藤井聡太も実践する異色の睡眠ルーティン「二度寝と寝坊」のメリット クリエイティブな発想にも影響か

藤井聡太も実践する異色の睡眠ルーティン「二度寝と寝坊」のメリット クリエイティブな発想にも影響か

  • NEWSポストセブン
  • 更新日:2023/11/29
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11月10日、11日の対局でも鮮やかな勝利をおさめ、竜王戦3連覇を飾った(時事通信フォト)

「勝負めし」「対局おやつ」から「初手を指す前の一杯」、はたまた「今日の袴の色」まで──前人未到の八冠を手にし、21才にして“天才集団”と称される精鋭揃いの現役棋士たちの頂点に立った藤井聡太八冠(21才)。これまでもルーティンや食事、生活ぶりなどその一挙一動が話題を集めてきた中、現在注目されているのは若き天才が「いかに眠っているか」ということ。

【表で丸わかり】正しい二度寝&寝坊、6つのルール

《まずは寝ること。対局が続くと準備や振り返りに気が向くが、何より対局にいい状態で臨むのがいちばん大切なので、それを意識している。1日にだいたい7〜8時間眠れたらいいと思っているが、ただ家だとけっこう二度寝をしてしまうことがあり、結果的に10時間くらい寝てしまうこともあります。

計画では7時半くらいに起きる予定だが、結果として8時半とか9時になっている》

これは9月に静岡県で催されたトークイベントで藤井が、「勝負について特に大切にしていること」について語った内容の一部だ。

「将棋は“頭脳の格闘技”とも称され、どの棋士も睡眠を非常に重視しています。質を高めるため、眠る3時間前には食事を済ませることにしている棋士もいますし、毎日決まった睡眠時間を確保し、早寝早起きを実践することも重要視されている。そんな中で藤井八冠の“二度寝と寝坊”は異色の睡眠ルーティンとして話題を集めているのです」(スポーツ紙記者)

長らく体調やパフォーマンスに悪影響があるとされてきた二度寝と寝坊だが、取り入れ方を工夫すればこの上ない味方になる可能性があるということ。“竜王級”のポテンシャルを秘めた逆説の睡眠法を徹底研究した。

二度寝で脳内麻薬が出る

睡眠専門医で雨晴クリニック院長の坪田聡さんは「最新の研究によって二度寝には多くのメリットがあることが明らかになった」と話す。

「長らく“二度寝は日中のパフォーマンスを下げる”といわれてきましたが、朝起きてすぐに仮眠を取ると、つまり二度寝すると、起床後に爽快感や集中力がわいてやる気が出るという研究結果が出たのです。これは二度寝の最中に体を覚醒させストレス耐性を担うコルチゾールというホルモンが分泌されることが理由です」(坪田さん・以下同)

得られるのはエネルギーだけではない。

「コルチゾールに加え、二度寝の最中はリラックス効果を促すアルファ波の影響が強くなり、脳内麻薬の一種『エンドルフィン』も分泌されていると思われます。エンドルフィンには、心身の緊張を和らげたり、ストレスを軽減する働きがあるうえ、鎮痛効果もあるといわれます」

“朝寝坊は不健康を生む”という定説も、現代科学では否定されつつある。

「スウェーデンのストックホルム大学が約4万3000人の被験者を対象に研究を行った結果、週末に朝寝坊して長く眠ることで寿命が延びることが判明しました」(科学ジャーナリスト)

歴史をひもとくと、芸術家も睡眠をうまく利用していたようだ。法人向けに睡眠改善プログラムを提供するニューロスペースの代表・小林孝徳さんが話す。

「画家のサルバドール・ダリは、発想を得るためにロッキングチェアに寄りかかり、鉄球を指で持った状態で睡眠を取っていたと伝えられています。寝入ると鉄球が金属製のお盆の上に落ち、パチンという音がして覚醒する。そのとき頭に思い浮かんだ光景を絵の題材にするために二度寝、三度寝と繰り返していたという話がある。

藤井さんも、二度寝や寝坊の合間でクリエイティブな発想が浮かぶことがあるのではないでしょうか」

二度寝も寝坊も「上限」を

心身にいい影響があり、創造的な発想も得ることができる──。二度寝と寝坊によってそんな夢のような成果が手に入るならば実践しない理由はない。しかし坪田さんは「やり方次第では逆効果になる可能性がある」と指摘する。

「藤井さんの場合、年齢が若く、また対局によって脳を酷使しているため8時間睡眠では足りていない可能性がある故に、1時間以上の二度寝をするのが体にも脳にもちょうどいいのかもしれませんが、私たち一般人が二度寝する場合、“20分を一度だけ”を心がけましょう。

20分あればコルチゾールが体に行き渡りますし、それ以上になると眠りが深くなり、起きるのがつらくなるうえ、睡眠のリズムや体内時計のバランスが崩れて日中のパフォーマンスをうまく出せなくなってしまう。

また、二度寝の前にはスマホでしっかりアラームをかけておくようにしてください」(坪田さん)

寝坊においても「体内時計のバランスを崩さない」ことは重要なファクターになる。

「休日、朝寝坊する際、平日と同じ時間または、遅くとも1時間以内には一旦起きて、外の光を浴びた後に再度ベッドに入ることを意識してほしい。日の光を浴びることで体が朝を迎えたことを認識するため、ある程度睡眠時間に差が出ても体内時計が大きく狂うことはありません。ただし普段は起きる時刻をできるだけ固定した方が質のいい睡眠につながります」(小林さん)

寝坊においても時間の上限を設けた方がいいと坪田さんは指摘する。

「休日の起床時刻も平日プラス2時間までにすることが大事です。それ以上多く眠ってしまうと月曜日の夜、しっかり睡眠を取ることができなくなり、生活リズムに支障が出ます。

また、二度寝にしても寝坊にしてもスッキリ起き上がり、その後のいいパフォーマンスにつなげるためには前向きな気持ちで取り組むことが何より重要。『惰眠をむさぼってしまった……』と落ち込まずに『気持ちよく眠れてラッキーだった』と思いながら布団を出れば、その日一日精力的に活動できます」

起床時はいくつかのルールが必要である一方、入眠は自由に、自分に合ったタイミングを見つけるのがカギ。

「かつては夜10時〜深夜2時のゴールデンタイムに眠らなければ効果が得られないという説があったが、それは間違い。しっかり深く眠ることができればいつ眠ってもいいのです」(小林さん)

寒くなるにつれ、暖かい布団が恋しくなる。時にはその誘惑に負けるのもアリ、ということのようだ。

※女性セブン2023年11月30日・12月7日号

NEWSポストセブン

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