間もなく、中国が3千万人の「余った男たち」で埋め尽くされる

間もなく、中国が3千万人の「余った男たち」で埋め尽くされる

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2018/06/21
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「一人っ子政策」の副作用

1949年の建国以降、中国はこれまで計6回、全国的な人口調査を行っている。

過去6度の出生者の男女比(女子を100とした場合の男子の出生数)は、下の棒グラフの通りだ。

世界の出生数を見ると、男子が女子より多いのは各国に共通な現象で、国連では「102から107の間」を正常な国家と定義づけている。

例えば2016年の日本の出生数は、男子50万1880人、女子47万5098人で、男女比は105・6だ。

だが中国の場合、120を超えた年が近年で3年もあり(04年、07年、08年)、明らかに「異常国家」である。

これは中国が長年にわたっておこなってきた「一人っ子政策」、つまり、夫婦が生んで育てる子どもを一人に制限する政策がおこなわれてきたために生じた、いわば「副作用」である。

この政策によって、「どうせ一人しか生めないのなら、男の子を生もう」という夫婦が激増した。特に、働き手や跡取りを求める農村部において、この傾向は顕著になっていった。

その結果、中国は2020年には、結婚適齢期とされる20歳から45歳までの人口で見ると、男性の数が女性の数よりも、3000万人も多い社会となってしまうのだ。

3000万人! 実に、日本の総人口の約4分の1にあたる数だ。

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「持ち家のない男」は話にならない

中国を代表するネットメディアの一つ、テンセント・ネット(騰訊網)は、早くも2011年8月18日付で、「3000万人独身男の憂鬱」と題した長文の記事を掲載している。

その要旨は、次のようなものだ。

〈それは言ってみれば、北京の第三環状線の中にマンションを買いたい膨大な人々と、供給されるマンションの数とが釣り合っていないようなものだ。

結婚適齢期の女性の『供給』が、結婚適齢期の男性の『需要』にマッチしていないのだ。

その結果、どうなるかと言えば、やはりマンション問題と同じようなことになる。すなわち2020年には、3000万人もの独身男性が出現することになる。

総じて言えば、男女の数の不均衡は、女性を追い求める男性に、さらに高額のコストを強いることになる。

これは結婚適齢期の男性たちが共通して支払わなければならない代償なのだ。だがそれでも、3000万人もの『不幸者』が出ることになる〉

この記事が出た2011年、私は北京に住んでいた。勤めていた日系文化公司の未婚女性たちに、「将来どんな男性と結婚したい?」と聞くと、まるで判で押したように、「マンションを買える男性」という答えが返ってきた。

中国語に、「成家立業」という成語がある。

「家庭を持って生業を立てる」という意味だが、「家庭を持つ」ことを「家を成す」と書く。中国の女性は、マイホームを買えて「家を成せる」男性と結婚したいのである。

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余った男

ところが、いまや北京や上海などの都心部では、マンションの一部屋を購入するのに、1平米あたり10万元(約170万円)以上という物件も出てきている。

中国のマンションの面積表示は、共有部分を含んでいるので、だいたい7掛けすると、日本のマンションの面積表示になる。

つまり1平米あたり10万元として、70平米のマンションを買えば、日本の50平米のマンションを買ったのと同様となる。

日本円に計算すると、約1億2000万円!

一方、北京や上海で大卒の初任給は6000元程度、すなわち約10万円にすぎない。つまり給料を100パーセント、マンションの購入にあてたと仮定しても、100年近くもかかるのである。

これではマンションなど買えるはずもない。

そのため結婚適齢期になっても、マンションが買えずに結婚できない男性が、続出しているのである。

そこに、女性に較べて3000万人超過というハンディキャップが加わる。まさに、泣きっ面に蜂だ。

そんな彼らは「剰男」(余った男)と呼ばれている。

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がいっぱい余った中国人男性(Photo by iStock)

「超男性社会」の近未来

かくして2020年の中国には、結婚適齢期を迎えながらも結婚に苦労するであろう男性が3000万人に達するという、いわば人類未体験の「超男性社会」が到来する。

それはいったい、どんな社会になるのだろうか?

あくまでも私見だが、近未来の中国では、3つの現象が起こっていく気がする。

第一に、同世代の中国人女性と結婚できない中国人男性たちが、中国よりもっと貧しい国々の女性を娶るケースが増えるということだ。

2018年正月に北京で、大学院生の青年たちから聞いた話では、すでに周囲には、ベトナム人やモンゴル人女性などと結婚する男性が出始めているという。

そもそも中国人とは、91.51%の漢族と、8.49%の55の少数民族との総和である(2010年の全国人口調査)。

多くの少数民族には「母国語」があり、習慣も食べ物も漢族とは異なる。朝鮮族、モンゴル族、カザフ族など、国境付近には周辺国の少数民族がいるのだ。

毎年3月に北京の人民大会堂で開かれる全国人民代表大会(国会)は、「ミニ国連」の異名を取るほどである。

そのため中国人には一般に、国際結婚に対する拒否感のようなものがない。

特に若い「一人っ子世代」は、他国の若者ともスマホという「共通言語」があるので、国境のカベを容易に飛び越えてしまう。今後、AIの通訳機能が発達していけば、言語のカベもなくなるだろう。

アフリカ女性を妻に

中国の農村部では、すでに国際結婚ラッシュが始まっている。

「中国版グーグル」の検索サイトのバイドゥ(百度)で、中国農村部の外国人妻の写真を検索すると、1万2192枚もヒットした。

特に、ケニア人女性、タンザニア人女性など、農村の中国人男性がアフリカ人女性と結婚するケースが急増していることが分かる。

確かに、アフリカ大陸には中国人が約100万人も居住しており、「チャイナフリカ」という言葉もあるほどだ。

2009年以降、中国は一貫して、アフリカ大陸最大の貿易相手国である。そのような中国とアフリカの蜜月関係が続く限り、今後、中国人とアフリカ人との結婚は増えていくだろう。

『広州日報』(2013年9月17日付)は、タンザニア発で、次のように報じている。

タイトルは、「アフリカ人女性が最も憧れるのは中国人男性 3人生んでも大丈夫」。

〈いまや多くの中国人が、アフリカでゴールド・ハンターとなっている。そんな中で、現地に定住して、アフリカ人女性との家庭を営む人々がいる。

もしくは中国人女性が、アフリカ人男性の猛アタックを受けて、嫁ぐケースもある。

「アフリカ美人」を娶った中国人ゴールド・ハンターたちの言によれば、アフリカ人女性が最も結婚したがっているのが、中国人男性なのだという〉

将来は「アフリカ系中国人」という人々も、普通に目にするようになるかもしれない。

同性愛大国への道

近未来の中国で起こるであろう二つめの現象は、男性の同性愛者の増加である。

中国人男性の同性愛の歴史は古い。

前漢の第13代皇帝・哀帝(紀元前25年~紀元前1年)は、董賢という美少年を愛玩し、毎晩一緒に寝ていた。哀帝が若くして急死すると、董賢も後を追って自殺した(『漢書・佞幸伝』)。

中国映画として初めて、カンヌ映画祭でパルムドールを受賞した陳凱歌監督の『さらば、わが愛 覇王別姫』(1993年)も、20世紀の京劇界を巡る同性愛の世界がテーマだった。

2010年頃の北京にも、私の知人で二人、同性愛者の男性がいた。

一人は新進気鋭の作家で、もう一人はジャーナリストだった。どちらも最初は隠していたが、親しくなると、自分はゲイであると告白した。

ジャーナリストの青年は、朝陽区の工人体育場(国立競技場)近くにある行きつけのゲイバーに案内してくれた。

彼は、「人民解放軍の若い兵士たちの中には、大量の同性愛者がいる」と話していた。

そのゲイバーの薄暗い店内で、蠢いている若い男性たちを目の当たりにしていると、これからの中国が「同性愛大国」になる予感がした。

人目もはばからず大胆に……

2016年夏に北京へ行った時には、北京首都国際空港から市内へ出るモノレールの向かいの席に、中国人の若い「男性カップル」が座ってきた。

彼らは互いの手を絡ませたり、相手の耳を舐め合ったり……と、車内で人目もはばからず行動をエスカレートさせていった。

2018年正月に北京へ行った時は、「温泉」と呼ばれる大型入浴施設に行った。

そこのバイキング・レストランでも、恋人や家族連れなどに混じって、若い男性カップルがチラホラ目についた。

社会主義国の中国では、例えば人民解放軍などの組織では同性愛は禁止しているが、それでもいまどきの若者たちは、意外にあっけらかんとしている。

そもそも中国人は他人に無関心なこともあって、同性愛の青年たちは徐々に表に出始めてきているのである。

「空巣青年」の孤独

第三の現象は、「空巣青年」の増加である。

「空巣青年」とは、何やら物騒な名前だが、2017年頃から中国で流行語になっている。

日本語の「空き巣」とは無関係で、親元を離れて大都市で一人暮らしをしている若者のことだ。

一人っ子世代の彼らは、休日にも他人と交わらず、狭い自室に引きこもって、日がなスマホをいじっていることから、「空巣青年」と呼ばれているのだ。

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自室に引きこもる青年(Photo by GettyImages)

2018年の春節の大型連休期間中(2月15日~21日)の中国国内の旅行者は、3億8600万人に達し、旅行関連収入は4750億元(約8兆円)に上ったと、中国文化観光部は発表した。

だが「4億人、5000億元」という当初の予測ラインには届かなかった。その最大の理由は、「空巣青年」たちが、自宅に引きこもっていたためと見られる。

『旅かえる』に無我夢中

「空巣青年」の間で、2017年暮れから大ヒットしているスマホゲームがある。

タイトルは、『旅行青蛙』。

名古屋のゲームメーカー「ヒットポイント」が開発し、2017年11月にリリースしたスマホ向けアプリ『旅かえる』のことだ。

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Photo by GettyImages

この日本発のゲームが、中国語版も出ていないのに、2018年1月以降、中国の無料スマホアプリ市場で、ぶっちぎりのトップを走り続けた。

ダウンロード数は、2018年2月に1000万人を超え、4月にはアリババが中国版の版権を取得した。

『旅かえる』は、極めてシンプルなゲームだ。

まずカエルに旅の準備をさせるところから始める。

準備が済むと、カエルに日本を旅行させる。するとカエルが、日本各地を旅した写真を撮って、みやげを持ってくるというものだ。

いわゆる放置型シミュレーションゲームだが、「空巣青年」たちは春節期間中、日本語も分からないのに自宅に引きこもって『旅行青蛙』に夢中になったのである。

最近の中国では、「空巣青年」たちの消費のことを指す「孤独経済」という新語まで生まれている。

ともあれ、中国民政部発行の『2016年社会サービス発展統計公報』によれば、2016年の結婚登記者数は1142万8000組で、前年比6・7%減だった。これで3年連続の減少で、3年で16%も減少したことになる。

「剰男」たちの苦悩は続く──。

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