新聞・テレビが触れられたくない「メディアの大特権」の話をしよう

新聞・テレビが触れられたくない「メディアの大特権」の話をしよう

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2017/11/20
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また同じ質問か…

先週13日(月)の本連載で、「国会で加計学園問題を追及しても意味ない」といったつもりだが、先週15日(水)の衆院文部科学委員会の野党質疑は酷かった。

希望の党の山井和則氏は、選挙前の民進党とまったく同じスタイルで質問をしていた。加計学園理事長が、安倍首相とのお友達であるということだけを指摘し、肝心な質問がない。半年前にもあった光景であり、まったく進歩がない。

続いて立憲民主党の逢坂誠二氏は、2015年6月に閣議決定したいわゆる「4条件」について、合致する根拠を政府に尋ねた。これに対して、長坂康正内閣府政務官は「4条件に異論がない中での議論だった」と答えた。にもかかわらず、逢坂氏は同じ質問を繰り返した。

先週の本コラムにはその答えが書いてあるが、逢坂氏は、今回の文科省による医学部新設の認可は「4条件に基づくはず」と誤解している。

特区諮問会議と文科省学校審の役割の違いについて、本コラムでは半年前から書いている。特区諮問会議は、学部新設を門前払いする文科省告示を改正するかどうか、文科省学校審は、認可申請が出てきたら認可するかどうかを判断するのがそれぞれの役割だ。

先週の本コラムでは、運転免許で例えれば、特区諮問会議は「自動車学校に入れるかどうか」、文科省学校審は「運転免許を与えてよいかどうか」を判断するものだと説明した(これは行政法の観点からの比喩である)。

特区諮問会議では、自動車学校に門戸を開きたい内閣府と、門戸を閉ざす文科省との間で議論が交わされた。門戸を閉ざす根拠は「文科省告示」である。それは認可制度と相容れないので筆者は無効だと思うのだが、ともかく内閣府と文科省の間の議論の末、閣議決定でいわゆる石破「4条件」が決まった。

この経緯は、7月17日付け産経新聞が詳しい(http://www.sankei.com/premium/news/170717/prm1707170008-n1.html)。かいつまんでいうと、当時の地方創生担当相であった石破が、獣医師会の「意向」を受けて、閣議決定に盛り込んだのだ。筆者が聴いた話でも大筋はそのとおりだ。

獣医師会は、石破「4条件」さえ設ければ、「自動車学校の入学はできないはずだ」と思ったのだろう。しかし、規制緩和のために、せめて自動車学校への入学の門戸を開きたい内閣府は、石破「4条件」を逆手にとった。規制の根拠が「文科省告示」になるので、(4条件のひとつである)需要見通しについて、文科省に説明を求めたのだ。

もし文科省が一流官庁ならば、この内閣府の反撃に対して、実際に需要見通しなどを作り再反撃しただろう。しかし、悲しいかな文科省にはそれができなかった。

告示の所管官庁である文科省がその合理性を説明できないので、自動車学校への入学を門前払いするという前代未聞の文科省告示は改正され、加計学園の「自動車学校への入学」は、特区諮問会議で認められた(もちろん、自動車学校へ入学が許されることと、運転免許証が授与されるかどうかはまったく別物である)。

これらは、加計問題を語るうえでは誰でも知っておかなければいけない基礎知識である。ところが、逢坂氏にはそれが足りなかった。

<今日の文科委員会。焦点の4条件について、逢坂議員から「加計学園が、4条件をクリアしていると、いつ誰が、どの場で検証・検討したのか」という問に対して、内閣府政務官は答弁できず、しばしば審議が止まった。核心の問に対して答弁できない、ということは、特区認定の公正性が問われる。>

<おはようございます。ニュースにはなっていませんが、実は、昨日の文科委員会散開後に、立憲民主党の森友・加計問題PTを開きました。そこで、あらためて4条件について、文科省に確認しました。高等教育局は、4条件について「文科省として主体的な検証・検討はしていない」と答弁しました。>

これでは、さすがにニュースになりませんよ(笑)。一部の新聞を除けば、テレビでも加計学園問題はもう新しい材料がないので取り上げないだろう。これ以上同じことを繰り返し、なんの成果も出ないなら、支持者をがっかりさせるのではないか。

もっとも、筆者には、半年間以上も無意味な報道ばかりしてきた、新聞テレビを中心としたマスコミの構造に問題があると思っている。政府のガバナンスがどうとか便宜供与がどうとかいうが、彼らにそれを指摘する資格があるのか。

メディアが「公正」を指摘するおかしさ

既に筆者は、昨年10月8日付け本連載にて、その問題を指摘している(「新聞テレビが絶対に報道しない「自分たちのスーパー既得権」 だから日本の報道は「左巻き」になる」http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49808)。

詳しくは本文を見てもらいたいが、要約すれば、新聞テレビのマスコミの構造問題は4点からなっている。まずは、①日刊新聞紙法という法律。次に②再販規制、そして、③これから新たに生まれる軽減税率だ。

さらに過去にさかのぼれば、新聞社屋建設のための④国有地低廉売却があり、これらでマスコミは守られて強烈な既得権者になっている、というものだ(なお、そのコラムで、国有地の売却のところで、「総務省」とあるのは「財務省」のタイプミスである)。

まず、①日刊新聞紙法。新聞社の株式は譲渡制限があり、まったくガバナンスの効かない会社になっている。新聞が、個別会社の不祥事のたびに「コーポレートガバナンス」というと、新聞には言われたくないと思ってしまう。

さらに、②~④で新聞社の収益は確保される。先日より電波オークションの話題が続いているが、民放各社は電波オークションを否定し新規参入を拒みながら、新聞はテレビの株式を所有して、その利益も享受してきた。つまり、新聞とテレビを「新規参入なしの既得権」としてきた。

以上について、朝日新聞を例にして具体的に見ておこう。経営資料としては、金融庁で公開している有価証券報告書が便利なので、それを利用する(http://disclosure.edinet-fsa.go.jp/)。

まず、①日刊新聞紙法があることで、朝日新聞は、村山家と上野家が代々ずっとオーナーとして存在する企業になる。完全に経営者が代わらないと、オーナーがどんな意見を言うか言わないかで、経営方針をはじめとする会社のすべてのことが決まってしまう。

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ただし、新聞社のオーナーは現場に意見を言わないケースがほとんどだ。するとどうなるかというと、現場の社長が経営のすべてを握ってしまう。絶対にクビにならない社長が誕生するというわけだ。それはつまり新聞社自体が「既得権益集団」になることを意味する。

新聞は「超高収益体質」だった

株式が譲渡されない安泰経営のなかで、オーナーが口出しをすることがなければ、経営陣にはなんのプレッシャーもかからない。そうして経営トップが大きな顔をし続けることになる。

もっとも、これまで新聞各社は②新聞再販カルテル、④国有地低廉売却があったこともあり、高収益を得ていた。それが、BSで内部留保比率5割、有価証券比率1/3という驚くべき高さにつながっている(法人企業統計でみると、企業平均ではそれぞれ25%、20%くらいだ)。

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借金が少なく、退職給与負債が固定負債のほとんどなのも珍しい。いかにこれまで高収益体質の経営が可能であったかがわかる。

高収益体質は負債サイドの内部留保の高さも示しているが、資産側では有価証券投資の高さも目立っており、その明細を有価証券報告書でみると、系列テレビ局が列記されている。

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日刊新聞紙法で新聞への新規参入が止められているが、その新聞社はテレビの株式を大量にもっているわけだ。また、職員は系列テレビに「天下って」いることもわかる。

これでは先行きが危うい

しかも、電波はオークションではなく割り当てになっており、テレビへの新規参入もないという、マスコミにとっては極めて恵まれた既得権の環境である。

実は、先進国34ヵ国中、電波オークションを実施していないのは日本を含めて3ヵ国しかない。先進国では、電波オークションが一般に行われて、公正な電波資源の配分が行われるとともに、結果として大きな政府収入になっている。

日本では、電波オークションが行われていないので、電波配分が恣意的になっており、しかも政府に収入は入らない。電波が国民の公共財産である以上、財政法などの趣旨からもオークションは当然のことなのだが。

いっとき、民主党政権で電波オークションをやるはずだったのだが、腰砕けになった。安倍政権は規制緩和の一環として電波オークションを検討するようだ。

テレビ朝日の電波利用料は年間5億円程度であるが、電波オークションになれば、その10~100倍程度になっても不思議ではない。朝日新聞社の連結ベースの営業利益は70億円なので、電波オークションが実施されれば、経営の根幹を揺さぶる事態になるだろう。

PLをみると、ただでさえ売上げが急速に減少する中で、本業の収益はかなり悪化している。セグメント情報をみると、不動産関係だけが好調であり、本業の不振を補っている。

労務費の売上原価に占める割合は32%と高い。企業平均では16%程度なので、マスコミの人件費の高さを表している。しかも、電波オークションになると、系列テレビへの天下りはできなくなるだろう。となると、朝日新聞を退職した人への退職給与負債はもっと積み上げる必要が出てくるはずだ。そうなると、随分と経営に響いてくるだろう。

新聞テレビが「フェイクニュース」と揶揄されるような報道ばかりしていると、ネット上でそのカウンターとなるような強力なメディアが登場してくるなかでは、ますます本業に影響してしまうことになるだろう。新聞テレビは、いったいこれからどうするのだろうか。

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