3大会ぶりのワールド・ベースボール・クラシック(WBC)制覇を目指して順調に勝ち上がる日本の守護神に、兵庫県多可町出身の大勢(巨人)が抜てきされている。16日のイタリアとの準々決勝では、サイドスロー気味の右腕から150キロ台半ばのストレートを連発し、試合を締めくくった。世界の猛者をねじ伏せる「剛球」について恩師に解説してもらった。

イタリアとの準々決勝で抑えを務めた大勢。準決勝以降も日本の命運を託されるか=16日、東京ドーム
「高校時代はパン。今はゴオー。ベース盤近くの勢いは新幹線がホームを通過するようなすごさがある」
西脇工高で大勢を指導した木谷忠弘監督(現京都共栄学園高)は、最速159キロの迫力をそう例える。
大勢は高校でも147キロをマークした本格派だったが、腕を上から振っていた。木谷監督によると、持って生まれた体の使い方からすると、今のフォームが最適で改良も考えたというが、ある残像が脳裏にちらついて見送った。
「お兄さんのフォーク。あれを投げてくれたらとずっと思っていた」
大勢の兄で西脇工高を初の甲子園に導いた勝基さんの勝負球。腕を下げるとフォークが投げにくくなり、変に手を入れて才能をつぶすリスクも避けたかった。
大勢はその後、益田直也(ロッテ)ら歴戦のリリーフ投手をプロに送り出してきた関西国際大(三木市)に進み、今のフォームを固めた。直球は160キロに迫り、フォークも操った。木谷監督は「粘り強く継続できる精神構造を持っていた。あれだけのストレートの回転は打者に怖さを与え、球の軌道にも臭み(打ちにくさ)が出た」と進化を見守った。
その直球はすぐにプロの世界を席巻した。昨シーズンの37セーブは歴代新人最多で、セ・リーグ新人王にも輝いた。
球史に残る成績を残しても、大勢は貪欲だったという。木谷監督がオフシーズンに会うと、「できないことがたくさんある」と打ち明けたという。右足とグラウンドの接地時間などを課題に挙げ「再現性を考えるとまだまだ。伸びしろがある」と、研究者のように球の質を求めていた。
大谷翔平(エンゼルス)らを擁する日本は、米マイアミに戦いの場を移し、21日午前8時(日本時間)からメキシコとの準決勝に臨む。大勢がマウンドに上がる時、「侍ジャパン」の勝利が近づく。