決勝にしか出場できなかった代表選手たち。ルヴァン杯、代表ウィーク開催の弊害と改革の余地

決勝にしか出場できなかった代表選手たち。ルヴァン杯、代表ウィーク開催の弊害と改革の余地

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  • 更新日:2016/10/20
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2016シーズンのルヴァン杯を制覇した浦和レッズ【写真:Getty Images】

決勝戦だけの出場となった日本代表選手たち

延長戦を含めた120分間の死闘でも決着がつかず、PK戦にもつれ込んだ末に浦和レッズが勝利の雄叫びをあげた15日のYBCルヴァンカップ決勝。来シーズンからJ1の大会方式が3年ぶりに「1ステージ制」へ戻ることが決まったなかで、前名称のヤマザキナビスコカップから続く伝統のカップ戦のステータスをあげ、東京五輪世代の育成・強化を図るうえでも、改革のメスを入れる余地が十分に残されている。(取材・文:藤江直人)

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快晴無風の好条件にも恵まれた埼玉スタジアムのスタンドには、過去10シーズンの決勝戦では最多となる5万1248人ものファンや浦和レッズ、ガンバ大阪両チームのサポーターが駆けつけた。

レッズの13シーズンぶり2度目、大会名称がヤマザキナビスコカップから改められてからは“初代”となる王者に輝いて幕を閉じたYBCルヴァンカップ。PK戦にまでもつれ込んだ死闘を演じた両チームの選手出場記録を見ると、「1」という数字を数ヶ所で見つけることができる。

リーグ戦と並行してACLを戦っていた関係で、レッズ、ガンバともにYBCルヴァンカップにはノックアウトステージから登場。ホーム&アウェイで戦った準々決勝と準決勝、そして一発勝負の決勝戦と最大5試合でピッチに立てるところを、決勝戦だけの1試合にとどまったのはいずれも日本代表選手たちだ。

レッズはGK西川周作、DF槙野智章、MF柏木陽介で、ガンバはGK東口順昭。準々決勝は8月31日と9月4日、準決勝は10月5日と9日とともに国際AマッチデーによるJ1の中断期間に開催されたため、ハリルジャパンに招集されていた4人は物理的にルヴァンカップ出場がかなわなかった。

このうち槙野は故障で9月の代表招集を辞退しているが、いずれの場合も主力が抜けた穴は、リーグ戦でなかなか出場機会に恵まれない選手たちが必死のプレーで埋めた。特に西川の代役を務めた27歳のGK大谷幸輝は、浦和レッズユース時代に2種登録された2005シーズンを皮切りとして、通算11年間で一度もJ1のピッチに立っていない。

2014シーズンにはJ2のギラヴァンツ北九州に期限付き移籍。守護神としてリーグ戦の全42試合に先発フルタイム出場を果たし、チームの5位躍進に貢献するなど、懸命に心技体を磨いてきた大谷はヴィッセル神戸との準々決勝、FC東京との準決勝を4連勝で勝ち抜いたレッズのゴールマウスを守ってきた。

代表ウィーク開催が慣例化しているルヴァン杯

常に努力を惜しまない苦労人の後輩が刻んだ軌跡に、最大級の敬意を表したいからか。PK戦では4番手のFW呉屋大翔の一撃を右足で止め、トレードマークの笑顔を一瞬だけ雄叫びをあげる鬼気迫る表情に変えた西川は、終了後の取材エリアで感謝の思いを大谷へ捧げている。

「大谷選手が準々決勝、準決勝を戦ってくれたことで、与えてくれた舞台だったので。何としても勝たなければ、という責任があったなかで、しっかりと勝てたことは本当によかったと思っています」

お互いをリスペクトし合う思いが、チームの結束力をも高める相乗効果を生み出したことは想像に難くない。一方でJリーグが産声をあげる前年の1992年から開催され、同一スポンサーによる世界最長のカップ戦としてギネス世界記録にも認定されているYBCルヴァンカップを、常にベストメンバーで戦える大会にしてほしいという思いもある。

今シーズンを振り返れば、グループリーグ第1節、2節、7節も国際Aマッチデーと重複している。J1が18チーム体制となり、同時進行でACLが開催されるようになった2005シーズン以降では半ば慣例化しているスケジュールだが、そろそろ改革のメスを入れる段階にさしかかっているのではないだろうか。

今月12日の月例理事会で、Jリーグは来シーズン以降のJ1の大会方式を「1ステージ制」に戻すことを全会一致で決めた。具体的なスケジュール作成はこれからになるが、たとえば今シーズンは11月3日でリーグ戦の全34試合を終えるところを、チャンピオンシップが廃止になることで12月第1週にまで遅らせることが可能になる。

折り返し点となる夏場に「サマーブレイク期間」を導入し、海外のビッグクラブを招聘してのプレシーズンマッチ開催やJクラブの海外遠征を奨励することも決まった。それでも日程的にはまだ余裕が残っているはずだからこそ、YBCルヴァンカップのあり方もあらためて議論されるべきだろう。

代表選手不在の大会というイメージの定着

国際Aマッチデーによるリーグ戦の中断期間に開催されることで、平日ではなく週末にYBCルヴァンカップを開催できるメリットも生まれる。今シーズンも準々決勝と準決勝の第2戦はともに日曜日に行われたが、J1で群を抜く集客力を誇るレッズでさえ、6万3700人収容の埼玉スタジアムでそれぞれ1万9253人と2万6876人にとどまっている。

代表選手が不在の大会、というイメージが定着してしまったがゆえに、決勝戦以外は集客に結びつかないのが現状だ。リーグ側は1996シーズンから、準決勝までの試合で最も活躍した23歳以下の若手選手を「ニューヒーロー賞」として表彰。未来の日本代表選手へとつながる“登竜門の大会”なる側面を与え、実際に長谷部誠や原口元気(ともに当時レッズ)、宇佐美貴史(同ガンバ)とハリルジャパンの常連が受賞者に名前を連ねているが、なかなか大会全体のステータスが上がらない“ジレンマ”を抱えてもいる。

これが国際Aマッチデーを外してスケジュールが組まれると、どのようなメリットが生まれるのか。各チームの監督がベンチ入りメンバーを選ぶうえでの制約がなくなるばかりか、4年後の東京五輪へ向けて最大の懸念事項となっている、いわゆる「東京五輪世代」の強化でもさまざまな施策が可能になる。

たとえば2015シーズンを振り返ると、手倉森誠監督(現日本代表コーチ)に率いられたU-22日本代表は、ファーストステージ開幕直後の3月11日のU-22ミャンマー代表戦と、セカンドステージ開幕までの中断期間の7月1日のU-22コスタリカ代表戦の2度しか国際親善試合を組めていない。

リオデジャネイロ五輪の出場権獲得へ向けてチームとしての実戦不足を補おうと、J3に参戦させていたJリーグ・アンダー22選抜の顔ぶれを実質的なU-22日本代表に変更。J2への昇格争いを演じていたFC町田ゼルビア戦に臨ませたことで、リーグ戦の公平感を損なうのでは、という物議を醸したこともあった。

代表ウィークに公式戦を開催しないことのメリット

いずれも国際Aマッチデー期間にヤマザキナビスコカップが組まれていたことの弊害であり、手倉森ジャパンは各Jクラブの了承のもとで、リーグ戦の合間に2度の短期キャンプを実施してJクラブとの練習試合を敢行。シーズン終了後の国内キャンプや海外遠征を通じて、アジア最終予選を兼ねた今年1月のAFC・U-23アジア選手権へ向けて急ピッチでチームを仕上げている。

逆に考えれば、国際Aマッチデーによる中断期間に、天皇杯を含めたいっさいの公式戦を開催しないことで、東京五輪を目指す代表チーム単体での活動が可能になる。海外遠征を積極的に組んでもいいし、キリンカップなどで海外の代表チームを招聘する場合は、アンダーカテゴリーの代表チームも帯同させてA代表戦の前日や同日に“前座”として組ませることも可能になる。

Jリーグは先の月例理事会で、「東京五輪世代の出場機会の創出による育成促進の強化」を進めていくことも確認している。YBCルヴァンカップを舞台に、来シーズンはU-20、2018シーズンにはU-21、2019シーズンはU-22、そして東京五輪が開催される2020年はU-23と段階的に推移していく世代の出場選手枠を設定し、J1の選手と真剣勝負を繰り広げさせることで強化を図っていく青写真だ。

「国際Aマッチデーとの兼ね合いも議論していきたい」(村井チェアマン)

具体的な議論はこれからになるが、YBCルヴァンカップを通して各チームが世代全体の強化を行い、同時進行で国際Aマッチデーを迎えるごとに、選抜された選手たちに国際試合の経験をどんどん与えていく。五輪開催国として厳しい戦いとなるアジア予選を免除される若き代表たちを鍛えていくには、2プラトンの強化策を練っていくことがベストとなるはずだ。

レッズの優勝の余韻が残る決勝戦後の取材エリア。来シーズン以降のYBCルヴァンカップのあり方を問われたJリーグの村井満チェアマンは、「日程を含めて、すべてこれからになる」と断ったうえで、現システムの続行に対して肯定も否定もしなかった。

「我々にとってすごく大事な大会でもありますので、位置づけについては慎重に議論します。ただカップ戦はカップ戦らしく、リーグ戦はリーグ戦らしく、ハイライトした大会にしていくつもりです。アンダー世代の出場枠の件も議論していく必要がありますし、かといって若手だけの大会ではありませんので、国際Aマッチデーとの兼ね合いもしっかりと議論していきたい。(代表選手が決勝しか出られない点も)議論の対象になると思います」

村井チェアマンをして「2年で撤回することに対して、すごく葛藤があった」と言わしめた2ステージ制から従来の形に戻すことへの英断。その恩恵としてリーグ戦だけでなく、カップ戦でもさまざまな改革の余地が生まれた。一方で各クラブによる開催スタジアムの確保などを考慮すれば、来シーズンのスケジュール作成も待ったなしの状況下に置かれている。

(取材・文:藤江直人)

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