クルマの「アシストグリップ」 なぜ運転席にない?
クルマの「アシストグリップ」(握り手)は、乗り降り時や走行中の車内で体を支える際に便利な装備のひとつです。
一部のクルマの運転席にはない場合もあります。なぜなのでしょうか。

なぜ差がある? 運転席の「アシストグリップ」有無の違いは?
アシストグリップは、サイドウインドウの上のルーフ部に取り付けられています。握り部全体がそのまま取り付けられているもののほか、通常は格納されており、使用する際に握り部が回転するものがあるほか、一部高級車ではウッドパネルが取り付けられているものもあります。
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鉄道車両のようにつり革や握り棒がないクルマの車内で、乗り降りするときや走行中につかまるものとして、使ったことがある人も多いかもしれません。
しかし、後席や助手席には装着されていても、運転席にない車種があるようです。
例えば、トヨタは「アクア」「ルーミー」には装着されておらず、ホンダは「ZR-V」も運転席のみ装備されていません。
これについて国産メーカーの担当者は過去の取材で以下のように説明します。
「車種や用途によって運転席にアシストグリップがないことがあります。とくに車高が低いクルマにアシストグリップが装備されていないことが多いです。
車高が低いクルマは、ルーフと頭部が近いため、万が一の事故の際にアシストグリップに頭をぶつけてしまう可能性があります。
また、事故の際に頭を保護するため、アシストグリップを設定していない車種もあるようです。
運転席のアシストグリップがないモデルは、ボディタイプやクルマの形状にもよりますが、スポーツモデルなどに装着されていないことが多いです」
確かに、車高が低くスポーツモデルであるトヨタ「GR86」/スバル「BR-Z」や「スープラ」には装備されていないようです。
また、悪路などを走行するような車種においても運転席にアシストグリップは装着されていません。
ジムニーを専門とするカスタムショップは次のように説明します。
「先代モデル(3代目)では、運転側にアシストグリップは付いてなかったものの、ネジ穴は存在しました。しかし、現行モデルはネジ穴自体なく取り付けが難しくなっています。
この手のモデルは、悪路走行をする人には頭をぶつける可能性があるのでいらない人もいますが、車高が高い分街乗りメインの人だと乗り降りの際にあると便利でした」
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アシストグリップは体を支える便利なアイテムですが、状況により突起物となってしまうケースがあるようです。そのため、スポーツ走行や悪路走行が想定される車種では装着されないケースが多い傾向にあるのかもしれません。
物を引っ掛けている人も多い? 乗降時はNG? 正しい使い方は
乗降時や走行中に便利なアシストグリップですが、ハンガーを掛けたり、ルーフの空間を活かすために釣り竿などを収納できるポールや、車内のアクセサリーを取り付けたりするなど、本来とは違った用途で使用している人もいるかもしれません。
では、そういった使い方はアリなのでしょうか。

トヨタ「センチュリー」などの高級車はアシストグリップが革巻きとなる
マツダ「MAZDA2」の取扱説明書には「服などをかけるときはハンガーを使わないでください。カーテンエアバッグが膨らむときにこれらのものが飛散し、重大な傷害につながるおそれがあります」と記載されています。
万が一事故が起こった際に、ハンガーなどが凶器となる可能性もあるほか、カーテンエアバッグなどが装備されているクルマであれば、作動を妨げたり、エアバッグ展開時に吹き飛ぶ可能性があります。
そのため、体を支える以外の用途は適正ではなく、推奨すべきではないといえます。
また、最も使う機会の多そうな乗降時も注意しなければならないようです。
トヨタ「アルファード」の取扱説明書には、「アシストグリップ(回転式)は、乗降時やシートから立ち上がるときなどに使用しないでください」と、体重がかかるケースでは使用が禁止されています。
前述のメーカー担当者によると、「開発時に荷重テストなどを行っている」とのことですが大きな負荷がかかった際に外れたり、破損したりするケースもあるようです。
自動車整備工場の整備士は、アシストグリップが破損した例もあると言います。
「確かにアシストグリップは便利なのですが、乗降時に体重をかけた結果外れてしまったり、破損して交換したという例が過去に何度かありました。
便利とはいえ、一般的に樹脂パーツとボルトで構成されるシンプルな作りであり、大柄な方ですと強度が不足してしまうこともあります」
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お年寄りや妊婦など、クルマに乗るのに体を支えたい場合では便利装備といえるアシストグリップ。
しかし、負荷がかかりすぎると破損などを招くことがあるようです。あくまで乗車を「アシスト」するという名称の通り、シートに着座している時に体を支える目的で正しく使用した方が良さそうです。
また、物を掛けたり、つるしたりなど本来の使い方とは違った用途で使用するのは、万が一の事故の際に危険が及ぶ可能性があるので、避けておくのが無難でしょう。
くるまのニュース編集部