Adobeの生成AIは「プロの仕事の5割を減らす」ただしやりたくない繰り返しの作業を

Adobeの生成AIは「プロの仕事の5割を減らす」ただしやりたくない繰り返しの作業を

  • ASCII.jp
  • 更新日:2023/11/21
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2019年の同イベント以来、4年ぶりの来日となったスコット・ベルスキー氏

CSO ベルスキー氏も来日し4年ぶりの大規模リアル開催

アドビは11月16日、東京ビックサイト南棟でクリエイター向けイベント「Adobe MAX Japan 2023」を開催した。大規模会場でのリアル開催は、2019年以来4年ぶりとなる。アドビ常務執行役員兼CMOの里村明洋氏によれば、基調講演の来場者数は約3600人。来日したデザインおよび新興製品担当 エグゼクティブバイスプレジデント兼CSO(最高戦略責任者)のスコット・ベルスキー氏がホストとして登壇し、生成AI「Adobe Firefly」を中心に、Creative Cloud製品の最新アップデートを紹介した。

「Adobe Firefly」は2023年3月に発表され、アドビが提供するウェブサイトで利用できるほか、すでにPhotoshop、Illustrator、Adobe Expressといった製品に機能として組み込まれている。学習データには「Adobe Stock」の許諾済みデータが用いられていているため、商用利用しやすいのが特徴。アドビではフェイク対策のため、「コンテンツ認証イニシアチブ(CAI:Content Authenticity Initiative)」で、コンテンツの来歴を記録する取り組みをしているが、Fireflyはそのコンテンツ認証にも対応している。

ベルスキー氏はFireflyのこうした特徴を改めて紹介するとともに、10月に発表された3つのAIモデル、画像生成AIの「Adobe Firefly Image 2 Model」、ベクター画像を生成できる「Adobe Firefly Vector Model」、デザインテンプレートを生成できる「Adobe Firefly Design Model」に言及。それぞれを機能として組み込んだ、製品のデモンストレーションも実施した。

10月に発表した3つのAIモデルの デモンストレーションを実施

トップバッターは「Adobe Photoshop」。Creative Cloudエバンジェリストの仲尾 毅氏が、「生成塗りつぶし」機能を用いた画像の合成方法を詳しく紹介した。続く「Adobe Illustrator」では、マーケティングマネージャーの岩本 崇氏が、「テキストからベクター生成(Beta)」機能を用いて、ベクター画像を生成。「生成Match」でテンプレートにあわせたスタイルに変更する方法や、生成したベクター画像をコーヒーカップ、トラックといった立体物の写真に、簡単に配置できる「モックアップ(Beta)」をデモした。また「生成再配色」でデザインの配色を簡単に変える方法や、画像やアウトライン化されたテキストから近いフォントを探し、編集できる機能も紹介された。

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Adobe Photoshopの「生成塗りつぶし」を用いて背景に生成したキツネと蝶を合成

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Adobe Illustratorでは「生成再配色」でカラーイメージを簡単に変更できる

「Adobe Premiere Pro」は、マーケティング部マーケティングマネージャーの田中 玲子氏が担当。自動文字起こしされたテキストを編集することで、動画そのものを編集できる「文字起こしベースの編集」で、言いよどみや空白を検索して一斉削除できる機能などの最新アップデートを紹介した。

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Adobe Premiere Proでは「あー」「うー」といった声を自動検出し、映像をつまむことが可能

「Adobe Express」のデモでは、キャラクターデザイナー/イラストレーターの北沢直樹氏が登壇。マーケティングスペシャリストの有川 慧氏とともに、Creative CloudとAdobe Expressを行き来してのコンテンツ制作や、チームへの共有、様々なプラットフォームに展開する方法などを解説した。またFirefly Design Modelを用いた、「テキストからテンプレート生成(Beta)」も披露された。

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Adobe Expressでは保存したアセットや生成AIを使って、手軽に制作、共有ができる

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「生成マッチ」を用いて浮世絵の「赤富士」のスタイルを適用

Adobe ExpressとLINEの相互連携! 新しいクリエイティブの時代

「Adobe Express」についてはこのほか、アドビとLINEヤフーの協業の第一歩として2024年2月をめどにLINE広告を作成できる「LINE Creative Lab」との相互連携が開始されることも発表された。基調講演後の記者説明会には、LINEヤフー 上級執行役員 マーケティングソリューションカンパニー カンパニーCPOの二木祥平氏が参加し、アドビとともにクリエイターのコンテンツ制作を支援していきたいとの抱負を語った。

なお同日にはnoteとも、「Adobe Express」を使って、noteの見出し画像を作成できる機能の提供開始が発表されている。

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「Project Stardust」では重なり合った人も、重なっていた部分を生成して分けることが可能

デモンストレーションの最後には、マーケティングマネージャーの轟 啓介氏登場。同日ベータ版を終了して、「Adobe Firefly」のウェブサイトで一般公開されたばかりの「Adobe Firefly Image 2 Model」を使用し、画像の生成や「生成マッチ」を用いたスタイル変更の機能を紹介した。轟氏はさらに、10月に開催された米国の「Adobe MAX 2023」で、将来の機能をチラ見せする「Sneaks」として紹介された「Project Stardust」のデモンストレーションも実施。写真内の人やモノをオブジェクトとして認識し、動かしたり、消したり、背景を生成したりが簡単にできる様子に、会場に集ったクリエイターから感嘆の声があがっていた。

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「Adobe Express」は専門外のクリエイティブを手がけるプロもサポートすると説明

基調講演後の記者説明会でベルスキー氏は、クリエイターとマーケッターをつなぐ「Adobe Express」の可能性に言及。「クリエイティブとマーケティングの世界はどんどん近づいている」と話し、生成AIを用いることで個々にパーソナライゼーションされたコンテンツの制作や、そのときどきに応じたアジャイルマーケティングが可能になると語った。

また「Adobe Express」によって、「クリエイティビティに参加できる人の数を増やすことができる」とも。「生産性はコンピューターに置き換わり、今後はビジネスマンもクリエイティビティをもとに評価される時代になる」とベルスキー氏。「ビジネスパーソン全てにクリエイティブツールを提供したい」、「Creative CloudのミッションはCreativity for All」と話し、「生成AIは誰もがクリエイティブに対して自信を取り戻せるツールだ」とも話していた。

一方、生成AIによってマーケッター自身がコンテンツを制作できるようになると、クリエイターの仕事が減るのでは? という質問には、「プロの仕事の5割は実はやりたくない、繰り返しの作業。作業から解放されれば、新しいアイデアや可能性を模索する時間を得られる」と回答。「新たなソリューションが生まれ、マーケティングが改善し、デジタル体験が向上する。そうなれば企業はもっとクリエイターを採用したいと考えるはず。実際にエンジニアの世界では、生産性が向上し続けている一方で採用も拡大し続けている」との持論を展開した。

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4年ぶりの大規模リアル開催に熱気に溢れた展示会場

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「3D EDGE PRINTING」はアドビリサーチにて開発中の技術で、一般公開はこれが初。本の小口に立体的に見える文字やモチーフを印刷できる

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漢字はゴシック、かなは明朝で、感嘆符などが独特の新フォント「貂明朝アンチック」もリリース

なお「Adobe MAX Japan 2023」ではこのほか、Adobe Fontsの最新アップデートとしてまんがのフキダシに最適な「貂明朝アンチック」が追加された。すべてのかなに濁音、半濁音がつけられるほか、複数の感嘆符や長い音引きなどを使いやすくする工夫もされている。また、アドビが開発中の新しい技術を紹介する「Sneaks」では、テクニカルリサーチアーティストの伊藤大地氏が、音声を簡単に切り分けできる「Project Sound Lift」を本邦初公開。米国の「Adobe MAX 2023」でも話題を呼んだ、模様が変わるドレス「Project Primrose」も披露され、注目を集めていた。

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ドレスとともに来日したリサーチサイエンティストのリスティーン・ディアーク氏(右)とティー・ジェー・ローズ氏(左)

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ドレスとともに来日したリサーチサイエンティストのリスティーン・ディアーク氏(右)とティー・ジェー・ローズ氏(左)

筆者紹介――太田百合子  テックライター。身近なデジタル製品とそれら通じて利用できるサービス、アプリケーション、および関連ビジネスを中心に取材・執筆活動を続けている。

■関連サイト

Adobe MAX Japan 2023

GPT 2023年11月16日、アドビは東京ビッグサイトで4年ぶりに「Adobe MAX Japan 2023」を実施。約3600人が参加した基調講演では、里村明洋氏とスコット・ベルスキー氏が、生成AI「Adobe Firefly」を含むCreative Cloudの最新アップデートを紹介した。

太田百合子 編集●飯島恵里子/ASCII

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