ユニクロが長期目標を5兆円から3兆円に下げた理由

ユニクロが長期目標を5兆円から3兆円に下げた理由

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  • 更新日:2016/10/20
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ユニクロを運営するファーストリテイリングが、これまで「2020年に5兆円を目指す」としてきた長期目標を3兆円に引き下げると発表した。国内最大のファッション企業であり直近の決算では連結で約1.8兆円の売上高を発表したユニクロだが、同時に足元の成長鈍化を考慮すれば4年後の5兆円は「現実的ではない」と目標を引き下げたのだ。

ユニクロに何が起きているのか

前年比でユニクロの成長を見ると一昨年から昨年にかけての売上高の成長率は22%増と非常に大きく成長していた。ところが今年の決算では売上高成長率は6.2%とかなりのペースで鈍化している。

このように成長の足をひっぱったのは国内事業の不振だ。国内の消費不振が背景にあるという意見もあるが、どちらかというとユニクロの低迷の方が国内同業者よりもひどいようだ。

そうなった一番の要因は昨年から今年にかけて値上げを試みたことで、価格が大きく上昇したことで大幅な消費者離れを引き起こした。今年に入ってからあわてて価格戦略を見直し、コストを下げる方向で動いているが、一度離れた顧客がどこまで戻ってこられるか難しいところだろう。

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今後の成長は海外事業次第

さて、このように苦しいユニクロ事業だが、国内が立ち直れば冒頭の長期目標が達成できるかというと、そうでもないところにファーストリテイリングの問題がある。

基本的に国内のユニクロ店舗はほぼ飽和状態なのだ。売上高3兆円を目指すという計画の意味は、先行するH&MやZARAのようにグローバル市場で成功することを前提にしている。

つまり、アメリカ、ヨーロッパ、中国、そしてアジアで、H&MやZARAをユニクロが追い越すところまでいかなければ、この長期目標は達成できないという計画なのだ。

ところがその海外事業の不振が長期的な成長計画に暗雲をもたらしている。どのように不振なのか、ファーストリテイリングの発表ではなく、私が実際に目にした消費者の立場で解説してみたいと思う。

NEXT::比較的順調なのは上海のユニクロ[2]

比較的順調なのは上海のユニクロ

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まず海外のユニクロの中で比較的いい感じで現地の消費者に受け入れられているのが上海のユニクロだ。店舗に入ると日本と同等の熱気を感じることができる。

実は上海のユニクロは日本のユニクロよりも3割から5割くらい価格が高い。理由は中国の税制にある。たとえば人気のヒートテックだが、日本の東レから素材を輸出して中国の協力工場で縫製し、また日本に輸入して日本のユニクロで販売している。

このように日本に戻す製品については中国の税関は関税を取らないのだが、中国国内で販売するユニクロには東レから輸入した生地に関税がかなりしっかりとかかる。だから日本国内のような低価格では販売できない。

それでも上海でユニクロが人気なのは、競合企業と比べてデザインも縫製もずっとしっかりしているからだ。デザイン面の好みで言えば日本風のデザインが上海ではやや憧れるファッションであるということもあり、上海ではユニクロ人気を確保できている。

ところが少し離れた場所では事情が変わって来る。

マカオではグローバルブランドに勝てていないユニクロ

同じ中国でもユニクロのマカオの店舗はそれなりに混んでいるとはいえ上海ほどのにぎわいとはいいづらい。

私が見た場所は、マカオ最大級のカジノであるベネチアンに隣接する巨大なショッピングモールで、そこにはほぼ世界的なファッションブランドが全部そろっている。

カジノで大勝ちした観光客が、ブランド品を爆買いして帰る。そんな目的で使われるショッピングモールだ。そこで比べてみるとやはりグローバルファッションブランドの直営店の方がマカオに来訪する中国人旅行客、おそらくはその中でもこのモールで爆買いするような富裕層レベルの旅行客には人気のようだ。

とはいえユニクロとアディダスやナイキを比較しても意味がないという意見もあるだろう。しかしZARAと比べても、残念ながらマカオではZARAの方が集客力があるようだ。

つまり上海での人気はあくまで2000年頃に東京で西日本から上陸したユニクロが人気になったのと同じで、グローバルブランドとしてではなく、「いい商品がこんなに安いお店」という地元のお店としての人気から脱却できていないのだ。

NEXT::悲惨なバンコクのユニクロ店舗[3]

悲惨なバンコクのユニクロ店舗

さらにアジアに行くとユニクロの店舗は悲惨な状態になる。今年の1月に出張でタイのバンコクに行ったときのことだ。日本では真冬だが、出張当時のバンコクの気温は25度くらい。長袖のシャツを着ていったが、それだと街中はうだるような暑さで、現地人は皆、一様に半袖のポロシャツで過ごしていた。

そのバンコクでユニクロの店舗に入るとお客はおらずお店はがらがらなのだが、それも無理はない。日本と同じ商品ラインを販売しているのだ。

つまりみんなが半袖を来ている場所で、ダウンジャケットやコート、ウールのセーターなどが店頭に並んでいる。この店で購入できる商品で、私が仮に今すぐにバンコクで着て町を歩けるものといえば、ぎりぎり冬物のワイシャツが通用するかどうか。

これは明らかに現地の責任者に商品開発の権限が与えられてないから起こる珍現象だろう。もう少しはっきり言えば、この国に投資を決めた責任者がろくに現地を視察もしないで億単位の投資をしているからおきる馬鹿げた現象だ。

ニューヨーク、パリはどうだろう?

さて、気を取り直してニューヨークのユニクロを見ると、ブランド的にはそれなりに頑張ってマーケティング投資をしていることがわかる。地下鉄や主要駅にはユニクロの広告をよく見かけるし、市内でも有数のブランド力があるニューヨーク近代博物館のスポンサーになることで知名度も高まっている。

そこまで努力をしていて、実際の店舗の状況を見ると、来店客の数はかなりさびしい状況だ。

これはいろいろと原因があるのだが、仕方のない面を言えば、ニューヨークが世界最大のファッションブランド同士の激戦地であるがゆえに、競争を考えるとユニクロが望むようなブランド地位に到達するのは並大抵のことではない。つまり競争が厳しいのだ。

とはいえ、基本的な問題はやはり日本と同じ品ぞろえで勝負をしているということだろう。デザイン的にはニューヨーカーの好みにあっていない。ないしはサイズがあっていないという問題があって、基本的にユニクロはニューヨーク在住のアジア人向けのお店にとどまっているように思われる。

パリのユニクロとなるとそれ以上に厳しい。明らかにユニクロ以外の競合店で売られているファッションアイテムの方が魅力がある。パリジャンは10着しか服を買わないという話があるが、本当にそうだとしたらパリジャンはユニクロ以外の服を選ぶだろう。

以上はあくまで私が海外出張の際に空き時間でユニクロの店舗を眺めた範囲内での観察事実なので、当たっている部分と外れている部分はあるかもしれない。ただ現象としてこれだけ海外の店舗を見てはっきりとした不振が目にとれるところを考えると、これはやはり現地に権限を与えずにただ日本の商品をもっていって海外展開を推進している経営者に問題があるとしか思えない。

ユニクロはこの点が変わらない限りは、3兆円は難しいのではないだろうか?

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