科学作家が絶品ラーメンの味を「わかり合える」理由を真摯に考えた

科学作家が絶品ラーメンの味を「わかり合える」理由を真摯に考えた

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2020/05/24
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好評連載「一番簡単な進化の講義」でおなじみベストセラー科学作家・更科功氏が、そのノウハウを惜しみなく紹介した新刊『理系の文章術』が発売されました。本記事では刊行を記念して同書の「はじめに」を全文公開いたします!

ラーメン情報がメディアに出ている理由

「俺は自分の舌しか信じない」と彼は言った。

彼はラーメンが大好きで、しょっちゅうラーメン屋でラーメンを食べていた。そして、いつも美味(おい)しいラーメン屋を探していた。でも彼は、雑誌やインターネットの情報を信用しない。実際に自分でラーメン屋に行って、自分の舌で美味しいか不味(まず)いかを判断するのだ。彼に言わせれば、雑誌やインターネットの情報なんか、当てにならないそうだ。

彼の生き方は立派である。人の意見に左右されず、信念を持って生きるなんて、誰にでもできることではない。そして、彼のような生き方をしている人には、本書は必要ないだろう。本書は、彼のような信念を持っていない人のために、書かれた本だからだ。

ラーメンを食べて、美味しいか不味いかを言うだけなら、誰にでもできる。でも、なぜ美味しいのか、あるいは、なぜ不味いのか、その理由を説明することは、誰にでもできることではない。そして、その理由の中には、多くの人が共感してくれるものもあるだろう。

つまり、ラーメンが美味しいか不味いかには、何らかの一般性があるはずだ。

一般性があるから、つまり他の人ともわかり合える共通性があるから、雑誌やインターネットにラーメン屋の情報があるのだ。もしも、まったく一般性がなかったら、ラーメン屋の情報なんか読んだって、何の役にも立たない。ラーメンの味について、他の人とわかり合えることなんて、何一つないことになるからだ。

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この美味しさ、わかり合う方法はある Photo by iStock

もちろん、人には好みというものがある。ある人には美味しいラーメンが、別の人には不味いということもあるだろう。しかし、そうであっても、ラーメンの味にまったく一般性がないことはないはずだ。(すべての人ではなくても)多くの人が共通して美味しいと感じるラーメンは存在するからだ。

文章も同じだろう。きっと、わかりやすい文章とか論理的な文章には、何らかの一般性がある。そして一般性があれば、それは人に伝えることができるはずだ。しかも、その一般性は、短い時間で簡単に伝えることができると私は思う。

勉強しないでも国語はできてしまう理由

たくさん勉強すれば、成績はよくなるかもしれない。でも、あまり勉強しなくても、よい成績が取れることもある。高校の科目の中で、そういう人が一番多いのは国語(古文や漢文は除く)だろう。

もちろん、国語が苦手な人もいる。そんな友人の一人が、こんなことを言っていた。

「国語なんて、どうやって勉強したらいいかわからないから、あんまり勉強しなかったわ。だから、できなかったのかしら?」

いや、多分そうではないだろう。だって、彼女だけが、国語を勉強しなかったわけではない。国語が得意な人だって、国語の勉強をそれほどしていないはずだ。

たしかに、国語を毎日勉強する人もいるかもしれない。でも、英語や数学を毎日勉強する人に比べたら、ずっと少ないはずだ。それは、誰でもある程度は、国語ができるからだ。

社会や理科はもちろん、数学や英語の勉強だって、ある程度は国語の勉強になる。そもそも(日本に住んでいれば)日々の生活自体が、国語の勉強になる。だから、みんな国語の基礎力は持っているのだ。この「はじめに」を、つまり今読んでいるこの文章をきちんと読めるなら、もうあなたの国語の基礎力は完璧だ。

あとは、少しコツをつかむだけだ。それには長い時間はかからない。1時間前にはまったく自転車に乗れなかった人が、今ではスイスイ乗れたりする。それが、コツをつかむということだ。

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コツをつかめば書きはじめられる Photo by Depositphotos

本書は「科学に関する文章の書き方(科学ライティング)」の本である(ただし、科学にかぎらず他の分野でも、論理的な文章を書くときには役に立つだろう)。

科学に関する文章を書く機会で、一番多いのは、おそらく大学や高校での論文やレポートだろう。筆記試験では「〜について論ぜよ」みたいな問題もよく出題される。大学院生や研究者になれば、雑誌やウェブサイトに記事を書くこともある。研究費の申請書や報告書なども書かなくてはいけない。忙しいので、なかなか落ち着いて文章の書き方を考える時間は取れない。でも、本書なら、短い時間で読めるはずだ。

なお、本書には、多くの文献の文章を参考にさせていただいた。ただし、参考にさせていただいた文章の多くには、大なり小なり私によって手が加えられている。中には、本書の趣旨を説明しやすいように、わざと悪い文章に変更したものさえある。したがって、本書中の文章の責任はすべて著者にある。参考にさせていただいた文献は、巻末に挙げた。

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『理系の文章術 今日から役立つ科学ライティング入門』
著者:更科 功
講談社ブルーバックス / 定価1000円(税別)

これまで感覚的なものとして捉えられてきた「良い文章」という概念、そして「文章の創作」を、理系向けに精緻に検証し、その実践方法を伝授する!

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