外国人が熱視線!日本のコンビニスイーツに秘められたインバウンド需要のポテンシャル

外国人が熱視線!日本のコンビニスイーツに秘められたインバウンド需要のポテンシャル

  • @DIME
  • 更新日:2023/01/25

「寿司」「ラーメン店」と、次々と海外でブームになる日本食。だが他にも「日本食ネクストブレイク」になりそうな候補は目白押しだ。今回紹介するのは日本の「コンビニスイーツ」などもその一つだ。

「甘すぎない」が日本のスイーツの魅力

「もともと甘いものが苦手だったんです」

そう語るのはオーストラリア第3の都市ブリスベンに住むクリスさん(30代・男性)。

「学生時代の友だちの中にはスーパーマーケットで、12個で5ドル(約450円)くらいのシナモンドーナッツを買ってきて『これでランチもおやつもディナーもオッケー。コスパ最高だろ?』なんてうそぶくヤツもいたんですけど、僕には信じられませんでした」

確かにオーストラリア人は甘いものが好きだ。シナモンドーナッツ以外にも直径10センチほどのチョコチップクッキーなどが同じく12個入りのものがスーパーで売られている。スーパーでも生クリームがたっぷりのホールケーキが600~700円ほどで売られている。

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オーストラリアで売られているショートケーキ。一見日本のものと変わらないが、よくよく見るとクリームも生地も大雑把な感じがする

筆者などは「5人家族でも……食べきるかなあ」と躊躇するのだが、カップルはおろか一人で平らげるオーストラリア人も多い。しかもそれらがいずれも日本のものよりもず~~~っと甘い。

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オーストラリアのプリン。見た目は日本のものと同じだが甘さは数倍!

クリスさんに転機が訪れたのは5年前、ワーキングホリデーでやってきてオーストラリアに住むようになった日本人女性と出会ってからだ。

「彼女があきれたように言うんです。オーストラリアのスウィーツはなんでも甘すぎる、頭が痛くなるって。もちろん他のオーストラリア人にはピンと来なかったようですが僕も同感だったので意気投合。それで彼女に、オーストラリアにある日本人がパティシェをしているケーキ屋さんに誘われたんです」

甘いものが苦手なクリスさん。最初は迷ったが結局行くことにした。「まあ、ケーキというよりも……彼女といっしょにいることに興味があったんで(笑)」。

デート目当てで行ったその店で彼女に勧められるままにショートケーキとモンブランをわけあって食べたところ、完全にハマった。

「そのとき僕は気づいたんです。ああ、僕は甘いものが嫌いなんじゃない。甘すぎるのものが嫌いだったんだって」

甘さが主張しすぎず、ミルクや栗の味わいが感じられるクリーム以外にも、きめ細かくふわっと繊細な生地にも驚いた。オーストラリアのケーキ生地はもっと雑な感じのものが多い。

「それで彼女とその店に通うようになって。結局その後、結婚することにしました」

日本の甘すぎないケーキがとりもった甘い縁だ。

最高のスイーツが安く近くで手に入る!

その後クリスさんには二度目の衝撃の出会いがあった。

「ハネムーンは彼女のご両親へのご挨拶も兼ねて日本に行きました。僕のひそかな楽しみは〈日本のケーキ〉の本場である日本でケーキを食べること!でも彼女の実家は田園地帯のそばにあるのでケーキ屋さんがない。がっかりしていたら彼女が言うんです。『なんだ、だったらコンビニエンスストアに行こう』って」

日本ではかなりの田舎でもコンビニがある。彼女の実家のそばにも車で10分もかからないところにあった。だがクリスさんには彼女の言葉の意味が理解できなくて、こう反論した。

「いや、僕はアイスクリームを食べたいんじゃない。日本のケーキが食べたいんだよ、本場の日本で!」

クリスさんの悲痛な叫びにも彼女は耳を貸さず、ニヤリと笑うだけだった。とにかく車に乗って、と。

釈然としないながらもクリスさんは助手席に乗った。すぐに景色に目を奪われた。オーストラリアでも米を作っているがクリスさんの家があるブリスベンのそばには水田はない。青々を同じ長さで茂りながら風にそよぐ稲は見たことのない美しさだった。

道が田んぼから外れて商店や住宅が建ち並ぶようになったとき、クリスさんはUターンしてもう一度さきほどの風景を眺めることを提案しようとしたのだが、車はコンビニの駐車場に入っていた。そして彼女についてコンビニのあるコーナーにたどり着いたとき。

「あったんです、本当に!発見したんです!」

彼女が連れて行ってくれたのはスイーツのコーナーだった。

「こんなふうに興奮気味に話されても、コンビニにあのおいしいスイーツが並んでいることが日常的な光景である日本人のみなさんにはわかってもらえないかもしれませんね。でもおいしいスイーツがコンビニで気軽に手に入るっていうのは、僕には衝撃だったんです!」

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普通のコンビニやスーパーで繊細な味わいのスイーツが手に入ることがクリスさんには衝撃だった

クリスさんがもう一つ驚いたことがある。

「シュークリームやエクレアみたいなシンプルなものは100円とか150円。ちょっとこだわったケーキでも250円くらい。その安さも衝撃的でした。安いから味が劣っているのかと最初は疑ったのですが……オーストラリアにある日本人パティシェのケーキ屋さんのものとそう大きくは変わらない。無茶苦茶おいしい。そのことにも驚かされました」

朝昼晩コンビニスイーツの猛者も

以来、彼女との日本への里帰りでは「コンビニスイーツ」が楽しみに一つになった。コロナ禍で約3年ぶりの日本行きになった2022年の年末も堪能した。観光やスキーで日本を訪れるという友人をつかまえては「コンビニでスイーツを買え」と推奨し、実行した人たちからは必ず感謝されるという。

同世代の女性の同僚にも勧めたところ、日本に到着したその夜に大絶賛のメッセージがSNSで送られてきたという。

羽田に着陸したのが夜8時で疲れてもいたのでコンビニでサンドウィッチでも買ってその日の夕食は済まそうと思っていたとき、ふと目に入ったスイーツコーナーでクリスの言葉を思い出したらしい。彼女の絶賛メッセージはこんな言葉で締めくくられていた。

「クリス、あなたは天才よ」

次の日の夜、またその女性からメッセージが届いた。「寿司もラーメンもトライせずに朝昼晩ずっとコンビニスイーツ三昧よ。甘すぎないから罪悪感がないのも最高ね。クリス、やっぱりあなたは天才よ」

それに対してクリスさんの返事がこうだ。「いや、天才はキミのほうだ。朝昼晩というその手は僕も思いつかなかった」

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クリスさんの同僚が絶賛したコンビニスイーツの一例

そんなクリスさんは「僕はコンビニスイーツ親善大使ですよ」と笑う。

「日本のコンビニスイーツをオーストラリアの向上で再現してスーパーマーケットやコンビニで売ったら絶対に売れると思います。こちらのスイーツの甘さに辟易している人も一定数いますから。特に凝ったものである必要はありません」

「むしろシュークリームとかエクレアとか、あとパンケーキに生クリームを挟んだものとか、シンプルなものだと初めての人も手を取りやすい。そしてひとくち食べてオーストラリアのスイーツとの違いに驚くはずです。僕は生クリームとあんこの組み合わせが最高に好きなのですが」

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シンプルなものこそ日本のコンビニスイーツの実力がわかりやすいという

「和」の味を好む人も

同じくオーストラリアのブリスベン在住のローラさん(20代女性)は高校時代の2017年から2018年にかけて、交換留学生(2ヵ国の高校同士がお互いに留学生を送りあうプログラム)として約半年日本に滞在したときに日本のスウィーツにはまった。まず気に入ったのは抹茶パフェだ。

「アイスクリームの甘さと白玉のまろやかな甘味、そこに抹茶のほのかな苦みが加わっているのがすごく気に入りました」

オーストラリアのスウィーツはたとえばドーナッツの中にジャムをたっぷり入れるとか、アイシングをべったりと塗ったケーキとか「甘さで押し切る」といったタイプのものがほとんど。抹茶の苦みをアクセントに使ったものは衝撃的だったようだ。

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交換留学生時代のローラさん

パフェと抹茶という和洋の融合に感激したローラさんは日本古来のスイーツ、つまり和菓子にもチャレンジする。

「どら焼きもあんことパンケーキの甘さが最高です!それとぜんざい!小豆の甘味がたまりません!」

じつは豆を甘く味付ける料理は西洋社会にはあまり存在しない。スープやシチューにしたりサラダにしたりするにしてもしょっぱい系の味にするのがほとんどで、小豆を甘く味付けしたあんこに対して違和感どころか拒否感がある白人が多かった。

だが今ではローラさんのように「あんこや小豆が好き」と公言する人も増えてきている。

20年ほど前までは巻き寿司を見て「日本人は黒い紙を食べている!」とビックリしていた人も多かったというが、今やそれはフードコートで最も人気のあるファーストフードの一つになったのにも似ている。

まあ、われわれ日本人もその昔、赤ワインを見て「西洋人は血を飲む」と勘違いしたという話もあるが。

賞味期限の関係からなかなかお土産として「爆買い」されないかもしれないコンビニスイーツ。だがインバウンドのキーワードの一つが「モノ消費からコト消費」。

つまり買い物よりも「体験」だ。「最高の寿司を食べたい」とか「ラーメンの名店を訪ね歩きたい」と同様「本場の日本でコンビニスイーツを満喫したい」を旅の目的とする人たちもこれからますます増えて行くことだろう。

文 柳沢有紀夫
世界約115ヵ国350名の会員を擁する現地在住日本人ライター集団「海外書き人クラブ」の創設者兼お世話係。『値段から世界が見える』(朝日新書)などのお堅い本から、『日本語でどづぞ』(中経の文庫)などのお笑いまで著書多数。オーストラリア在住

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