建設業界のデジタルリーダーへ、アンドパッドが挑む「長くて深い戦い」

建設業界のデジタルリーダーへ、アンドパッドが挑む「長くて深い戦い」

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2021/11/25
No image

発売中のForbes JAPAN2022年1月号の特集「日本の起業家ランキング2022」で3位に輝いた、アンドパッドの稲田武夫。

急速な需要拡大に供給が追いついていない建設業界のデジタル化に挑む、業界屈指のクラウド企業の戦いとは。

クラウド型施工管理サービス「ANDPAD」を展開するアンドパッドが絶好調だ。契約者数はこの1年間で2000社から3800社(2021年11月時点)に拡大。ユーザー 数は12万人から33万人と倍以上の伸びを見せている。だが、急成長ぶりについて、代表取締役の稲田武夫は誇らしげになるどころか、申し訳なさそうな表情でこう振り返る。

「建設業界のデジタル化の需要は膨らんでいるのに、我々はまだ応えきれていません。自分たちが急成長した感覚はない。需要の増大に引っ張られて、なんとかキャッチアップしようとした1年でした」

この分析にはうなずける部分がある。2019年、改正労働基準法が施行されて時間外労働の規制が強化された。このとき構造的に残業が多くてすぐに対応できない一部の事業や業務には、猶予が与えられた。建設業もそのひとつだが、猶予期間は24年3月まで。あと2年強で働き方改革を実現しなければ法令違反になるおそれがある。デジタル化が遅れていた建設業界も危機感をもって業務改革に取り組んでおり、いまや建設DXの需要拡大に供給が追いついていない状況だ。

メッシュ化、プラットフォーム、遠心力
激変する建設業界だが、この変化は起業時から望んでいたことだった。稲田は大学を卒業後、リクルートに入社。いくつかの部門を経験した後、最後の3年間はインターネットの新規事業開発を命じられ、トライを重ねる。

「会社に行ってもやることがないんです。どんな事業に可能性があるのか考えるのですが、何も出てこない。わかったのは、自分のなかに事業のタネはないということ。自分の価値観や視野にあるもので考えても、答えは見つからない。日本や産業から事業を考えなくてはいけないと学びました」

大きな枠組みで俯瞰したときにピンときた事業ドメインが、それまで縁もゆかりもなかった建設業界だった。

「建設業は日本のセンターピン。製造業に次いで2番目に大きいのに、ひとり当たりの賃金が低く、非効率さが残った業界でもあります。製造業や医療業界にはデジタルのリーダーといえる会社があるのに、建設業界にはそれがいない。建設で変化を起こせば日本が変わると思いました」

起業当初はリフォームの見積もり比較サイトをつくったり建設会社のシステム開発を受託したりしていた。他業界から来た稲 田に拒否反応を示す会社もあった。しかし、3年間ひたすら「建設×デジタル」でコミュニケーションを取り続けていたら認めてもらえるようになった。顧客と関係を深めるうちに、ある3社が施工管理について共通の悩みをもっていることがわかった。その声に応える形でつくったプロダクトが「ANDPAD」だった。

今後、「ANDPAD」は、まだ満たされていない顧客ニーズにどう応えていくのか。稲田は3つの戦略を掲げている。まず1つは、「メッシュ化」だ。

「建設業界といっても、住宅、商業施設などさまざまなセクターがあり、現場もそれぞれ大きさが違います。セクターと大きさをかけ合わせると、解決すべき課題はいくつもあります。そうやってインダストリーを網の目に分解していくと、まだソリューションを提供できていないものも多い。強いプロダクトを他産業に展開するのではなく、開いている穴をひとつずつ埋めていきたい」

この1年、とくに力を入れてきた穴が内装、外壁、水回り、電気などの専門工事だ。例えばエアコンの取り付けなど1日に多数の現場を回る小さな工事向けに、ホワイトボードで行っていたスケジュールなどの情報管理をクラウド化した新プロダクトをリリースしたのも、メッシュ化戦略のひとつだ。

ニッチなところを拾うのは非効率ではないか。そう問うと、稲田は「ニッチと思ってもらえるならありがたい」とニヤリ。

「建設業界全体がとてつもなく大きいので、専門工事ひとつだけでも大きい。ニッチだと思われて他社がやらないなら、我々がやる意味があります」

2つ目は、プロダクト・プラットフォーム戦略だ。建設には、施工管理以外にも、受発注、入金、原価計算などさまざまな業務がある。それらを管理するプロダクトを開発して、さらに経営までつながるデータ環境を構築することで、効率化をサポートする。

3つ目は組織展開だ。この1年で社員は倍増して539人になった(21年10月1日時点)。規模が大きくなると求心力を保つことに苦心するケースが多いが、むしろ意識しているのは遠心力だ。

「我々だけで業界すべてをカバーできないので、遠心力を働かせていろんなパートナーとやっていくのは当然です。また、我々の会社からデジタルの人が外に散らばっていくほうが業界のデジタル化は早く進むでしょう」

稲田の目には、勝ち筋がはっきり見えている。ただ、本人が「長くて深い戦い」と形容するように、巨大な建設業界にデジタルを浸透させるのは長期戦になるだろう。起業家にはゼロイチ好きが多いが、はたして最後までやり切れるのか──。

「答えがわかってしまったら、やり切ろうとしない人もいるでしょうね。ただ、私は違う。答えの方向がぼんやり見えているけど、やるのに時間がかかってみんなが投げ出すような課題に向かうほうが燃えるんです」

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加