中国で最も成功した「赤ワインの魂が宿った白ワイン」の実力

中国で最も成功した「赤ワインの魂が宿った白ワイン」の実力

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2020/11/20
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「ボルドーワインの輸入国No.1」をキープし続け、輸入ワインを好む中国人だが、中国のワイン関係者たちには、輸入ワインへの強い対抗心がある。そんな中国のワイン市場が今、急速に成長している。

その代表例が、中国の先駆的なワイナリー「Zhang Yu Wine Company(チャン・ユー・ワインカンパニー)」だ。1892年、中国の外交官だった張備士(チョウピシ)によって設立された、中国で最も古く、年間1億5000万本ものワインを生産している中国最大のワイン製造会社である。

欧米から50万本以上の苗木を輸入し、オーストリアのブドウ栽培家であるヴィルヘルム・フォン・バボー男爵の支援を受け、中国の近代的なワイン生産の道を切り開いた。それから128年を経た今、新たなオーストリア人の醸造家、レンツ・モーザー15世によって次のステージに引き上げられた。

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レンツ・モーザー15世

レンツ・モーザー15世ー中国ワインを世界に広める新たな使命

オーストリアの著名な醸造家であるレンツ・モーザー15世は、16世紀まで遡るワイン醸造家一族、モーザー家の15代目だ。彼の祖父、レンツ・モーザー14世はヨーロッパのブドウの栽培に革命をもたらした人物。

彼が第二次世界大戦後、「株仕立て」に替わり開発した「垣根仕立て」は1950年代から急速に広まり、「レンツ・モーザー仕立て」と呼ばれている。また、無名な品種だった「グリューナー・ヴェルトリーナー」をオーストリアを代表する品種に育て上げた。

6歳から仕立て、剪定、収穫、ブドウ品種の見分け方を学んだモーザー氏はこの品種を世界のプレミアム白ワインとして確立する使命を受け継いだ。

そして2013年、国際的な交流で親密な関係を築いた前出のチャン・ユー社から共同開発の誘いを受けた。舞台はアジアのワイン生産における新しいホットスポット、中国の寧夏(ネイカ)だ。

イスラム教徒の多い寧夏回族自治区は中国西北部、黄河の上流域に位置し、標高は1100メートル。年間3000時間以上の日照時間(ボルドーは年平均2052時間)はブドウを風味豊かに熟し、気温が低い砂漠の夜はワインの鮮度を保つ。

ブドウの理想的な生育条件にモーザー氏は強い可能性を感じ、シャトー・ワイナリーの開発に協力した。投資額7000万ユーロ(約80億円)超、1500のバリックセラーと、瓶詰めラインなどのハイテク設備を備えたビザンチン様式のシャトーは、モーザー氏にちなんで「Chateau Changyu Moser XV(シャトー・チェンユー・モーザー15)」と名付けられた。

ワイナリーの設立後、チーフ・ワインメーカーに就任したモーザー氏は「ベスト・オブ・チャイナ」を目指し、中国ワインを世界に広めるべく、彼の中国ワインシリーズを誕生させた。このシリーズはヨーロッパ市場に進出した最初の中国シャトーワインとなり、すでに世界40カ国で販売されている。

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「Chateau Changyu Moser XV(シャトー・チェンユー・モーザー15)」のカベルネ・ソーヴィニヨン

中国人の心を表すカベルネ・ソーヴィニヨン

このシリーズの中で特筆すべきは、カベルネ・ソーヴィニヨンの「MOSER XV カベルネ・ソーヴィニヨン・ブラン・ド・ノワール」だ。

ヨーロッパの3つの主要なワインコンテスト「International Wine Challenge」「Sommelier Wine Awards」「Berliner Wine Trophy」で金メダルを獲得し、みごとに中国ワイン史上で最も成功したワインとなった。

100%赤の品種で造られた白ワインは、中国発の世界的イノベーションとして特にヨーロッパで絶賛されたが、実は中国でも非常に評判が良い。それは「赤ワインの魂が宿っているからだ」とモーザー氏はいう。

「中国の畑では、赤の品種が90%を占めています。中国で赤は権力を象徴する色です。そこで私は、赤ワインを飲む人が喜ぶ白ワインを造りたかったのです。酸味は少なく、苺、ライチ、桜の香りがたっぷりと感じられます」と解説する。

現在このワインの販売は年間6万本に限定され、更なる希少価値を生み出している。

ボルドーに対抗する中国のラグジュアリーワインの登場

今年は、最高級ワインのカベルネ・ソーヴィニヨンの新作「Purple air comes from the East」をリリースした。このエステートワインの2016年ヴィンテージはわずか6300本と非常に少量生産だ。

中国産ワインのラグジュアリークラスと言えば、シャトー・ラフィット・ロートシルトの「LONG DAI」や仏モエ・ヘネシーの「AoYun」だが、このような名門ワインにどう対抗するのだろうか。

「AoYunと Longdai は、どちらも高い評価を受けているフランスのトップエステートで、明確なフランススタイルのワインです。シャトー・チャンユー・モーザーXVの新作『Purple Air comes from the East』は、明らかに中国のテロワール、特に寧夏の特質を尊重するワインです」と、中国のトップワインとなり将来の道を示すものだとモーザー氏は信じている。

「最高級畑のブドウは収穫時、そして発酵後に厳密に選別され、フレンチオークの新樽のみで24カ月間熟成されています。中国のワインだけではなく、世界のトップ・エステートのワインと飲み比べ、ベスト・オブ・チャイナがすでに世界の最高級の一つだということを認識して欲しいのです」

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収穫期の様子

モーザー氏の最新作はワイン専門家には好評だが、世界の消費者の反応はどうだろうか。

「人々は中国ワインに関心を寄せていますし、すでに40カ国に輸出している我が社は間違いなく中国ワインの発展の最前線にいます。世界に評価してもらうことは確かに重要ですが、一番の課題は、10億人以上の潜在的な顧客を持つ中国の消費者の心を掴むことです。世界の一流酒に多額のお金を費やす彼らに、中国ワインにも注目して欲しいのです」

ビジョンは中国ワインのアイデンティティーの確立

今注目を集めている中国の寧夏は、ワインの黄金時代を迎えようとしている。100のワイナリーが存在し、約80件が建設中、50件が建設許可を申請している。葡萄畑の総面積は約32000haに及び、今後5年間で2倍になると予想されている。

今後、熟練した中国のワインメーカーの若き挑戦者が現れ、ベスト・オブ・チャイナの座を狙うことを、モーザー氏は期待している。

「長期的には、中国のワインはやはり中国人に造ってもらいたい。カリフォルニアのナパバレー、チリ、オーストラリア、それぞれの地域のワインに個性があります。ボルドーからさらに中国のワイン業界への投資が増えることが予想されていますが、ボルドーの会社が中国で非常にフランス的なワインを作るより、中国のテロワール、精神性など、中国を表現するワインを中国人に造って欲しいのです」

ただ単にクオリティーの高いワインだけでなく、新しい中国ワインのアイデンティティーの確立を重要視するモーザー氏。将来中国がどのようなワインを生み出していくかは非常に興味深い。コロナ禍を乗り越えて、彼らの健闘を期待したい。

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