中国の自国第一主義 自動車「大手3社」が戦略提携できる強み

中国の自国第一主義 自動車「大手3社」が戦略提携できる強み

  • ZUU online
  • 更新日:2017/12/08

中国では新しい産業、新しい企業が厳しい自由競争の中から、次々と発生しているとこれまでの連載で伝えてきた。規制のないジャングルのような世界で、生存競争が繰り広げられている。

国土は広く、人口は多い。規模が大きいといった点で日本とは大きく異なる。しかし、それ以上に大きな違いは多様性があるという点である。それは経済でも同様である。

しかし、それは中国という巨大な国のイチ側面にしか過ぎない。国家の強いリーダーシップによって経済がけん引される“国有企業が国家の根幹産業を握っている”といった側面を見ていこう。

【過去の連載はこちら】
・日本人が知らない中国最前線
https://zuuonline.com/authors/tashironaoki

■ハイテクは自由、基幹産業は管理

国有企業改革の基本的な政策の中に“抓大放小”というものがある。直訳すれば、大きなものはしっかりとつかみ、小さなものは離すということだが、その趣旨は、国家が管理した方が有利な少数の重要産業、企業については集中して管理するが、そうではない企業については市場経済に任せるといった意味である。

抓大に当たるのは、電力、石油・天然ガス、鉄道、航空、通信、軍需、海運、薬品流通、鉄鋼、石炭、非鉄金属など。こうした産業では、中央政府が管理監督する国有大型企業が中核となっている。

国有企業の経営に問題がないわけではない。改革開放が始まってから現在に至るまで国有企業改革が延々と続けられている。現在では、株主所有構造を変えるべく、混合所有制改革が集中的に行われている。

株主として国内外の民間資本を取り入れることで、株主が企業に対して求める収益最大化の要求レベルを押し上げるとともに、コーポレートガバナンスを強化し、企業としての総合力を高めようという趣旨である。簡単に言ってしまえば、民営化を更に進めるといったことであるが、あくまで国家が企業を掌握した状態で効率化を図るのであって、最終的に完全な民営化がゴールではない。

共産党は10月に行われた共産党大会で、長期経済計画を発表している。今世紀中頃までに“社会主義現代化強国”を作り上げるとしている。社会主義を現代化することで強い国家にするといった意味である。もう少し具体的に言えば、中国は国家の基幹産業においては国有企業を残し、その国有企業を中心に国家資本主義を貫くということである。

■提携の中身は?

中国第一汽車集団(第一汽車)、東風汽車集団(東風汽車)、重慶長安汽車股フェン有限公司(長安汽車)は12月1日、戦略提携フレームワーク協定を結んだ。

この3つの組織はいずれも国有企業であり、中国を代表する自動車メーカーである。第一汽車、東風汽車は中国三大自動車グループの一つに数えられており、長安汽車はそれらに続く大手五大自動車グループの一つに数えられている。

具体的な提携内容は以下のとおり。

(1)新エネルギー、スマート化、インターネット化、軽量化などの先端技術について、共同の研究開発プラットフォームを作り、そこに各社出資するような形にする

(2)既存の生産工程において、共同仕入れを行ったり、物流領域での提携を深めたりする

(3)海外市場開拓において、積極的に“一帯一路”戦略を実践、輸出製品、販売ネットワーク資源、海外ビジネスパートナー、海外製造資源、国際物流などの面で提携を深める

(4)自動車の共有、相乗りサービス、など新たなビジネスモデルを共同で研究し、金融領域で提携し、スマートシティ、スマート交通システムなどの建設に共同で参画する

中国第一汽車集団は組織としては持ち株会社であり、傘下に4つの上場会社を持ち、自社ブランド車を生産する一方、トヨタ、フォルクスワーゲンなどと合弁会社を持ち、外資ブランド車を生産している。

東風汽車集団は2005年の組織改革によってグループ全体を一つの組織としてまとめた上で香港市場に上場している。A株上場子会社を通じて自社ブランド車を生産する一方で、ルノー日産、ホンダ、PSA、起亜などと合弁事業を行っている。長安汽車はA株(B株同時発行)上場会社で、自社ブランドのほかマツダ、スズキ、フォードなどとの合弁車を生産している。

自動車産業では早くから外資導入が進められるなど、大型基幹産業の中では民営化が進展している産業である。そのような自動車産業でも国有企業が強化されるような形での産業再編が行われそうだといった点で少し意外である。

■自国第一主義は中国の基本戦略

注目すべき点は、お互いが、いずれも香港、或いは本土の上場会社を内部に持つ競争相手のはずだが、大きな根っこの部分で経営が繋がっていたことだ。現在の第一汽車の徐留平会長は今年の7月まで長安汽車会長であり、その親会社である中国兵器装備集団の会長であった人物である。また、現在の東風汽車の竺延風会長は、前職は吉林省副書記だが、その前は第一汽車会長を務めていた。三社のトップ人事が交差している。こうした人的繋がりがあって、初めて全面的な提携が可能になったといえよう。

今回の提携発表の背景には、国家が新エネルギー自動車政策を加速させていることが挙げられる。また、11月のトランプ大統領訪中の際、中国は自動車対外政策を緩和、段階的に自動車関税を引き下げ、2018年6月までに自由貿易試験区において専用車、新エネルギー自動車の外資比率制限の開放に関するテストを実施するとアメリカ側に約束している。内外の自動車メーカーとの競争は今後、厳しくなるのは必至といった状態である。

世界各国は中国に対して市場開放を迫るものの、中国は自動車産業のような重要産業ではなかなか応じない。今回は、アメリカの強い要請があり対外開放を進めることにしたが、一方で国有企業の競争力を高めることも忘れていない。トランプ政権が自国第一主義を唱えているが、それは中国の基本的戦略の一つでもある。

田代尚機(たしろ・なおき)
TS・チャイナ・リサーチ 代表取締役
大和総研、内藤証券などを経て独立。2008年6月より現職。1994年から2003年にかけて大和総研代表として北京に駐在。以後、現地を知る数少ない中国株アナリスト、中国経済エコノミストとして第一線で活躍。投資助言、有料レポート配信、証券会社、情報配信会社への情報提供などを行う。社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。東京工業大学大学院理工学専攻修了。人民元投資入門(2013年、日経BP)、中国株「黄金の10年」(共著、2010年、小学館)など著書多数。One Tap BUY にアメリカ株情報を提供中。HP:http://china-research.co.jp/

ZUU online

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

経済カテゴリの人気記事

グノシーで話題の記事を読もう!
みずほFG株価に「取り残され感」 ライバルと決定的に違う「体質」
大塚家具、経営危機へ...久美子社長の改革失敗、父・勝久時代より経営悪化
業界3位に転落したマツキヨがなぜ、過去最高益を出せたのか?
JR東日本とセントラル警備保障、「まもレール」のサービス対象駅拡大 7線111駅に
米ディズニー、フォックス買収で正式合意!
  • このエントリーをはてなブックマークに追加