ユースケ・サンタマリアが脇役で見せる底力

ユースケ・サンタマリアが脇役で見せる底力

  • シネマトゥデイ
  • 更新日:2017/09/17
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ユースケ・サンタマリア

俳優ユースケ・サンタマリアが映画『あゝ、荒野』(前篇10月7日公開、後篇10月21日2部作連続公開)で、新たな魅力を発揮している。演じるのは、ボクサーで運命を切り開こうとしている主演2人(菅田将暉ヤン・イクチュン)を指導するトレーナー“片目”。自身も約2か月に及ぶボクシングの訓練に励み「2人がものすごいハードな練習をしているのを知っていたので、迷惑をかけるどころか取り返しのつかないことになっちゃうんで」と2人の熱量に刺激を受けた日々を明かした。

“片目”こと堀口は、チンピラ同然だった新次(菅田)と、吃音と赤面対人恐怖症に悩み社会の片隅で生きてきた建二(ヤン)の運命を変える物語のキーマンだ。街で彼らをスカウトし、寂れたジムで2人の闘争心に火をつける。バラエティー番組や先ごろ放送されたNHK土曜時代ドラマ「悦ちゃん 昭和駄目パパ恋物語」でのダメパパ役など、ひょうひょうとしたイメージの強いユースケだが、片目の怪我が象徴するように暗い過去を背負ったミステリアスなキャラクターの依頼を受け、当初は「どこを見て俺に?」と思ったという。

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ユースケ演じるトレーナーの“片目”。すごい貫禄……!(C) 2017『あゝ、荒野』フィルムパートナーズ

続けて「でも俺の名前が出てきた段階で、製作陣に何か狙いがあるわけじゃないですか。その狙い通りの芝居を出来るかどうかはわからないけど、確かに滅多にないような役だし、前篇・後篇に及ぶ贅沢な企画。タフな現場になるとわかっていたけど『ぜひ、やりたい』と」と二つ返事で快諾した。ただしボクシングは未体験。脚本を読むと新次たちの練習相手も務めれば、昔の実力を彼らに見せつける場面もある。聞けば、菅田たちはすでに猛特訓を積んでいると知り、「俺もかなりやらないとやばいんじゃないか」と撮影の1か月前から毎日のようにジムに通ったという。ユースケは「俺なんて2人の足元に及ばない」と謙遜するが、劇中で一瞬見せるキレの良いパンチだけで、片目が歩んできた人生に説得力を持たせてしまうのだから、さすがだ。

そう感想を述べるとユースケは「練習したおかげで、菅田君たちがどんな思いでカメラの前に立っているかがわかったからやってよかった」と振り返る一方で、実際に指導に当たっていた松浦慎一郎氏と菅田の相性の良さに嫉妬心も芽生えたようだ。

ユースケは「パンチをミットで受けるのも難しいんですよ。相手の癖やリズムに対応しなければならないんですけど、やっぱり菅田君と松浦さんには何か月もかけて築き上げてきたものがあるからかなわない。それに菅田君のパンチが思った以上にスピーディー。わーっとなりながら対応しましたけどね」と苦笑いを浮かべた。

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リアリティーがハンパないボクシングシーン (C) 2017『あゝ、荒野』フィルムパートナーズ

完全に役と同化していた菅田たちの姿は、演じる上でも影響を及ぼしていたようで、「最初は可愛いと思っていた2人への思いが変わっていった」と吐露する。「物語の進行自体もそうなのだけど、最初は皆と楽しく芝居していたのが段々、現場も緊張を帯びて来るんです。加えて夢破れてトレーナーになった片目は、それを新次や建二に託して指導してきたが、2人の成長が託すどころの次元じゃなくなって、自分はただの目撃者にしかなれないことに気付く。もうね、クライマックスの新次と建二の試合なんて、何とも言えない気持ちになりましたよ」。

そのやるせなさと寂しさをぶつけるかのように、行きつけのBARで出会った女性(河井青葉)と肌を重ねるシーンもある。ユースケが濡れ場を披露するのも珍しいが、これにはすかさず「あれは濡れ場だと思ってないですから。僕は女性に翻弄されて寝ているだけで、あっという間に果ててしまう。近年まれに見る、惨めなラブシーン(笑)」と自分なりの解釈を述べた。

こうした菅田たちに負けず劣らずの体当たりの挑戦は、俳優人生の大きな転機になり、関ジャニ∞丸山隆平市村正親らと共演する『泥棒役者』(11月18日公開)に続き、オファーも増えるのではないかと期待されるが、本人は「僕ね、『ドッペルゲンガー』(2002)が大好きだから黒沢清監督とはぜひまたご一緒したいんですけど、まだ機会がなくて。岸さんはまた声をかけてくださるかなあ……(笑)」と懐疑的だ。

しかし俳優業への思いは熱く「監督によっては、毎回同じ俳優と組む方いるじゃないですか。たまにはスパイスとして俺を使ってくれればいいのに! と思っちゃうんですよ。まぁ、単なるやっかみでしかないんですけどね(笑」と語り、最後はジョークか本音かわからぬユースケ節を炸裂させていた。(取材・文:中山治美)

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