自撮り写真で本人確認、企業や政府に導入の動き

  • WSJ日本版
  • 更新日:2016/10/18
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顔認識技術が発達しスマートフォンに搭載されたカメラの質が向上する中で、セルフィー(自撮り)写真を利用して身分確認をする企業や政府機関が増えている。ナルシシズムの象徴ともされていた行為が、将来的にはパスワード代わりに利用される可能性もありそうだ。

スマートフォンで撮影した写真を利用して既に身分確認を行っているのは、米配車サービス大手ウーバー・テクノロジーズやマスターカードなど。アラバマ州の税務局なども自撮り写真を使ったシステムの準備を続けている。

顔認証は指紋、声紋、目の虹彩などを使って本人確認をするバイオメトリクス技術のひとつ。デジタル社会で身分証明を容易にし、詐欺などの犯罪の阻止につながると期待されている。

認証プロセスは、利用者がオンラインで商品を購入する際などにアプリで写真を撮影することで行われる。アプリは撮影された画像の鼻の幅やあごの角度など数千にも及ぶ項目を測定し、それを数値化。それを元に作成された独自の数列が事前に登録してある本人の写真と比較され、2つが一致する可能性が極めて高ければ認証プロセスは完了する。

ただし写真撮影時の照明やひげの有無などに影響されてソフトがうまく認識できないこともあるなど、現時点では認証技術にまだ課題が残る。去年、アルファベット傘下のグーグルが作ったソフトが黒人2人の写真を「ゴリラ」と認識したことが話題になり、同社は謝罪した上でアルゴリズムの改善を行うと発表。顔認証の技術は未完成であることを露呈する形となった。

顔認証によって安全性が高まることはない

自撮り写真のやりとりにはプライバシー保護の面などで問題が生じる可能性があるともサイバー犯罪の専門家などは指摘する。利用者は顔認識技術が安全だと思い込みやすいが、パスワードの管理からは解放されるものの「顔認証によって安全性が高まることはない」とセキュリティー関係のコンサルタントであるマーク・グッドマン氏は話す。

顔や指紋情報はパスワードほど簡単に変更できない点も、自撮り認証が危険とされる一因だ。米人事管理局は2014年と2015年にハッカー攻撃を受け、旧職員を含む560万人分の指紋が盗まれたと発表。当時広報担当者は指紋情報が悪用される可能性は低いとしたが、「技術が発展するにつれて状況が変わる可能性はある」と認めていた。

そんな中でも自撮り写真での身分確認を進めているのが、ウーバーだ。同社は9月、配車を行う運転手に定期的に自身の顔を撮影するように依頼し始めると発表した。ウーバーのアプリはマイクロソフトのクラウド技術を使ったツールでその顔写真を測定。独自のアルゴリズムを使い、登録された写真と一致するか調べるという。同社によれば試用期間中にいくつかの誤認識は生じたものの、99%の確率で運転手の身分確認を達成できたという。

マスターカードは独自のアイデンティティ-・チェック・モバイルというアプリを提供する。オンラインでクレジットカードを使う際などに利用者が自撮りを撮影して本人確認をするシステムだ。利用者はスマートフォンの画面に表示されるフレームをのぞき込む形で写真を撮る。その際に写真ではなく生身の人間であることを証明するため、まばたきをすることも求められる設計だ。

マスターカードのアプリはまずヨーロッパで導入されるが、先行テストに参加した92%の利用者がパスワードではなくバイオメトリクス情報を使った銀行のとのやりとりを望んだと同社は言う。

英金融大手HSBCホールディングスも9月に同様のシステムを導入。利用者が自撮り写真を使って口座を開くことが可能になったと話す。

情報保護の面での工夫

アラバマ州とジョージア州の税務局も自撮り画像を身分確認に利用するシステムを年内に導入する。認証にはモーフォトラストUSAが提供するアプリを使用。自撮りされた写真と自動車局に保存されている写真を照合して本人確認を行う方針だ。

一方、顔認識技術を使った身分確認が進む舞台裏では、各会社が情報保護の観点からさまざまな工夫を続けている。モーフォトラストも含めた数社は、個人のバイオメトリクス情報を本社のサーバーに保存するのではなく、アプリそのものに保存する方法をとる。またマスターカードは本人の顔写真をサーバーに保存するが、その画像は数値化された後にすぐに削除されると同社の広報担当者は話す。来年からは利用者自身のスマートフォンに情報を保存することも考えているという。

マスターカードの顔認証システムを担当したダオンの代表であるトム・グリッセン氏は、数値に変換され暗号化された番号から顔の情報を再び作ることは現時点では不可能だと話す。そのためハッカーが自撮り写真を使いデータの盗難などを行うことは難しいと同氏は指摘する。

しかし非営利団体(NPO)電子フロンティア財団の上席弁護士を務めるジェニファー・リンチ氏は、ハッカーたちはデータを利用する方法を工夫してくるだろうと主張。その場合、バイオメトリクス情報は「一度盗まれてしまったら、大きなリスクが生じる」と話している。

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