発案から10年目の公開を実現させた、「情熱と執念と“坂口健太郎”」

発案から10年目の公開を実現させた、「情熱と執念と“坂口健太郎”」

  • THE PAGE
  • 更新日:2018/02/22
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坂口健太郎と綾瀬はるかが初共演する『今夜、ロマンス劇場で』 (C)2018 映画「今夜、ロマンス劇場で」製作委員会

近年の日本映画は、漫画や小説の原作ものが多い。そんな中、映画のための書き上げられたオリジナル・ストーリーによる『今夜、ロマンス劇場で』が発案から10年の時を経て、全国の劇場で公開され、大ヒットを記録している。

物語は昭和35年、映画が人々の一番の娯楽だった頃。映画監督を夢見る青年・健司(坂口健太郎)は、もう誰からも観られず忘れ去られた白黒映画を毎晩、観客のいなくなった映画館“ロマンス劇場”で上映していた。映画に登場するお姫様・美雪(綾瀬はるか)に恋をしていたのだ。ある日、落雷で奇跡が起こり、白黒の美雪が突然、健司の目の前に現れる。“ある秘密”を抱えたまま、色のある世界へ舞い降りた美雪と健司のロマンスが展開する。

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稲葉直人プロデューサー(左)と武内英樹監督(右)<撮影:THE PAGE編集部>

思いっきりときめけて、笑えて泣ける同作は、稲葉直人プロデューサーの「映画館でしか楽しむことのできないオリジナルの物語がもっとあってもよいのではないか」という思いから始まった。日本では唯一といえるコメディエンヌの要素と気品を兼ね備えた綾瀬の魅力を最大限に引き出したのは、『テルマエ・ロマエ』(2012)でタッグを組んだ武内英樹監督だった。

筆者が同作の試写を観たとき、最初に訪れた「泣き」の場面は、“ロマンス劇場”映写室で健司が、埃をかぶった映画フィルムの缶を取り出すところだった。

「それは最速ですよ」。インタビュー冒頭から大爆笑で迎えてくれた稲葉プロデューサーと武内監督。いやいや、なかなか説明しづらいのだが、ある種の郷愁と随所に見られる“映画愛”が全編を通して伝わってくるので、観る人にとって、どの部分が刺さるかはわからない。切ないロマンスの部分はもちろん、レトロな“ロマンス劇場”、名言の数々など、グッとくる場面がいくつも波のように押し寄せてくる。

「綾瀬はるか」ありきの企画 相手役・坂口健太郎の登場を待って、映画化が実現

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坂口健太郎 (C)2018 映画「今夜、ロマンス劇場で」製作委員会

さて、発案から10年。とても面白いと思える企画なのに、なぜ映画化までこれほど時間がかかってしまったのだろうか?

稲葉:たまに聞きますよね。構想、10年とか。なぜ、それだけ時間がかかったのか? それは坂口健太郎という俳優を待っていた! ということですね。

武内:カッコよく言いますね(笑)。

稲葉:綾瀬さんありきでこの物語を考えたのですけれど、当時、振り回されるほうのチャーミングな映画青年の役を依頼できる方が、日本の俳優界にいなかったんですね。3年くらい前でしょうか、俳優業に進出された坂口さんの存在を知って「ついに現れた!」と思ったのは。というわけで10年かかった理由を聞かれたら、坂口健太郎という俳優の登場を待っていたから、と言うようにしています(笑)。でも実際のところは、それだけではないですね。だいたい、構想何年っていうのは、お金が集まらなかったとか、さまざまな不可抗力があってがとん挫してしまった時期があると思うんです。それでも映画にできたというのは、情熱というか執念、それに最高のキャスト・スタッフと出会えたからだと思います。

綾瀬はるかの魅力とは?

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綾瀬はるか (C)2018 映画「今夜、ロマンス劇場で」製作委員会

稲葉プロデューサーは、『ハッピーフライト』(2008)を担当していた頃から、綾瀬を主役にした今回の映画をつくりたいと思っていたという。20代から30代へ、時を経ても変わらぬ綾瀬の魅力は、どんなところにあるのだろうか?

稲葉:一言で言い表しづらいんですよね。似ている人が、ほかにいないんですよね。シリアスなものからコメディーまでもできるふり幅のある、女優さんですが、とにかくチャーミング。そのチャーミングさが唯一無二なんです。

武内:そうですね。女性としてかわいらしいさというのもありますが、女優さんとしてもっともっと魅力が眠っているんじゃないかと思わせるようなところがあって、なんて言ったらいいのだろうって感じですね。存在じたいが特別なんですよね。現場で2カ月くらい付き合ってきたんですけども、演技をしていないときでも、常に特別なオーラを放っていました。こういう人なかなかいないなって思います。楽しかったです。異次元の世界にいるように見える、それなのにそれがつくられた感じではなくてすごく自然なんですよ。

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(C)2018 映画「今夜、ロマンス劇場で」製作委員会

カラー映像の中にと白黒映像が。うまく組み合わさっていて、不自然な感じはない。10年寝かせているうちに映画の表現技術も向上したのでは?

稲葉:撮っているときはそのままの綾瀬さんでした。カラーの世界の中に白黒の主人公がする、っていう在り得ない世界観が、お客さんに受け入れられるか、とても不安ではありました。違和感があったり、安っぽっく見えてしまったら、その時点で物語に気持ちが入っていけなくなりますからね。だからカメラマンとVFXスタッフには、そこだけは失敗したくないのだと最初から相談していました。

武内:撮ってはみたものの、「あちゃー」って感じにならないか、本当に不安でした。でも、意外と出来上がったものを観てみると、我ながらいいんじゃないかってなりました。安心しましたね。

「映画の仕事っていいな」 きっかけとなった作品とは?

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(C)2018 映画「今夜、ロマンス劇場で」製作委員会

映画のさまざまなところに、名画のオマージュと思える場面がちりばめられている。例えば『ニュー・シネマ・パラダイス』(1988)や『ローマの休日』(1953)、『カイロの紫のバラ』(1985)など、映画ファンにはうれしい仕掛けが盛りだくさんだ。二人にとって、「映画の仕事っていいな」と思うきっかけとなった作品とは?

稲葉:僕はやっぱり『ニュー・シネマ・パラダイス』ですね。中1のときだったんですけれど、ロングランで銀座でやっていたんですね。観たら号泣してしまって。でもそのときに初めて、こんな素晴らしい映画をつくっている人たちがいるんだ、って意識し始めました。それまで『バック・トゥー・ザ・フューチャー』(1985)とか『E.T.』(1982)とか映画館に観に行ってましたが、面白かったぁとは思うんですけど、それで終わっていたと言いますか。『ニュー・シネマ・パラダイス』は映画には、つくり手がいるということが初めて教えてくれた映画でした。ああいう話ですからね。いつかは映画をつくる仕事をやってみたいと思ったきっかけが、この映画です。

武内:本当は同じなんですけれど、かぶるかな~って。僕はもっと前に、初めて観たのが角川映画の『野生の証明』でした。小6だったんですけど、薬師丸ひろ子さんがすっごく美しくて、高倉健さんがすっごくカッコよくて、戦車がばーっと出てくるシーンを観たときに、映画って面白いなって思って。最後は号泣したのを覚えています。

ぜひ、映画館で観てほしい

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(C)2018 映画「今夜、ロマンス劇場で」製作委員会

最後に見どころなど、ひと言ずつメッセージを。

武内:時代ってまわるじゃないですか。いまがちょうど二周めくらいで、昭和30年代のものがオシャレに思えるようなところがあるんじゃないかと思って、そうしたところも楽しんでいただけるように美術は意識しました。あり得ないファンタジーではありますが、こういうこともあるかもと想像力を働かせて観て頂ければ。ぜひピュアな気持ちで観ていただけるとうれしいです。

稲葉:この物語は、映画が庶民の娯楽の王様だった最後の時代を舞台としています。それは映画からテレビへと移り変わる時代で、実はテレビからネットやスマホに代わろうとする今と似ていると思うんです。そんな移りゆく時代と忘れ去られていくものへの郷愁というテーマも感じ取っていただきたいです。それと、この物語は色彩をモチーフとしています。主人公たちの恋が輝きはじめると、スクリーン全体も色鮮やかになっていくという映像的な仕掛けもほどこしました。そんな物語を、美雪と健司がいる世界へと地続きになっていることが体感できる劇場で、是非観ていただきたいですね。

◇     ◇

尽きない“映画愛”。涙活に間違いなく役立つ同作をいつか名画座でも観てみたい。

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