鶏肉を熟成させると、なぜウマくなるのか

鶏肉を熟成させると、なぜウマくなるのか

  • PRESIDENT Online
  • 更新日:2017/08/11
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「鶏肉の熟成」3つの疑問

▼Q1. 熟成させるとなぜおいしくなるの?

鶏肉は鮮度がすべて! そう信じて疑わない人は多い。実際は、処理したての鶏肉は味や香りに乏しく、お世辞にもおいしいとはいえない。死後硬直が始まると肉は硬くなり、保水性が低下して歯ざわりもパサパサに。しかし、時間とともに再び肉質は柔らかくなり、旨味を増してくる。これは、酵素の働きによってタンパク質の分解が進み、アミノ酸が形成される“自己消化”と呼ばれる作用によるもの。筋肉から食肉へ、ゆっくりと変化を遂げるこの過程を“熟成”と呼ぶ。

鶏は死後硬直の開始から終了までのスピードが速く、そのぶん熟成に要する時間が豚や牛に比べて短い。一般的なブロイラーでは死後24時間が熟成のピークと考えられているが、筋肉の細胞壁が強固な地鶏の場合は、自己消化もよりゆっくりと進む。旨味成分のグルタミン酸については、7日後まで増え続けるという研究報告も。「鶏は熟成させてもウマい!」が新たな常識になる日も近い!?

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(上)手前はフレッシュな状態、奥はドライエイジング15日目のささみ。わかりにくいが熟成したほうがしっとりと落ち着いた艶が。(下)ドライエイジングで15日間の熟成をかけた丸鶏。みずみずしいハリはなくなりやや硬くなるが、フレッシュな鶏にはない旨味がぎっしり

▼Q2. どうして普通の鶏では熟成できないの?

Q1の定義からいえば、普通の鶏でも熟成はできる。ただし、豚や牛のような長期熟成ができるかといえば、常識的には「NO」だ。その大きな理由の一つに、“菌”の存在がある。

牛や豚に比べて体の小さい鶏は、菌汚染を受けやすい生体といえる。食中毒の原因となるカンピロバクターや病原性のある大腸菌は、糞便に混じって腸内に棲息。解体時に腸管に傷がつくと、内臓や身の部分にこれらの菌が付着し、広がるのに一日とかからない。熟成に時間をかけることで旨味の素のアミノ酸は増えるが、同時に食中毒菌の繁殖も許してしまうことになる。特に刺身やレアで味わおうとするなら、無菌の状態でないかぎり、熟成はご法度と心得られたし。

また、他の肉より不飽和脂肪酸が多く含まれるため、空気中の酸素と反応することで、酸化によって変性しやすい難点も抱えている。総合的に見て、豚や牛より熟成が難しい素材と考えていいだろう。

▼Q3. 鶏肉を熟成させるにはどんな方法があるの?

Q2でも説明した通り、菌の汚染を受けやすい鶏肉の長期熟成は素人が手を出せる領域外にある。プロでも熟成鶏を積極的に扱う店はほぼ皆無。ただし食中毒菌が検出されない無菌の鶏を用意できるならば別だ。たとえば、東京・銀座の「たて森」では、無菌鶏の「高坂和鶏」を氷温熟成とドライエイジングの2通りの方法でねかせている。

前者の場合は、ビニールでぴっちり包んだ丸鶏をタオルでくるみ、鶏肉にとっての氷温に当たるマイナス3.1℃で5~7日間貯蔵。氷温下では、食材は凍る寸前の一種の冬眠状態に入り、自らの細胞の凍結を防ぐために不凍液を蓄積する。この不凍液がアミノ酸であり、素材のおいしさを引き出す旨味成分となる。一方のドライエイジングでは、むき出しのまま冷蔵庫に入れ、風を当てながら温度をマイナス1℃まで下げる。熟成期間は1カ月の長期に及ぶことも! 鶏肉というよりは豚肉に近い、ミルキーな風味が加わる。

(文・堀越典子 撮影・海老原俊之、高見尊裕)

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