法人企業統計16年7-9月期~企業収益は最悪期を脱しつつあるが、経常利益の伸びは特殊要因でかさ上げ

法人企業統計16年7-9月期~企業収益は最悪期を脱しつつあるが、経常利益の伸びは特殊要因でかさ上げ

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  • 更新日:2016/12/01
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■経常利益は4四半期ぶりの増加

財務省が12月1日に公表した法人企業統計によると、16年7-9月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益は前年比11.5%と4四半期ぶりの増加となった(4-6月期:同▲10.0%)。製造業は前年比▲12.2%(4-6月期:同▲22.4%)と4四半期連続の二桁減益となったが、非製造業が前年比24.5%(4-6月期:同▲3.1%)の大幅増益となったことが全体を大きく押し上げた。

製造業は輸出数量が持ち直したものの、円高の進展に伴い輸出価格の低下幅が拡大したことから売上高が前年比▲3.4%(4-6月期:同▲5.3%)と5四半期連続で減少したことに加え、売上高経常利益率が15年7-9月期の5.5%から5.0%へと5四半期連続で悪化したことが経常利益を押し下げた。

製造業の売上高経常利益率(前年差)の悪化はほとんどが人件費要因によるものであった。製造業の人件費は6四半期連続で増加した。7-9月期は前年比0.9%と4-6月期の同2.7%から伸び率は鈍化したものの、売上高の減少が続いたため人件費が製造業の収益を圧迫している。

一方、非製造業の売上高経常利益率は5.3%となり15年7-9月期の4.3%から大きく改善した。売上高が前年比▲0.7%(4-6月期:同▲2.8%)と減少が続く中、人件費が前年比1.5%(4-6月期:同▲0.2%)と増加に転じたため、製造業と同様に人件費は利益率の悪化要因となっているが、金融費用の減少が利益率を大きく押し上げた。ただし、後述するように非製造業の利益率改善のほとんどが特殊要因によるものと考えられる。

■サービス業の経常利益が特殊要因で急増

経常利益の内訳を業種別に見ると、製造業では、情報通信(前年比17.0%)、金属製品(同11.8%)は増加に転じたが、鉄鋼(同▲59.0%)、生産用機械(同▲31.0%)、輸送用機械(同▲38.2%)などは前年比二桁の大幅減益が続いた。非製造業では、個人消費の低迷、インバウンド需要の鈍化などを受けて卸売・小売業は前年比▲3.3%と3四半期連続の減益となったが、サービス業が前年比109.9%の急増となったことが全体を押し上げた。

ただし、サービス業の大幅増益は特殊要因によるものである可能性が高いことには注意が必要だ。サービス業は営業利益が前年比▲1.1%の減少となったが、受取利息等が前年から10倍以上の急増となったことが経常利益を大きく押し上げた。純金融費用(支払利息等-受取利息等)の減少だけでサービス業の経常利益は100%以上押し上げられた。受取利息等の急増は子会社からの配当金などによるものと考えられるが、これは持続的なものとは考えられず、特殊要因と捉えるべきだろう。

7-9月期の経常利益(全産業)はサービス業だけで14.7%押し上げられており、サービス業を除けば前年比▲3%程度の減益となる。特殊要因を除けば4-6月期の前年比▲10.0%から減益幅が縮小したという評価が妥当だろう。

季節調整済の経常利益は前期比7.9%(4-6月期:同7.5%)と2四半期連続で増加した。製造業(4-6月期:前期比6.7%→7-9月期:同5.1%)、非製造業(4-6月期:前期比7.8%→7-9月期:同9.1%)ともに2四半期連続の増加となった。

この結果、16年7-9月期の経常利益(季節調整値)は18.5兆円となり、過去最高だった15年4-6月期の19.2兆円に次ぐ過去2番目の高さとなった。製造業はピーク時(14年10-12月期)よりも2割以上低いが、非製造業はそれまでのピークだった15年4-6月期を上回り過去最高水準となった。

■設備投資は減少も、先行きは持ち直しへ

設備投資(ソフトウェアを含む)は前年比▲1.3%と14四半期ぶりに減少した(4-6月期:同3.1%)。非製造業(4-6月期:前年比▲1.3%→7-9月期:同▲1.3%)が2四半期連続の減少となる中、これまで堅調を維持してきた製造業(4-6月期:前年比11.1%→7-9月期:同▲1.4%)が9四半期ぶりの減少となった。

季節調整済の設備投資(ソフトウェアを除く)は前期比0.4%と小幅ながら2四半期ぶりに増加した。製造業が前期比▲2.5%(4-6月期:同0.3%)と3四半期ぶりに減少したが、非製造業が前期比2.1%(4-6月期:同▲2.1%)と4四半期ぶりに増加した。

7-9月期の経常利益の大幅増加は前述したように特殊要因により大きくかさ上げされているが、特殊要因の影響を受けない営業利益で見ても前年比▲3.0%と4-6月期の同▲7.1%から減益幅が縮小している。企業収益は最悪期を脱しつつあると判断される。

また、設備投資は前年比で減少に転じたが、15年後半以降の企業収益悪化の影響が遅れて表れたものであること、前期比でみればほぼ横ばいとなっていることを踏まえれば、それほど悲観する必要はないだろう。企業の投資意欲が大きく高まることは見込めないため、設備投資が景気の牽引役となることは期待できないが、企業収益の回復に伴い徐々に持ち直しに向かうことが予想される。

■7-9月期・GDP2次速報は1次速報とほぼ変わらず

本日の法人企業統計の結果等を受けて、12/8公表予定の16年7-9月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比0.6%(前期比年率2.4%)になると予測する。1次速報の前期比0.5%(前期比年率2.2%)とほぼ変わらないだろう。

設備投資は前期比0.0%から同0.2%へと上方修正されるだろう。設備投資の需要側推計に用いられる法人企業統計の設備投資(ソフトウェアを除く)は前年比▲1.4%と14四半期ぶりに減少した(4-6月期:同3.1%)。一方、金融保険業の設備投資は前年比▲1.5%と減少幅が大きく縮小した(4-6月期:同▲18.0%)。

法人企業統計ではサンプル替えに伴う断層が生じるため、当研究所でこの影響を調整したところ、設備投資の伸びは前年比0.5%程度となり、公表値より伸びが高くなった。GDP・1次速報の設備投資は名目・前年比▲1.3%となっており、本日の法人企業統計の結果は設備投資の上方修正要因と考えられる。

また、7-9月期のGDP2次速報から2008SNAへの対応に伴い、研究・開発(R&D)への支出が設備投資に計上される。内閣府では、2016年度中の各四半期における研究・開発サービスの産出額(民間企業・公的企業合計)の推計値を公表しており、2016年度の前年度比は2.1%(*1)と現行基準の設備投資よりも高い伸びとなっている。このことも7-9月期の設備投資の上方修正要因になるとともに、設備投資の伸びは過去に遡って上方修正される可能性があるだろう。

民間在庫は1次速報で仮置きとなっていた原材料在庫、仕掛品在庫に法人企業統計の結果が反映されるが、1次速報の前期比・寄与度▲0.1%から変わらないだろう。その他の需要項目では、9月の建設総合統計が反映されることなどから、公的固定資本形成が1次速報の前期比▲0.7%から同▲0.1%へと上方修正されると予想する。

なお、12/8公表予定の16年7-9月期GDP2次速報では、約5年に一度の基準改定(2005年基準→2011年基準)に加え、国民経済計算が準拠する国際基準が1993SNAから2008SNAへ変更され、その結果を反映した上で15年度の速報値が第一次年次推計(現在の呼称は確報)に改定される。

2008SNAでは、(1)非金融(実物)資産の範囲の拡張等(研究・開発(R&D)の資本化、防衛装備品の資本化など)、(2)金融資産・負債のより精緻な記録、(3)一般政府や公的企業の取扱精緻化、(4)国際収支統計との整合、などの対応が行われる。

内閣府は、2011年基準改定(2008SNAへの対応も含む)により2011年の名目GDPの水準が19.8兆円押し上げられるとの試算を公表しているが、GDP成長率(名目、実質)への影響は不明である。今回の2次速報では、GDPの水準が過去に遡って大きく変わることに加え、年度、四半期毎の成長率も大幅に修正される可能性がある。しかし、現時点では基準改定後の過去の計数が公表されていないため、今回の7-9月期GDP2次速報の予測はかなり幅をもってみる必要がある。

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(*1)四半期ベースでは2016年4-6月期が前年比2.3%、7-9月期が同2.6%、10-12月期が同2.0%、2017年1-3月期が同1.6%である。
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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長

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