「社会保障は性風俗に敗北した」を考える

「社会保障は性風俗に敗北した」を考える

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  • 更新日:2017/11/15

●社会的養護としての性風俗やJKビジネス

近年、メディアで特別養子縁組や児童養護施設などの「社会的養護」の領域に焦点が当てられる機会が増えている。 社会的養護とは、保護者のない子どもや虐待等の理由で、家庭で生活できない子どもを、保護者に代わって社会が養育・保護する仕組みである。 家族というセーフティネットから弾かれた結果、児童養護施設や里親家庭などの社会的養護のもとで生活する子どもたちには、手厚いケアが必要とされる。

しかし現実は、制度の不備や社会資源の不足などの理由で、子どもたちが十分な社会的支援を受けられない状況に置かれ続いている。 そんななか、性風俗やJKビジネスの世界が、保護者もいなければ学歴もない十代の未成年者にとって、良くも悪くも社会的養護の制度上の欠陥を埋める機能、そうした若者の受け皿としての役割を果たしてきたとも言える。それはいったいどういうことだろうか。

「これからの性風俗産業の進むべき方向性を考える」として開催された「セックスワーク・サミット2017秋」では、子どもたちが施設を退所した後のアフターケア・特別養子縁組・少年司法の現場から、社会的養護の現状、及び性風俗との関係を可視化した上で、社会福祉に携わる専門職や支援者、風俗業界関係者、そして、個々人が同じ社会に生きる一員として、何ができるのかが議題にあがった。 アフターケアの現場から見えてくる社会的養護と性風俗の関係、そして性風俗の世界で働く若者に対して支援者が取るべき姿勢について、アフターケア相談所「ゆずりは」所長の高橋亜美さんは、こう語っている。

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●複合的な困難を抱えた女性たちが性風俗で働く理由

アフターケア相談所ゆずりはでは、児童養護施設や里親家庭を退所した方の相談支援事業を行っております。社会福祉法人子供の家が運営母体となって始めて、7年目を迎えております。

ゆずりはの昨年度の相談者数は実数として400人程度、相談件数は1万件~2万件。そのうち女性からの相談は7~8割程度です。最近は男性からの相談も増えています。

女性からどんな相談が来るのか。はじめは電話かメールで相談が来ます。体調が悪い、引っ越したいけど保証人がいない、彼氏と別れたい、お金を貸してほしい。そんな相談から始まります。

でもそうした相談の背景には、真の相談があります。性虐待や性被害を受けた、実は妊娠している、中絶したいけれどお金がない、パートナーから暴力を振るわれている、性風俗で働こうかどうか迷っている、性風俗を辞めたいけどやめられない、一般の仕事先でのセクハラやパワハラやモラハラ。女性性であるがゆえに付随した相談です。

相談内容が複合的で、暴力被害や性被害が多いのが女性の相談の特徴です。性風俗で働くかどうか迷っている、辞めたいけれどもやめられないという相談も、それほど多くは無いですが、一定の割合で受けています。

一般家庭で育った子に比べて、施設退所者の子が性風俗で働く割合がどのくらいなのかは、データが無いので分からないのですが、その背景には就労状況の不安定さや生活苦があります。性風俗の仕事は、働く上で資格が問われません。中卒、高卒、資格なしでも問題はありません。保証人も要りません。お金が一文無しという状況で職場に飛び込んでも、即金で支払ってもらえたり、前払いでもらえることもある。住居や保育の設備も完備していたり、最低限の生活が即完備されるという仕組みがある。

ただ、本当に性風俗で望んで働いているという人は、私が出会ってきた中ではいません。支援が整っているから性風俗で働くことを選んだという方がほとんどです。

一方で、虐待などのトラウマがあることで「自分は生きていても仕方がない」「誰からも大切にされない」と考えていたけれど、性風俗で働くことを通して、初めて誰かに大切にされた、必要とされた、居場所がある、死ななくてよかった、自分でもこうやってお金が稼げるんだということを話してくれる退所者の方もいます。

もちろん劣悪な性風俗の職場もあるので、大切にされている実感など芽生えないお店もあると思いますが、総じて困難な状況の方が求めていることに対して、性風俗のお店がきめ細やかにサポートのためのシステムを整えていると言わざるを得ない。

●社会保障は性風俗に対して後れを取っている

「社会保障は性風俗に敗北した」という言葉があります。私は本当に、心からそう思います。ゆずりはだけでは全ての相談を解決できないので、相談者の方が公的な支援を適切に受けられるように同行やサポートをするのですが、一般の公的な支援で、性風俗と同じようなサポートが受けられることはまずない。本当に困った時に、役所の窓口や女性相談の窓口では相談しても受けられないサポートを、性風俗がきちんと保証しているという一面があると思います。

全ての性風俗のお店が安心安全に働ける場だとは言い切れないのですが、社会保障は性風俗に対して支援の面で後れを取っていると言わざるを得ない。自分も支援者として恥ずかしい、悔しい思いでいます。

ゆずりはでは施設の職員や学校の先生からの相談も受けていますが、「教え子や子どもが退所した後風俗で働いている。それをやめさせたい。でもどれだけ説得してもやめないから、ゆずりはさんからやめるように説得してください」という支援者からの相談が、必ず年間に何件か来るんですね。

危険を伴うような仕事や職場は実際にあるので、その心配は確かにその通りです。でもやめさせることだけが支援ではない。「やめなさい」というからには、性風俗で働いている子が、他の仕事を探すための求職活動をする間の生活の保障、住居の保障、経済的な保障が必要になります。もしかしたらメンタルのケアも必要かもしれない。

そういった支援を、「一刻も早くやめさせたい」と言っているあなたたちが担ってもらえるんですか。そうした用意があるならば、私たちも考えなくもないのですが、とお伝えすると、必ずだんまりになる。「心配だ、心配だ」というのは、あなたが心配なだけでしょう、と。自分の心配を相手に押し付けているだけです。

彼女たちは生きていくため、家賃を払って食っていくために必死でやっている。プライドを持ってやっている子もいるので、頭ごなしに否定するような価値観の押し付けをしてはいけない。本当にその子のことを思っているのならば、心配をしているのならば、今彼女に対して性風俗のお店が保証してくれている支援の代わりに、できることをやるべき。ただの心配は何の役にも立たない。

そういうやり取りを支援者の方としていると嫌われてしまうのですが(笑)、支援をする側はそういう点に敏感でならなければいけない。彼女たちが働いている背景を見極めていけば、そんな簡単に「やめなさい」という言葉は出ないはず。そういった意識は、どれだけ経験を重ねたとしても、忘れずに持ち続けたいと思っております。

●性産業のみがリスクのある職場ではない

ただ、手放しで性風俗で働くことを奨励しているわけではもちろんありません。働くことのリスク、例えば転職しづらくなる、履歴書に書けなくなる、現場で問題を抱えた時、搾取されたりした時に相談しづらいというリスクがあります。はじめはガールズバーで働き始めた子が、さらに過酷な現場に従事せざるを得なくなることもある。

言葉は悪いですが、性風俗の世界には女性の賞味期限みたいなものがあるので、そこを過ぎると、さらにもっと過酷なことを求められたり、危険なことが伴う中で働いていかなければいけない。でも「自分ではこの仕事しかできない」と自分で自分を洗脳してしまったり、職場で思いこまされたり、なかなか抜け出せなくなる人も少なくありません。性風俗で働く女性から、予期せぬ妊娠や中絶、暴力、薬物の使用などの相談をもらったことがあります。

ただ、性産業のみがリスクのある職場ではない。職場でのトラブルや搾取に関するゆずりはへの相談で、性風俗の仕事で働いている方が多いかというと、少ない。「こんなに多いんですよ」ということが言えたらいいのですが、一般の企業の中でも、本当にひどい労働環境で働かされているとか、こんな雇用条件でいいのか、と思うこともあります。性産業の仕事だけがリスクのある職場ではない、ということもお伝えしたいと思います。

イベントレポート〈後編〉へ続く。

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