イタリアの連立政権崩壊、時間の問題に。極右の「同盟」政権取得の可能性も

イタリアの連立政権崩壊、時間の問題に。極右の「同盟」政権取得の可能性も

  • ハーバービジネスオンライン
  • 更新日:2019/08/14
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不信任案を出されたジュゼッペ・コンテ伊首相photo by European Union 2019 via flickr(CC-BY-4.0)

◆「長期政権維持は奇跡」というイタリア

イタリアは1990年から現在までまともに経済が成長したことがなく、2009、2012、2013とマイナス成長だ。しかも負債はGDP133%という状態にある。その根底にある銀行の再編は一向に進んでいない。(参照:「Datosmarco」、「Clarin」)

また長期政権がないことから政策の実行に移すことも容易ではない。イタリアのジュゼッペ・コンテは戦後66代目の首相である。イタリアで首相が長期政権を維持することはほぼ奇跡だとという証である。

そして、コンテ首相もイタリアのこの伝統を踏襲することになりそうだ。五つ星運動と同盟の連立政権の後者の党首、マッテオ・サルビニ内相(46)が今後の政権維持を否定して同党が今月9日、コンテ首相に対して内閣不信任案を提出したからだ。サルビニの狙いは早急なる総選挙の実施である。そして、自らが首相になることだ。

◆五つ星運動の脱落で「極右政権」の可能性も

現在の同盟の支持率は36%以上で、それに同じ右派の2政党フォルツァ・イタリアとイタリア同胞の支持率を合わせると50%以上の支持率を確保できる。実際、この3政党は地方政治で連携している。一方の五つ星運動は17%、そして支持率を回復しているレンツィー前首相の民主党は20.5%しかなく、両党を合わせても40%に満たない。しかも、民主党は10日、コンテ首相が内閣不信任案を切り抜けるための支援はしないと発表した。(参照:「El Independiente」)

五つ星運動と同盟の政権が誕生したのは昨年3月4日の総選挙あとの6月1日であった。僅か14カ月の政権がまもなく崩壊することになる。もともとこの両党の連立政権は水と油を合わせた政権で長期間政権を維持することなど不可能であった。あたかも二つの政権が同時に存在しているようなものである。

極右政党である同盟の党首サルビニは若いが政界で20余年活躍して来たつわものである。一方の五つ星運動は民衆の不満を支えにして2009年にコメディアンのグリッロと一部政治活動家によって設立されたポピュリズム政党で、党首で副首相のルイジ・ディマイオ(33)を始め、政治家としたら「アマチュア集団」と言える。この二人の党首を比較しても、政治プロのサルビニが政治アマのルイジ・ディマイオを凌ぐのは当然の成り行きであった。それを皮肉って、一部イタリア紙は「サルビニが五つ星運動を食ってしまった」「サルビニは五つ星運動のリーダー」といった表現を使っているそうだ。(参照:「La Razon」)

しかも、両者の上にお飾り的に据えられたコンテ首相は法学部の学者でしかない。これまで政治家としての経験はなくサルビニの傲慢な動きを止めるだけの力量はない。

◆支持急落の五つ星だが、コンテ首相は人気上昇

ところが、独断的なサルビニを前に、温厚で常に対話で両党の軋轢を解消させよう務めているコンテ首相の人気が最近次第に上昇しており、五つ星運動の将来のリーダーにさせようとする動きも生まれている。もともと、コンテは五つ星の推奨で首相になった人物だ。

とはいえ、この14カ月の連立政権で五つ星運動は国民からの支持を失ってしまっている。民衆の不満を代弁して政治の腐敗や現政治体制を批判し、そして理論でその為の解決策を国民の前に披露しても、政治経験がゼロであったために、実際に政権に就くと外野席から批判するのと実際に政権に就いて政治を行うことの違いのギャップの前に右往左往するだけであった。

閣僚会議でも批判はするが実行力が乏しい。この14カ月の政権運営の中で国民は五つ星運動にそれを観たのである。それが支持率の急激な降下に現れている。前回の総選挙で32.5%の支持票を獲得したのが、今では17%にまで下がっている。その失った支持率は同盟と民主党に流れていると推測されている。

◆現政権打倒を急ぐサルビニの思惑

運輸次官でサルビニの経済顧問を務めているアルマンド・シリが汚職容疑にかけられ、それに対して五つ星のリーダー、ルイジ・ディマイオは辞任を要求している。また、ロシアから同盟が資金を受け取ったという疑惑についても調査が進められているが明白になるまでまだ時間がかかりそうだ。これらの疑惑が明確にされる前のまだ同盟への高い支持率が継続している間に現政権を打倒して自らが首相に就くというのがサルビニのプランである。

その発火点となったのが8月7日の上院の審議でイタリアのトリノとフランスのリヨンを結ぶ高速列車の建設に五つ星運動が反対票を投じたことであった。嘗て北部同盟と呼んでいた同盟にとって、この高速鉄道の建設はイタリア北部を発展させる重要な要となる。五つ星運動は当初からその高額な建設費用と環境保護という面からこの高速列車の建設には反対していた。

この投票結果の直ぐあとにサルビニはコンテと会談し、前者は後者に五つ星運動の3人の閣僚の辞任を要求した。ダニロ・トニネリ運輸相、エリザベタ・トレンタ国防相そしてジョバンニ・トゥリア経済相の3人である。辞任を要求した理由はトニネリはトリノとリヨンを結ぶ高速列車の建設を阻止しようとした、トレンタは地中海をコントロールするプランの障害になっている、トゥリアは欧州委員会と協調し過ぎる、ということからだとした。しかし、辞任させるのは難しく、またコンテが辞表を提出する様子もないと見たサルビニは内閣不信任案を提出することを決めたのである。(参照:「ABC」)

それに対してコンテ首相は翌日8日にテレビを通して政府内で起きていることを明らかにし、その全ての責任はサルビニ内相にあるとして厳しく彼を批判したのである。

そのテレビでの説明の中で、コンテは政府の改革を国民の前に約束したことを突如中断させることにした理由をサルビニは説明する必要があると訴えたのであった。

◆サルビニvsコンテ、闘争の決着は……

現在議員は夏休みの最中であるにも拘わらずサルビニは「議員は腰を上げてローマに月曜(12日)には来なければならない」と要求して議会の招集をかけようとしたのであるが、コンテはそれを決めるのはサルビニには委ねられていないと断言したのである。サルビニの狙いは10月の総選挙実施である。議会解散から45日目から総選挙が実施できるという規定から、サルビニにとって8月後半までには解散にもって行きたいということなのである。(参照:「AHORA ROMA」)

五つ星運動への国民からの支持が大きく落ち込み、その2倍の支持率を享受している現在の同盟の党首サルビニにとって現在の議会には敵なしの状態である。

議会の解散がほぼ確実な状態にある中で一つ問題を抱えているのは2020年度の予算を10月15日までに欧州連合に提出する義務があるということだ。ということから、マッタレッラ大統領は議会の解散を遅らせて、暫定的にテクノクラートによる内閣を発足を考えているようだ。そして一旦議会で予算の承認を得た上で、それを欧州連合に提出するというプランだ。しかし、このプランに現内閣を構成している2政党がそれに賛成するか微妙である。または、同盟がその首班を指名することを要求する可能性もある。(参照:「El Independiente」)

恐らく、現状では新しい動きは9月初旬まで待たねばならないであろう。

【白石和幸】

しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身

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