BiS×ZOC対バンライブで体感した現場の熱量とリアル アクセル全開でスタートしたツアー初日レポ

BiS×ZOC対バンライブで体感した現場の熱量とリアル アクセル全開でスタートしたツアー初日レポ

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  • 更新日:2021/11/26
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BiS×ZOC

「いろいろお騒がせして申し訳ありません、音楽で返すのがZOCのやりかた方です」と大森靖子が言うと、メンバーたちがステージから去った。ただひとり、渦中の巫まろを残して。彼女が、BiSとZOCのコラボで生みだされた「BEGGiNG」をひとりで歌った。

(関連:【画像】土下座で謝罪する巫まろ

〈命がけで綱渡りをしているから / それでも毎日おしよせてくるトラブルが / まじやばい〉

「BEGGiNG」の作詞は、松隈ケンタとJxSxK。「JxSxK」とは、もうひとりの渦中の人物である渡辺淳之介の別名義である。巫まろは間奏で「この度はお騒がせ、ご心配をおかけして申し訳ありませんでした」と土下座。すると、ZOCのメンバーも戻ってきて全員で「BEGGiNG」を歌った。

2021年11月18日、対バンツアー『BiS×ZOC presents We are BZ tour』の初日公演がZepp Tokyoで開催された。二大お騒がせアイドルグループの競演……と書きそうになったが、別にBiSのメンバーは何もしていない。

この日の先攻はBiS。新メンバーのナノ3はまだステージに参加しておらず、イトー・ムセンシティ部、チャントモンキー、ネオ・トゥリーズ、トギーの4人によるステージだった。

そして、今回のコラボで大森靖子がBiSに書いた「割礼GIRL」が歌われだした……と思ったところ、BiSの所属事務所・WACKの代表である渡辺淳之介が、車椅子に乗ってステージの中央に運ばれてきた。気づくと、ステージにはすでにブルーシートが広げられている。遠目にはトギーの手によって、渡辺淳之介の頭にバリカンが走っているように見受けられた。その間、他のメンバーは「割礼GIRL」を歌い続ける。

〈結局おっさんのいうこと聞いて / 上手にエモい系なのが好きでしょ〉

第1期BiSにはさまざまな作家が楽曲を書いていたが、第3期BiSは松隈ケンタと渡辺淳之介の手によるものが多い。彼らの内面が描かれているかのようなトーンの作品が多いという点で、BiSはWACKの中でも特異な存在である。そんなBiSに大森靖子が書いた「割礼GIRL」は、その曲名のイメージとは裏腹に日本社会の現状を投影した名曲だ。

ところが、その「割礼GIRL」が終わる前に渡辺淳之介は退場。その光景を見ながら「丸坊主にする気だな……」と察した。第1期BiSの頃、渡辺淳之介は何かあると頭を丸めていたからだ。

ステージに残ったBiSの衣装は、大森靖子のプロデュースにより、ふだんよりも肌が出たもの。続く「STUPiD」では、ZOCとの共演のためか、BiSでサイリウムが振られている光景が新鮮だった。また、ZOCには、現在のアイドルシーンの中でもダンスという点でひとつの頂点に君臨する雅雀り子が在籍し、振り付けも担当している。対するBiSは、雅雀り子が振り付けた「割礼GIRL」以外はほぼ自分たちによる振り付けだ。大丈夫だろうか……という不安をよそに、「FOR ME」ではステージの左右をフルに使うステージングを見せた。

「テレフォン」でのトギーの叫びは、シャウトというよりも長い咆哮だ。さらに「FUCKiNG OUT」では、ネオ・トゥリーズ、チャントモンキー、イトー・ムセンシティ部も叫んでいく。かと思うと、「つよがりさん」には、爆音の中に甘いメランコリーが漂う。「BASKET BOX」の「良いことってなんですか?」という歌詞も今聴くと実にしみるのだ。

ZOCのデビュー・シングル「family name」のカバーは、はたしてZOC以外が歌って成立するのか、代替可能なのかと前のめりで聴いたが、BiSが歌ってもそれぞれの「family」が投影される。まるでミームのような楽曲だ。「ワーオ!」と叫んで手を振って歌い終えたのには、陽気すぎて苦笑してしまったが、それもBiSらしい。第3期BiSとして最初にMVが公開された「BiS-どうやらゾンビのおでまし-」には、2020年2月8日に宮城県女川町で開催された『ONAGAWACK FUCKiN’ PARTY 2020』で1曲目に歌われたときのことを思いだして胸が震えた。「LOVE」で4人は大きなハートマークを作り、肉声で「以上BiSでした、ありがとうございました!」と叫んでステージを去った。

すると、すぐに後攻のZOCが始まった。カロリーが高すぎる。5月に加入した新メンバー・鎮目のどかに対して「のどか、そんなに脚を出すのか……?」と思っている私を残して、「ZOC実験室」ではZOCが高らかに歌うのだ。〈人生やめられない〉と。

さきほどBiSが歌ったばかりの「family name」が、本家ZOCによっても歌われた。シリアスなのに圧倒的な昂揚感をもたらす楽曲だ。私は、前回の炎上後に開催された、2021年9月9日のZepp Haneda (TOKYO)でのZOCのライブを思いだした。どれだけ炎上しても、ZOCはいつも音楽で私を連れ戻すのだ。「DON’T TRUST TEENAGER」も、〈なんとでも言ってろよ 壊れないさ〉という歌詞がストレートに刺さる。圧倒される。

そして、冒頭で紹介した巫まろの「BEGGiNG」が歌われたわけだ。

BiSの「STUPiD」のカバーの後、もう1曲予想外のカバーが始まった。第1期BiSの「primal.」だ。ライブの直前にMAPAの古正寺恵巳のゲスト参加が発表されたが、彼女は第1期BiSのメンバーであったコショージメグミと同一人物。「primal.」は古正寺恵巳の歌とともに幕を開けた。BiSとの10年近い関係性を物語るように。大森靖子は、2012年に研究員(BiSファンの総称)のイベントで「primal.」を歌っていた。そして、2021年においても大森靖子は、ZOCや古正寺恵巳とともに「primal.」を歌ったのだ。

「①④才」は、現在のZOCのライブのハイライトといってもいい楽曲だ。雅雀り子のダンスが、楽曲の世界をえぐるかのように深く描いていく。前述の9月のZepp Haneda (TOKYO)では、最後に全員がステージ上に倒れたが、この日は古正寺恵巳が「primal.」から続けて参加し、最後に彼女だけが立っているという演出だった。

コロナ禍の日本社会を描いた傑作アルバム『PvP』のリードナンバー「CUTTING EDGE」では、鎮目のどかの成長ぶりに目を見張った。ZOCのメジャーデビューシングル「AGE OF ZOC」は、いわば「炎上賛歌」だったが、2月のリリースから約9カ月、本当によく燃えたものだ。焼きあがりが違う。〈こういろんな正義キラキラ〉という歌詞が、リアルさを増していく一方だった。

とどめは、最後の「IDOL SONG」の冒頭での巫まろの「やっぱりアイドルやめらんねー」という煽りだ。ダブルミーニングでの「煽り」である。落ちサビは、大森靖子に「どうぞ」と言われて巫まろが歌っていた。もはや笑うしかない。

こんな調子でZepp Tokyoでの『BiS×ZOC presents We are BZ tour』は終わったが、ツアー初日なのにアクセルを踏みすぎだ。言い換えるならば、多くの若いファンーーいや若くなくてもーーが現場でこの公演を見届けていたことには希望すら感じた。善悪や価値の判断の前に、まずは現場でリアルに触れるべきだからだ。ポリティカルコレクトネスとコンプライアンスとミソジニーとミサンドリーが渦巻く日本のインターネットに張りついている間に老いてしまうのだけは避けたほうがいい。そう感じる公演だったのだ。

宗像明将

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