇ります。フレームレートも120fpsと高く、被写体の素早い動きを見逃してしまうこともありません。EOS-1D系との併用を考慮し、光学ファインダーに近い見えを再現するOVFビューアシスト機能も目新しい部分となります。液晶モニターは3.2インチ、415万ドットとこちらも高精細なものに。バリアングル式を採用していますが、ハイアングル撮影やローアングル撮影のときは液晶モニターが光軸からずれた位置となるため、ユーザーの好みや使い方によっては不便に感じることがあるかもしれません。

どれから紹介すればよいか悩むほど多機能なEOS R3。今回は、特に気になった機能に的を絞って解説しました。スポーツや鉄道、航空機などの動体撮影のほか、野鳥やポートレートなどの撮影を楽しんいる写真愛好家に対し、視線入力をはじめ強力にサポートするカメラに仕上がっているように思えます。電子部品の調達の遅れなどで製造が予約に追いついてないとの話もありますが、撮影方法を大きく変えるカメラとして人気を博していくと思えます。

著者 : 大浦タケシ おおうらたけし 宮崎県都城市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、雑誌カメラマンやデザイン企画会社を経てフォトグラファーとして独立。以後、カメラ誌および一般紙、Web媒体を中心に多方面で活動を行う。日本写真家協会(JPS)会員。 この著者の記事一覧はこちら

大浦タケシ

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