煮えたぎる液体にサーバーを沈めて冷却するMicrosoftのデータセンター

煮えたぎる液体にサーバーを沈めて冷却するMicrosoftのデータセンター

  • GIGAZINE
  • 更新日:2021/04/08
No image

Microsoftが公式ブログで、低温で沸騰する液体にサーバーを浸して冷却させる「二相式液浸冷却システム」を採用した自社製データセンターについて発表しました。

To cool datacenter servers, Microsoft turns to boiling liquid

https://news.microsoft.com/innovation-stories/datacenter-liquid-cooling/

アメリカ北西部から太平洋に注ぐコロンビア川東岸には、Microsoftの社員がやりとりする電子メールなどのコミュニケーションシステムを支えるデータセンターがあります。このデータセンターにはサーバーを格納した鋼鉄製のタンクがあり、タンクの中は沸点が約50℃と水より低く、電子機器には無害な「高機能性液体」で満たされています。

タンクの中では、沸騰した液体が蒸気となって立ち上り、タンクの上面にある冷却装置で凝縮され、タンク内に雨のように降り注いでいるとのこと。

Microsoftの先進的データセンター開発グループで主任ハードウェアエンジニアを務めるフサム・アリッサ氏は、「この二相式液浸冷却システムを本番環境で運用しているクラウドプロバイダーは当社が初です」と述べました。

No image

Microsoftが液浸冷却システムの開発に乗り出したのは、「半導体の集積率は18か月で2倍になる」というムーアの法則が限界に達したのが理由です。

Intelの創業者の1人であるゴードン・ムーア氏が1965年にこの法則を見いだして以来、半導体業界は数十年にわたり電気消費量を増やすことなくプロセッサーの性能を2年ごとに2倍に増やしてきました。しかし、回路の幅が原子レベルに達し、半導体の集積率の向上が物理的な限界にさしかかってきたため、近年では「ムーアの法則は崩壊した」とささやかれるようになりました。

プロセッサーの性能が限界に達しつつある一方、暗号資産(仮想通貨)のマイニングなどにより演算能力の需要は年々高まりつつあります。そのため、半導体業界は電気消費量を増やして性能を上げる方向にかじを切るようになりましたが、プロセッサーが大量の電気を消費するようになるにつれて、プロセッサーが発する熱量も増大していきました。

先進的データセンター開発グループのエンジニアであるクリスチャン・ベラディ氏は「高温になるチップを冷却する上で、空冷ではもはや十分とは言えません。そこで、チップの表面で直接液体が沸騰して冷却を行う液浸冷却の採用を検討しました」と述べました。

No image

Microsoftが液浸冷却システムの効果を調査した結果、この冷却方式によりサーバーの消費電力を5%~15%減少させることが可能だと判明しました。そこでMicrosoftは、データセンターの設計を手がけるWiwynnと提携して、電気素材メーカーの3Mが開発した「高機能性液体」でサーバーを冷やすデータセンターを建設しました。

こうして運用が開始された二相式液浸冷却システム採用のデータセンターは、単に消費電力が少ないだけでなく、水を消費することもないため、「2030年までに消費するより多くの水を供給できるようにする」というMicrosoftの持続可能性への取り組みにも大きく貢献すると期待されています。

Microsoft Azureの主任ソフトウェアエンジニアであるイオアニス・マノサキス氏は「二相式液浸冷却システムを適切に使えれば、空冷よりわずかなエネルギーで、コスト・信頼性・性能の全ての要件を同時に満たすことができるでしょう」と話しました。

このデータセンターと同様のプロジェクトとしては、海底にデータセンターを丸ごと沈めて海水で冷却を行う「Project Natick」があります。Project Natickの内容については、以下の記事を読むとよく分かります。

No image

Microsoftが海中にデータセンターを設置、電力も再生可能エネルギーだけでまかなうクリーンな仕様 - GIGAZINE

Project Natickと二相式液浸冷却システムの類似性について、アリッサ氏は「Project Natickではデータセンターを水の中に置きましたが、私たちの二相式液浸冷却システムはサーバーを水の中に入れるというものです」とコメントしました。

サーバーを海底や液体中に沈めるとなると、部品を交換したり整備したりするのが困難になります。そこでMicrosoftは、故障した部品をすぐに交換しなくても済むようなタンク型のサーバーを開発していく予定とのこと。こうしたタンク型のサーバーは、人の手入れが行き届きにくい遠隔地にも設置しやすいほか、自動運転車や5Gモバイル通信タワーで運用することも可能です。

Microsoftは、今後数カ月以内に1つのタンクがデータセンターになるようなテクノロジーの検証テストを開始する予定とのこと。ベラディ氏は、次なる目標に対する意気込みについて「最初のステップは、人々にこのコンセプトをよく知ってもらい、このやり方が通用するというのを示していくことです」と語りました。

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加