菅政権「コロナ失政」の新衝撃...日本が「ワクチンパスポート構想」で世界から周回遅れになっていた!

菅政権「コロナ失政」の新衝撃...日本が「ワクチンパスポート構想」で世界から周回遅れになっていた!

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2021/04/08
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「ワクチンパスポート」は救世主となる…のか?

海外渡航復活が待ち望まれる中、ワクチンパスポートの全貌が見えてきました。

IATA(国際航空運送協会)の統計によると、新型コロナが世界で猛威を振るった2020年は海外への航空便を利用した旅客数が前年から75%以上も減少し、大規模な航空便が定着してから過去最大の落ち込み幅となりました。

しかしながら、史上最速でのワクチン開発から大規模な接種により、接種で先行する一部の国では新型コロナについて劇的な改善が見られており、21年は海外渡航もかなりの程度回復するという期待が広がっています。

そのカギを握るのがワクチンパスポートです。本稿ではこの構想について詳しく紹介していきます。

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海外渡航は回復する…のか? photo/gettyimages

ワクチンパスポートとはワクチン接種を証明することで、一般渡航客に求めている隔離などの要件を緩和することで、海外渡航をスムーズにする制度のことです。

この議論を主導しているのが、mRNA(メッセンジャーRNA)ベースのワクチンを、先進主要国の中で最も大規模に接種することに成功し、新型コロナの状況を劇的に改善させている英国です。

英国は21年1月中旬に1日当たりの死者数が2,000人に迫るなど人口比で見て世界最悪の犠牲を出していましたが、3月末時点で全人口の40%以上が1度は接種を受けるなどワクチン展開で先行し、死者数が最悪のタイミングからわずか2ヵ月で1日あたり20人以下と、日本を下回る日も出てくるなど急速な回復傾向にあります。

よりボラティリティの低い7日間平均の死者数も1月中旬からの2カ月で15分の1以下にまで減らしています。

海外渡航「復活」へ

こうしたワクチンの大きな効果を受けて、英国のボリス・ジョンソン首相はワクチンパスポート制度を夏の休暇シーズンまでに制定して、接種者を優先する形で海外渡航を復活させていく方針を打ち出しました。

英国では6月21日に向けて4つのステップで行動制限を緩和させるプランを発表し、6月末以降はスタジアムや劇場への定員までの入場を許可する計画ですが、こうした国内の大規模な施設へのアクセスにも、ワクチン接種者を優先することを検討しています。

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ワクチンパスポート制度に積極的なジョンソン首相 photo/gettyimages

英クルーズ会社のP&Oフェリーズは6月末から大規模な客船によるクルーズの再開を計画していますが、こちらについても乗船はワクチン接種者に限るという発表をしています。当然ながら、海外渡航については自国だけ議論をしていても意味がないため、英国が議長国を務めた今年2月のG7サミットでもワクチンパスポート構想について、参加国に統一した制度の導入を訴えかけました。

英国以外にEUも、同じく夏の休暇シーズンまでにEU加盟27ヵ国域内の渡航についてワクチンパスポート制度を導入すべく法案の準備に入っています。GDPの2割以上を観光業が占めるなど海外渡航の復活が自国経済の死活問題であるスペインやギリシャといった国が、EUでは「デジタルグリーンパス」と呼ばれるワクチンパスポート制度に積極的なようです。

有効率95%(接種者の発症リスクが未接種者の約20分の1)と高い効果を持つファイザー社やモデルナ社のワクチン接種において、世界で最も先行しているイスラエルではすでにワクチンパスポート制度が導入されており、レストランやジムへのアクセスにも接種者に限るという状況が定着しています。

シンガポール、オーストラリア、タイ、ベトナム…

このように欧州が先行する形で議論が進んでいるワクチンパスポート構想ですが、私が暮らすシンガポールでも議論が進んでいます。

2月下旬にシンガポールのリー・シェンロン首相は複数の国とワクチンパスポートについて議論を進めていることを明らかにして、3月中旬にはオン運輸大臣が同じくワクチンの接種者について、コロナをよく抑え込んでいる地域から段階的に、一般の観光旅行を今年の後半に再開できそうだと発表しました。先行して具体的な話が進行しているのはオーストラリア・ニュージーランドとフィジィのようです。

シンガポール政府はワクチンパスポートによる海外渡航の準備を着々と推し進めていて、シンガポール航空のパイロットや客室乗務員、地上係員に整備士を含めた約1.1万人の従業員の80%が、3月前半までにワクチン接種を完了していると発表しています。

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コロナ対策が進むシンガポール photo/gettyimages

ASEAN全体でもワクチンパスポートの議論が進んでいます。タイやベトナムが議論に積極的で、ASEAN加盟10ヵ国についてワクチン接種の履歴をデジタル証明できるシステムを共通化するというEUと同様の仕組みが検討されていますが、ここで問題となってくるのが承認されているワクチンが各国で異なっていることです。

米国や英国、イスラエルにシンガポールでは、ファイザー・モデルナの2社のmRNAをベースとしたワクチンを中心に接種を進めていて、大規模な治験だけでなく実社会においても高い感染・発症予防効果を持っていることにほぼ疑いの余地はなくなっています。

イスラエルでは先行してワクチンを確保する見返りとしてメーカー側に国民の健康データを提供していますが、その解析結果によるとファイザー社のワクチンを2度接種して1週間以上が経過すると発症リスクが92%、感染リスクが94%、重症化・死亡リスクについては99%も減少することが報告されています。

年齢や性別、人種などの偏りがなくされた大規模な集団間の比較が、続々と論文化されており、上記2社のワクチンについては治験で期待されたのと同等かそれ以上の予防効果が実社会においても確認できています。

中国の「オリジナルワクチンパスポート構想」

ただ、ASEANで国民全体にこの2社のmRNAワクチンを受けさせるめどが立っているのはシンガポールだけです。1度の接種で済むことに加えて保管もmRNAワクチンのような超低温でなく済むためアジアの途上国での展開が期待されているのがアストラゼネカ社のワクチンですが、治験のデータ修正が繰り返されており、有効性も上記2社のワクチンに見劣りする70%前後と見られています。

中国のワクチンに至っては、大規模に接種しているブラジルにおいて3月に入ってからも連日1日当たりの死者数がワーストを更新するなど、回復が著しい米英と真逆のトレンドとなっており、ブラジル政府からも中国製のワクチンの有効性について、治験で報告された数字に対する疑義の声が相次いでいます。

上記2社のmRNAワクチンは高価かつ超低温をキープするサプライチェーンが必要となるため、より安価で展開しやすい中国のシノバック社製のワクチンをインドネシアやフィリピンでは接種していますが、今のところ新規感染者数・死者数の増加に歯止めがかかっていないのはブラジルと同様です。

シンガポール政府としては自国で承認しているmRNAワクチンの接種証明を用いたパスポート構想の実現がより現実的であるオセアニアや欧米主要国との交渉をASEANよりも先行させているようです。

このように実社会において中々効果が見られていない中国製のワクチンですが、中国政府は強気の姿勢を崩しておらず、現在は全面的に規制している海外からの渡航について、中国製のワクチン接種者に限って隔離なく入国を認めるという中国オリジナルのワクチンパスポート構想を発表しています。

今のところ、欧米主要国で中国製のワクチンを承認している国は皆無であるため実効性には乏しいですが、ASEANなどアジアの近隣国から中国との間で2国間のパスポート構想が拡大していく可能性があります。このようにアフターコロナの海外渡航、ひいては経済再開の切り札であるワクチンが、一国の外交方針も決めるパワーゲームの様相を呈してきています。

出遅れる日本

ワクチン接種について、先進主要国の中で大きく出遅れた日本ですが、ワクチンパスポート構想においてはさらに周回遅れとなっています。河野ワクチン接種担当大臣も就任当初はパスポート構想に否定的な見解を示していましたが、上記のような英国・EUを筆頭とする議論の進展を受けて、3月中旬にようやく海外での展開次第で日本も検討するという消極的な受け入れ姿勢に転じました。

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河野太郎担当相はどう動くか photo/gettyimages

ワクチン開発で大きく出遅れた日本は、自国産のワクチンを軸としたパスポート構想で議論を主導することは絶望的ですが、有効性の高いmRNAワクチンの接種ペースを加速させ、先進主要国との間でワクチン接種者から渡航を拡大していくことに注力して、これ以上の経済的なダメージの拡大を防いでもらいたいところです。

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