ワニ(鮫)の味はクロコダイルによく似ている――高野秀行のヘンな食べもの

ワニ(鮫)の味はクロコダイルによく似ている――高野秀行のヘンな食べもの

  • 文春オンライン
  • 更新日:2017/09/26
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イラスト 小幡彩貴

今まで食べた肉でワニ(鮫)ほど不思議なものはない。考えれば考えるほど、ワニって何? と疑問が深まっていく。第一の理由は調理法によって味や食感が極端に変わることだ。

前号にも書いたように、広島県三次(みよし)市のフジタフーズでワニ加工食品をいくつか買って帰り、友だちとワニパーティを行ったが、“ワニ肉七変化”とでも言うべき、味のちがいには一同が驚かされた。

まず、「ワニチャーシュー」。チャーシューといっても豚のそれとは「スライスされている」ということしか似ていない。藤田さんが相当に工夫を凝らして開発した料理で「製法は秘密」とのことだが、色はピータンのような黒系。皮及び皮下脂肪の部分らしい。口に入れると、固いコラーゲンというのか軟骨なのか、コリコリして、沖縄料理のミミガー(煮た豚耳のスライス)にそっくり。パーティにはたまたま宮古島出身の女性がおり、「これ、ミミガーですよ! ああ、ミミガー食べたの久しぶり! なつかしい〜」と感激してしまい、いくらミミガーじゃないと言ってもそれこそ“耳”を貸さなかった。

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藤田さんの工夫が“ワニ肉七変化”を生む

いっぽう、ワニソーセージは、匂いも味も、魚肉ソーセージそのまんま。藤田さんによれば、八十パーセントがワニ肉で残りはつなぎの鶏肉だという。ちなみに一般の魚肉ソーセージは主にタラ、タチウオ、ホッケなどで、つなぎとして大豆やデンプンなどを使用しているらしい。まるで成分がちがうし、だいたいワニ(鮫)は魚類とは全く異質の肉のはずだが、どういうことなのか。

結局、チャーシューやソーセージは藤田さんの“個人技”であるし、製法も公開されてないから、これ以上の探究は困難。ただ、ワニ肉はいろいろな肉に化ける能力があると言っておこう。

一つだけ、作り手の能力と関係がないワニ料理を一つ紹介したい。すなわち「ワニの炙り串」。生肉を串に刺して炙ってから、ニンジン、大根、牛蒡などと一緒に甘辛く煮込む。

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ワニの炙り串

藤田さんによれば、ワニ肉に関する最も古い記録が炙り串だという。江戸時代、山陰から来た行商人が山賊に殺された事件の調書に「ワニの炙り串を売りに来た」と出てくるという。

江戸期以前は資料がなくて不明だが、もっと昔から炙り串は食べられていたかもしれない。それこそ、三次周辺を本拠地にしていた戦国大名・毛利元就だって、ワニの炙り串が好物だったとしても不思議はないのだ。

ともかく、本来的には三次市伝統のワニ食は炙り串である可能性が高い。炙り串は昭和の終わりぐらいまで三次市で食べられていたという。

私たちも真似してみた。まず、フジタフーズで買ってきた生のワニを七輪で炙り、それを鍋に入れたのだ。一同の感想は「鶏のささみっぽい」「鶏と魚の中間」「脂っ気のない鶏肉」などだったが、私の妻は一言「これ、ワニに似てる!」。

え、やっぱり!? と思ってしまった。彼女の言うワニとは「クロコダイル」である。ベトナムで食べたという。実は私もフジタフーズでワニバーガーやワニの煮た肉などを食べたときから同じ事を思っていた。でも、あまりに出来すぎた話だし、自分の味覚に自信がなかったから言わずにいたのだが、鋭敏な味覚を持つ妻までが断言するからには信憑性は高い。クロコダイルの肉は鶏と魚の中間っぽいものだから、他の人たちの感想にもそぐう。彼らもクロコダイルを食べたことがあればそう思うんじゃないか。

暫定的な結論。三次市で最も伝統的なワニ料理、それはワニにそっくりだった……。信じられないなら、ぜひ三次市のワニと爬虫類のワニを食べ比べてほしいと思う。

(高野 秀行)

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