未回収の伏線がある!? 続編や映画化は無理? 日曜劇場『VIVANT』最終回を徹底考察&あらすじを深掘り解説

未回収の伏線がある!? 続編や映画化は無理? 日曜劇場『VIVANT』最終回を徹底考察&あらすじを深掘り解説

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  • 更新日:2023/09/21
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『VIVANT』より(C)TBS

TBS系日曜劇場ドラマ『VIVANT』が9月17日(日)に遂に最終回を迎えた。謎が謎を呼ぶ展開で毎話ごとに注目を集め、今季ドラマでもトップの盛り上がりを見せた本作。今回は、最終回となる第10話の内容を振り返り、福澤克雄監督の次回作について考えていく。(文・寺島武志)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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●誰も予想のつかなかった結末!

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林泰文、役所広司『VIVANT』第10話より(C)TBS

ドラマ『VIVANT』最終回(第10話)が、17日に79分スペシャルとして放送され、様々な考察がなされた中、誰しもが予想し得なかった結末を迎えた。

放送に先立って、TVerでは「『「VIVANT』最終回を見る前にここを見ておくべし!徹底解説ダイジェスト」を配信。

動画では、注目ポイントとして、第2話の中で、チンギス(バルサラハガバ・バトボルド)率いるバルカ警察から逃れる乃木(堺雅人)、薫(二階堂ふみ)、ドラム(富栄ドラム)を残し、わずかな時間であるが、野崎(阿部寛)が別行動を取った点。

第7話で薫に思いを告白した乃木が3日にもわたり、連絡をしていなかった点。

そして第9話で、フローライトの件をバラし、さらに、乃木によって殺害されたはずの別班メンバーが生きている証拠映像を送ったテントのモニターは誰なのか、以上の3点をポイントとして挙げ、視聴者にヒントを与えていた。

さらに、第8話でバルカ行きの飛行機で乃木と同乗した野崎が、乃木に対し“お前と(亡くなった後輩が)似ているんだ”と語った人物として、「リュウ・ミンシュエン」という名を挙げている。わずかではあるが、この部分は本編ではなかったシーンだ。

一方で、本作の監督の1人・宮崎陽平氏と、ドラムが最終回当日朝の「サンデー・ジャポン」にVTR出演。

「ドラムはどうなるんですか?」という質問を受け、宮崎監督は「これ言っていいのか分からないんですけど…」とした上で、「ドラムは裏切りませんので、安心してください」とコメント。この発言は、たちまちネットニュースとなり、考察合戦をさらに過熱させた。

●乃木の潜入任務を見抜いていたベキ

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堺雅人、役所広司『VIVANT』第10話より(C)TBS

第9話では、「別班の任務としてここに来た」を白状した乃木に向け、実父であるテントのリーダー、ノゴーン・ベキ(役所広司)が刀を振り上げるシーンで終わった。しかし、その刀は、乃木を縛り上げ吊るしていた縄を切る。この行為にノコル(二宮和也)は激昂するが、ベキは「全て承知の上で、ここまで生かしておいた」と語る。

第8話で、テントによって、ともに捕らえられた黒須(松坂桃李)を射殺するよう命じられた際、ベキの銃は弾倉は空で、また、ノコルから手渡された銃に1発しか銃弾が込められていなかった。手に持っただけで正確に重さを量ることができるという特技がある乃木は、銃を渡された時点で弾倉の件に気が付いており、黒須を殺さずに場を凌いだ。

そして、ベキは乃木のそのような意図に気づいていた。ベキは、生きていた他の別班メンバーにも触れ、こうも付け加えた。「簡単に仲間を裏切るような人間なら、息子といえど軽蔑に値する。任務のために仲間をも欺いた」。

テントに潜入した上での“ベキ殺害”が任務だったことを打ち明けた乃木だったが、それを翻意させたのが、一目見ただけで人の善悪が分かるという“奇跡の少女”ジャミーンだった。乃木がジャミーンを見舞った際、ベキの顔写真を見て、笑顔を見せたのだ。「この人、知ってるの!?」と驚く乃木に対し、ジャミーンはスマホで「とても優しい人、お父さんみたいな人」と打ち込んで見せるのだった。

ベキが単なるテロリストではないと感じた乃木は、別班のトップ・櫻井里美(キムラ緑子)の了承を得た上で、潜入捜査するに至った経緯を語る。

●乃木が残した意味深な発言の数々…。
謎を解くカギは『ハリーポッター』の「スネイプ先生」

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阿部寛『VIVANT』第10話より(C)TBS

乃木はこれまで、公安の野崎(阿部寛)に様々な手法でメッセージを残していた。野崎は乃木が残した手がかりについて考えながら、空港での別れ際に「スネイプ社」との打ち合わせがあると乃木に告げられたことを回想する。

「スネイプ社」は、自分がハリーポッター好きであることを知った上で残したヒントであり、乃木自身が「スネイプ先生」であることいメッセージに気が付く。そして“スネイプ先生は裏切り者に見えて、ダンブルドア校長やハリーを助けるために敵に潜入していた偉大な先生”だったことであるから、乃木がテントに潜入していることを確信する野崎。

乃木の命が危険に晒されていることを察知した野崎は、4つの棺桶を用意し、撃たれた別班メンバーが死んだと偽装していた。

ベキは、乃木と黒須に対し、任務を遂行する強い意志を激賞し、さらに、こうも付け加えた。「息子に命を奪われるなら本望だ」と…。さらに、フローライトの事業を進めるにあたり、乃木、さらにプラントシステムを熟知する黒須に協力を求め2人に頭を下げる。乃木はあくまでも“日本のための任務”として、これを引き受け、バルカ政府に情報を流した裏切り者を探し出す。

そして、バルカ政府がフローライト利権をめぐり、ノコル率いるムルーデル社と交渉を始める。裏で内通者を調べていた乃木と黒須は、天才ハッカーの太田(飯沼愛)の協力を得て、ベレール興産側から情報が漏れていたことを突き止める。その通り、調印の場でベレール興産代表のゴビ(馬場徹)がノコルらを裏切り、バルカ政府側に寝返る。利権をすべて手にし高笑いするワイズ外務大臣(河内大和)。しかし、そこに現れたのが、野崎、ドラム、そしてチンギスらバルカ警察だった。形勢は逆転する。

●再び現れた乃木の別人格「F」
父親を逮捕する決意をした乃木

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堺雅人『VIVANT』第3話より(C)TBS

別班の一員としてテントと協力体制を敷いた乃木の前に再び、別人格「F」が現れる。乃木は自分のこれまでの行動に後悔はないと告げる。

次の日、乃木はベキに対し、これまでの思いを全て吐き出し、涙する。対するベキは、これまで犯してきたテロ活動を思い返し、フローライト事業が軌道に乗せた暁には、テントを解散させると語る。

乃木の仲介で、野崎がテントの門をくぐる。野崎はテントの解散を条件に、ベキ、パトラカ(林泰文)、ピヨ(吉原光夫)の身の安全を保証すると語る。

ここで野崎の公安として“裏技”を使う。大使の西岡英子(檀れい)にデスクに隠しカメラを仕掛け、ワイズらから裏金を要求されていた証拠をつかむ。西岡は、バルカ政府の提案を拒否。激怒し武力行使も辞さないとわめきたてるワイズの前に、ベキが姿を現す。

欲にまみれるワイズらを諫め、相手を尊重し、分け合うことの素晴らしさを説くベキ。そんなベキをなおも攻撃するワイズだったが、テントとムルーデル社には一切関係のないこと、裏帳簿もないことがチンギスによって証明される。当時の経理担当は、私腹を肥やしていたことで粛清された男だったのだ。

さらにチンギスは衝撃的な過去を明かす。チンギス自身も、テントが運営する孤児院の出身で、バルカの警察官のほとんどが孤児院出身であると告白する。警察トップに裏金授受の動画を見せ、逮捕状を請求し、ここでワイズは失脚。謀略は失敗に終わり、フローライト事業はノコルのものとなる。

野崎はベキ、パトラカ、ピヨを逮捕。ベキはテントの全てのメンバーに謝意を述べ、バルカを後にする。その後、日本へ移送されるが、ここで大事件が起きる。

テントのモニターの助けを受けた上で、護送から逃がれ、姿を消したのだ。

●ベキの本懐は妻・明美の復讐…。

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役所広司『VIVANT』第10話より(C)TBS

テント解体後も、太田の助けを借り、モニターたちの動向を追っていた乃木と黒須は、ベキ逃亡を手助けしたモニターが公安の新庄(竜星涼)であることを突き止める。ある民家に3人をかくまい、「偉大なるベキ様のお役に立てたのなら幸いです」と告げ、海外逃亡する。

その報を受け、急きょ帰国する乃木。櫻井から情報がもたらされ、ベキの最終標的は、内閣官房副長官の上原史郎(橋爪功)だった。ベキは、公安在籍時にバルカで家族らを見捨てた当時の指揮官への復讐を果たそうとしていたのだ。妻の「復讐して…」との最期の言葉を40年越しで実行しようとしたのだ。

上原の家に押し入り、家族を縛り上げた上で、帰宅した上原に銃を突きつけるベキ。そして現場に乃木が現れる。ベキに銃を向けながら、逡巡する乃木。しかし、上原を撃つ寸前に、3人まとめて射殺する。ベキら3人の銃には弾は込められていなかった。

ノコルに父を射殺したことを報告する乃木。しかし、ノコルはベキがバルカを離れる前に、覚悟を決めていたことを明かし、さらに「憂助が私を殺すなら、日本もまだまだ捨てたもんじゃない」と語っていたのだ。ノコルは「お父さんは憂助に撃たれて、幸せだったはずだ。ありがとう…兄さん」と、初めて兄弟の絆を口にする。

乃木はノコルの「皇天親無く惟徳を是輔く(こうてんしんなく ただとくをこれたすく)」との言葉を残す。この言葉は孔子が編纂した中国古代の経書「五経」の一つ「書経」に記されており、「天は公平で、特定の人をひいきせず、徳行のある者を助ける」の意だ。さらに「花を手向けるのは、まだ先にするよ…」と、意味深なひと言を最後に電話を切る。これが“ベキ生存説”が囁かれる根拠となっている。

神田明神で薫、ジャミーンと再開する乃木。そこに「F」の声が聞こえ、抱き合う3人の横に立つ祠には赤い“別班饅頭”が置かれているところで、物語は終わる。

●福澤克雄監督「僕の中では第3部まで考えて作っている」

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ナンディン・エルデネ・ホンゴルズラ『VIVANT』第10話より(C)TBS

とにかく怒涛の展開で、様々な伏線が回収され、愛のあるラストシーンだったが、未回収の伏線もあり、空白を残した物語だった。

早くも続編や映画化を期待する声も上がり、最終回直前に行われたファンミーティングにて、原作・演出を兼ねた福澤克雄監督は「次回作があるのかよく聞かれる」と明かした上で「皆さん次第です。正直に言うと、僕の中では第3部まで考えて作っている」と語った。

しかし、福澤氏は、来年1月に60歳となり、定年を迎えることが確定している。本作は数々の名作ドラマを手掛けた福澤氏に対し、TBS側が長年の功績への感謝として、「1話1億円」とも噂される制作費を用意し、全てにおいて福澤氏の意に沿う形が取られた。

福澤氏もその期待に応えるように、超大作を作り上げ、「ドラマのTBS」の復活を印象付け、局に恩返しを果たした。定年後は、同局に籍を置きながら、映画も含めた監督業に専念するともいわれているが、現時点では未定だ。

ドラマの盛り上がりに水を差すように、第9話放送後の9月11日、『週刊女性』WEB版で「『VIVANT』続編決定!メインキャスト続投で放送は2年後」と報じたが、福澤氏がいくら大物ディレクターとはいえ、自身の身の振り方も定めていない段階で続編制作を決められるはずはない。よってこの報道は、PV狙いのフェイクニュースと断じていいだろう。

福澤氏の中で、3部までのシナリオがあったとしても、続編が視聴者を満足させる出来になるのかどうかは未知数だ。これは製作費や、再びこの豪華キャストを集められるのかという問題の前に、この“第1作”をスケールアップできるのかが懐疑的であるからだ。

往々にして、大作の続編で、1作目を超えることは難しいもの。加えて、1週ごとに謎を残す“考察系ドラマ”であるために、劇場版には不向きだ。

福澤氏は還暦を前に『VIVANT』という名作ドラマを作り上げ、健在を示した。しかし、同時に重い十字架を背負ってしまったともいえる。『半沢直樹』や『下町ロケット』など、引き出しの多い福澤氏だからこそ、『VIVANT』続編にはこだわらず、福澤氏にはまた違った世界観を示した新たなドラマ作りを期待したい。

(文・寺島武志)

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