なんでこんなところに? ポルトガル料理研究家・馬田草織がスーパーで思わず二度見した珍食材とは

なんでこんなところに? ポルトガル料理研究家・馬田草織がスーパーで思わず二度見した珍食材とは

  • デイリー新潮
  • 更新日:2022/09/23

思わずスーパーで二度見

文筆家で、『ようこそポルトガル食堂へ』などの著書を持つ馬田草織さん。料理とワインを楽しむ「ポルトガル食堂」を主宰し、食材の魅力を引きだすことに長けた彼女が近所のスーパーで出会った、ちょっと意外な食材は……。

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馬田草織さん

【写真を見る】都会の人は見たことがない? グロいけど絶品な珍味「カメノテ」

近所のスーパーマーケットの魚介コーナーで、京都産カメノテ、とシールが貼られた不気味なパックを見つけた。

えっ、と二度見する。

ほとんどの人がスルーする貝売り場の一角にぽつんと立ち止まり、ひとり静かに高まる。こ、これは……。以前、ポルトガルのストライプの家が並ぶ海辺の街、コスタ・ノヴァのシーフードレストランではまった、あのペルセーべシュではないか。

「な、なにこれ」と目を見開いた中学生の娘

その頃私は、各地のポルトガル人にその土地ならではの料理や食材を教わっていた。ポルトガルの食の本を書くためだ。知り合ったばかりの気さくな食品輸出会社社長のマヌエル氏が、これ食べなきゃはじまらないでしょ、と連れて行ってくれた店で出会ったのが、皿に山盛りのカメノテだった。

カメノテは、ポルトガル語でペルセーベシュ。マヌエル氏と会社の部下のガブリエラとゴンサーロの四人でワインで乾杯したあと、全員で一斉にペルセーベシュに手を伸ばした。初対面なのに5分後にはみんな食べるのに夢中になり、沈黙が広がった。蟹と同じ例の現象だ。そういえば、みんなどうしているかなあ。

ふと我にかえり、すぐさま2パックカゴに入れ、興奮気味に自転車で帰る。

よく洗って、塩でゆでる。タイミングよく、我が家のJC(女子中学生)娘が帰ってきた。

ゆで上がったお宝の見た目に一瞬けげんな顔をするも、興味は津々。部屋に荷物を置くとすぐに戻り、手に取って、言われたとおり黒い腕みたいな部分をすぽっと引っ張る。すると、白い爪みたいな殻についたピンク色のぷにぷにしたむき身が現れる。JC娘はそれを恐る恐る口に含み、かみしめる。

はたして数秒後。

な、なにこれ、と目を見開く。

でしょ。

蟹のような海老のようなホッキ貝のようなうまみ。これだもの、みな食べ出したら止まらないのだ。キッチンで親子して立ちながら、無言で食べ終えてしまった。

到底食べようとは思えない見た目

亀の手のような形だから「カメノテ」と呼ばれている。甲殻類でフジツボの一種だという。本当の亀の手は、持ち主の「亀」の「手」だから個性的な様子にも合点がいく。でも、カメノテの方はそうじゃない。手の先っちょみたいな数センチの短くてゴツい形が全容であって、しかも収獲される前は岸壁にびっしりくっついている。気味悪いことこの上ない。海辺で目にしても、到底食べようとは思えない。

だから、きっと最初に食べた人間はもう何日も食べていないか、誰かに脅されでもしたに違いない。そして、そんな決死の勇者がいたからこそ、この不気味な物体が、ゆでると夢に見るほど忘れられない味だということを私たちは知り得たのだ。このカメノテを最初に食べようと岩場にかじりついて収獲し、ゆでることを試みた人に、心からのお礼が言いたい。

あれ以来、毎回貝売り場をパトロールしているが、カメノテにはまだ会えていない。こうなったら、収獲しに行こうかな。

馬田草織(ばだ・さおり)
文筆家。著書に『ようこそポルトガル食堂へ』など。料理とワインを楽しむ「ポルトガル食堂」を主宰。

デイリー新潮編集部

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