ミッツ・マングローブ「14歳の安室奈美恵が歌った『沖縄の戦後』」

ミッツ・マングローブ「14歳の安室奈美恵が歌った『沖縄の戦後』」

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  • 更新日:2017/10/11
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ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回も「安室奈美恵」を取り上げる。

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案の定『アムロス』大流行。あと1年あるのに気の早い人たちです。そもそも『〇〇ロス』って、終わりや別れの後に陥るものだったはずですが。それにしてもこの語呂の良さ! もはやペットでもタモリさんでもなく、『ロス』は安室ちゃんのためにあるべき言葉だったのかもしれません。

さて先週も書いた通り、彼女(正確にはスーパー・モンキーズ)のデビュー曲『ミスターU.S.A.』は、私にとって25年間ずっとヘビロテ状態が続いている大好きな曲であると同時に、数多のアイドルポップスが存在する中、こんなにも如実に「戦後の沖縄」を歌った曲はないという、そんな歴史的意義の高い曲でもあります。

まずタイトルの『ミスターU.S.A.』。私はこれを、沖縄の人たちが駐留米兵を呼ぶ際に使う通称『アメリカさん』と訳します。売野雅勇さんが書いた歌詞は、そんな“アメリカさん”と恋に落ち、虹のような儚い日々を過ごした沖縄女性の懐旧や情景が、アメリカン・グラフィティ的な視点で描かれています。その一方で、随所に垣間見えるのは「沖縄が経てきた地上戦、敗戦、占領、そして返還後」の夢と現実です。サビに何度も登場する『ビーチサイドのアメリカ』は、紛れもなく嘉手納・普天間など沖縄本島に集中する米軍基地のこと。終戦以降もアメリカに占領され続けた現代の沖縄文化と基地の関係は、良くも悪くも切っても切れないものであり、実際そこで育まれた恋や産まれた命もたくさんありました。そして国際風情豊かな食や音楽なども発展しました。

地元住民は無断で立ち入れない『白いフェンスの向こうのビーチクラブ』で『他人(ひと=おそらく上官)のキャデラック磨く』若い米兵に心惹かれた主人公は、『フェンス越しにふたりでジミー(ジェームス・ディーン)の映画を観た』りします。そして、それはまるで『地図から消えた天国さ』と。聴くたびにドキッとさせられるフレーズです。もちろんそこにあるのは、大人や社会のしがらみから抜け出し自由な恋愛を謳歌する若者と、戦後アメリカの豊かさに憧れていた日本人の姿。しかし、そこに込められているのは「基地は治外法権。日本ではない」という、今なお沖縄が抱える葛藤でもあるのです。

やがて若い米兵は帰国もしくは別の任地へ赴いたのか、淡い恋心だけを残し去ってしまい、かつての『ビーチサイドのアメリカ』を『想い出すと今も胸が熱くなる』と歌う主人公。“アメリカさん”がいなくなると、経済的な豊かさを失う人たちも少なくなかったはずです。それでもあの日々を『虹』に例え、「きっと彼にとっても私は虹だった」と自分に言い聞かせ、いつの間にか流暢になっていた英語で語りかけます。

時代的には安室ちゃんのお祖母様の世代が若かった頃の話です。それを14歳の安室ちゃんが高らかに歌ったのが1992年。奇しくも沖縄本土返還から20年後の年でした。これほどまでに『沖縄』を背負ってデビューしたアイドルは、安室ちゃんをおいて他にいないでしょう。

『アムロス』の旋風とともに、是非この後世に残すべき名曲『ミスターU.S.A.』を、安室ちゃんの息子世代にも聴いて頂きたい。沖縄の戦後は『遠い日のLove Affair』にあらず、です。

※週刊朝日 2017年10月13日号

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