企業の新卒一括採用が障壁?産官手厚く支援、なのに数伸び悩む日本人留学生

企業の新卒一括採用が障壁?産官手厚く支援、なのに数伸び悩む日本人留学生

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  • 更新日:2017/09/21

高校、大学からの日本人留学生倍増を掲げ、文部科学省が展開している留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN(http://www.tobitate.mext.go.jp/)」。2013年のスタートから達成時期に設定した2020年まで、折り返しを過ぎましたが、目標値に届くには留学者数増加の勢いがまだ足りません。

伸び悩みの原因はなんでしょうか?

「グローバル化に対応できる若者が足りない」

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文科省トビタテ!留学JAPANのメーンプロジェクト、日本代表プログラム派遣生による第3回留学成果報告会=8日都内

そもそも4年前、文科省が「トビタテ!留学JAPAN」と銘打ち、東京五輪・パラリンピック開催の2020年までに、年間日本人留学生数を大学生6万人(同時期)から12万人、高校生3万人(同)から6万人に倍増を掲げたのは、どんな理由があるのでしょう。

ひとつは日本企業のグローバル化です。アジア地域に進出している企業数は2001年6345社から2013年には2.5倍の15874社に増えるなど、海外に進出する企業は急増しました。しかし一方で近年、世界における日本の存在感の低下を示す統計データが並びます。

IMF(国際通貨基金)の調査によると、一人当たり名目GDP(国内総生産)は2000年の3位から大きく後退(2016年22位)。また、OECD(経済協力開発機構)の調べでは、日本からの海外留学生は、不況を理由に企業からの社会人留学が減ったことなどもあり、2004年約8万3千人から、2012年には約6万人まで減少、28%も落ち込みました。

加えて、世界経済フォーラム・ダボス会議に日本から選ばれたヤンググローバルリーダーズたちからも「同世代の他国のリーダーに打ちのめされた」、「高校生、大学生から世界のうねりを体験させるべき」という意見が寄せられました。国や企業などでは「グローバル化に対応できる若者が足りない」という共通認識が強まったのです。

こうして、産官学出身者約40人がチームを結成。2014年に文科省初の本格的な産官協働プロジェクトとなる「トビタテ!留学JAPAN」の「日本代表プログラム(http://www.tobitate.mext.go.jp/program/index.html)」を、留学機運醸成のための主要事業と位置づけ、始動しました。

日本代表プログラムは実践活動が必須 ── 企業が寄付金や運営サポート

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トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラムの応募者・合格者の状況=文科省トビタテ!留学JAPANホームページより

日本のグローバル化の核になる人材をつくる ── 。日本代表プログラムにはことし6月末までに支援する民間210企業や団体から116.8億円の寄付金が集まりました。民間の資金で運営することで、語学力や成績重視といった従来の国費留学とは異なる自由度が高い内容で、学生が海外体験を積むことが可能になっています。

例えば、採用で重視するポイントは「熱意、好奇心、独自性」の3要素。留学は究極のアクティブラーニングという考えから、希望者はインターンやボランティア、フィールドワークなど多様な実践活動を必ず含んだプランを最短1カ月から2年以内の期間で自由設計し、応募。寄付した民間企業が書類と面接による選考審査を担当します。泊りがけで実施する事前研修と留学終了後の振り返り、帰国生によるコミュニティ活動まで、支援企業がきちんとかかわり続けることも大きな特色です。

トビタテ!JAPANプロジェクト広報の西川朋子さんは「やる気や情熱といった測りにくいものが基準になっていますが、企業からの貴重な寄付金を使っている以上、学生には『グローバルリーダー』、留学先での『日本のアンバサダー(大使)』、そして帰国後は『留学のエヴァンジェリスト(伝道師)』の3つの役割を果たせるよう、徹底的にマインドセットしています」と説明します。

現在大学生は年2回、各500人募集。そのうち産業界などから特に要望が強い理系・複合融合系人材コースに約半数を割き、ほかには新興国、世界トップレベル大学、多様性人材の3コースを用意しています。2015年からは地域企業のインターンシップも組み合わせた地域人材コース(現在20地域)と高校生コース(年1回募集、留学期間は2週間から1年)を増設。本年度は、理系・複合融合系人材コース内に新たに先端テクノロジー人材枠(人工知能やロボットなど6分野)を設け、より将来の活躍が期待される可能性の高い人材を送り出せるよう、内容の拡充を図ってきました。

こうした自主性と挑戦重視、そして所属先は実体験ができれば学校でなくてもいい、という高い自由度の留学を返済不要の給付型奨学金付きで可能にしたこと、加えて事前事後研修など手厚い企業支援も魅力となり、日本代表プログラムへは毎回募集枠の3~4倍が応募。2020年までに、企業から200億円の寄付、学生1万人派遣を目標に、現在233大学の大学生3048人と417高校の高校生1315人の渡航をかなえています(いずれも選考決定者数を含む)。

留学全体は伸び悩み 「就活に障壁」「海外赴任はしたくない」目立つ“内向き”

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日本人留学生数の推移(文科省「高等学校等における国際交流等状況調査」、独立法人日本学生支援機構「協定等に基づく日本人学生留学状況調査結果」から作成)

「日本代表プログラム」の認知度は上がっていますが、国内全体の日本人留学生数は、大学生8.4万人(2015年度独立法人日本学生支援機構)、高校生は海外テロが頻発した影響もあり、2015年度は2年前に実施した前回調査結果よりも減少し、3.6万人(文科省)でした。2020年までの倍増目標にはどちらも伸びが足りていない状況です。

留学生が大きく増えない要因としては、何が考えられるのでしょうか。トビタテ!留学JAPANが今年6月に実施した調査結果(https://mext.s3.amazonaws.com/2017/06/20170629.pdf)によると、留学未経験の学生の54.7%が、「新年度に企業が新卒一括に採用する制度が障壁になる」と回答、留学の時期によっては帰国後の就職活動に間に合わなくなる懸念が、二の足を踏む要因のひとつになっているとわかりました。

しかし、同じ調査で、企業の採用担当者の75.3%は「留学するために留年や休学することは採用においてマイナス評価にならない」と回答。「留学経験者が仕事で役に立つ」が8割、「大学時代に留学はした方がいい」が84.4%に達するなど、企業が求める新入社員像と、就活のために“ストレート”卒業にこだわって留学を避ける学生の考えにズレが生じていました。

留学を見送る別の原因も考えられています。日本の若者の「内向き志向」です。産業能率大が実施している「新入社員グローバル意識調査」によると、「海外で働きたいとは思わない」の回答は2004年3割を切っていましたが、その後増え続け、2015年は63.7%(前回比+5.4ポイント)と、過去最高になり、海外生活に対して“及び腰”になっている様子がうかがえます。

ただ新入社員が国際化を軽視しているわけではないことも調査からはみてとれました。新入社員の大多数は「日本企業はグローバル化を推進すべきだ」(73.4%)、「すでに語学を学んでいる(これから学びたい)」(71.6%)と、答えています。

西川さんは「留学は一部のエリート学生や英語好きの学生だけの特別なことではなく、通過儀礼にしたい。残り3年で全体の留学生数を大きく増やせるよう巻き返したい」。ひとりでも多くの意欲ある学生が国外へ“トビタテ”るかどうか、折り返しをすぎた留学キャンペーンの真価が問われるのはこれからです。

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