金正恩氏は「合理的行為者」、米がそう分析する理由

金正恩氏は「合理的行為者」、米がそう分析する理由

  • WSJ日本版
  • 更新日:2017/12/06
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【ワシントン】米国の情報機関・軍当局者は、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長を合理的に行動する人物だと見ている。こうした結論が今のところ、金正恩氏に関する米政策の指針となっている。

国家安全保障コミュニティーの中核が行ったこの分析は、2つの主要な観点から、北朝鮮に対する彼らの考えを形成していると米当局者は話す。つまり米国や同盟国へのいかなる攻撃も、北朝鮮の安全、及び金氏の権力掌握を脅かすと金氏は理解していると彼らが考えているということだ。また戦争の脅威を低減するため、外交を通じて金氏の行動を変えさせる可能性があると彼らが信じていることを示している。

米当局者はまた、合理的に行動する金氏の能力が損なわれているとも判断している。

米中央情報局(CIA)のマイク・ポンペオ長官は2日、カリフォルニア州で開催された安全保障関連のフォーラムで、「われわれ情報コミュニティー関係者は、金正恩は理性的だと指摘しているが、国内外で自身の立場がいかに脆弱かを理解しているとは考えていないのも事実だ」と述べた。

米軍や情報当局の関係者はインタビューで、米国の分析について詳細を語った。合理的行為者との結論は、金氏が残酷、または挑発的でない訳ではなく、むしろ未熟で自己中心的だと考えていると話す。

米当局者は、金氏が親族の殺害を指示し、先週には米全土を射程内に収めるミサイル「火星15」を発射したと指摘する。

だが、分析の結果は、世界から認められるとともに、一族の存続を確実にし、国の経済を発展させるとの欲望に突き動かされる論理的な人物だと米国が考えていることを表している。

ある米情報当局高官は「合理的行為者は明確な目標を持ち、現実に即して達成を目指す方法を心得ている」と説明。「金氏の合理性について、再考を迫るような行動はまだ見られない」と話す。

仮に米国が不合理な行為者だと懸念すれば、北朝鮮が想定外の行動に出る場合に備え、米国は軍事行動をちらつかせるだけにとどまらず、朝鮮半島周辺で大規模かつ持続的な軍備増強を行っていただろう、と米当局者2人は語る。

ポンペオ氏とH.R.マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)は、週末のレーガン・ナショナル・ディフェンス・フォーラムで、現在の米国の取り組みは、中国への協力要請も含む、経済、外交措置に頼っていると語った。だが、中国への協力要請は、金氏が合理的な人物だと米国が確信していなければ、あり得ないという。

ある元政府関係者は「中国に頼るのは、金氏は取引できる人物だとわれわれが考えるためだ。こうした確信がなければ、なぜわざわざ中国に取り組みの強化を要請する必要があるのか」と話す。そしてこう語った。「今頃、先制して何らかの措置を講じていた可能性さえある」

こうした米国の分析の背景には、北朝鮮が核兵器に関して、危険なやり方に出ることも可能であったにもかかわらず、金氏がそのリスクを冒していないことがある。今年に入っての北朝鮮とドナルド・トランプ米大統領との怒りの応酬は、差し迫った脅威の前触れのように見えるが、国家安全保障の専門家は、レトリックを強めても、金氏の判断や行動を変えることはないようだとみている。

情報当局者は、最初に金氏を合理的行為者だと考えるように至ったのは、2012年の発射を受けて、北朝鮮が国際社会の非難を浴び、制裁を科された後だと話す。その後数カ月、金氏は米国はプログラムの標的だと明言するなど、レトリックを強めたが、4月までにはそれも止めた。情報当局者は「彼は何かを学んだ。彼は煽ったものの、その先には行かなかった」と述べる。

最近では、11月のトランプ氏訪中や10月の中国共産党大会時に、北朝鮮は鳴りを潜めていた。兵器実験を見送った期間としては今年最長だ。

もし10月に発射実験を行っていれば、習近平国家主席が権力基盤を固めようとする中、重要な後ろ盾である中国に恥をかかせる恐れがあった、と一部の米当局者は判断している。

トランプ氏のアジア歴訪時には、3個の米空母打撃群が同地域で演習を実施した。米軍当局者は、米軍が大規模なプレゼンスを見せる中で、金氏が実験を見送ったことは、合理的な行動だと説明する。

ある軍当局者は「最近の発射実験をより早期に行うこともできたが、金氏は最善のタイミングを見計らっていた」とし、「彼は米大統領が訪問している最中に実験を行うリスクは冒さない」と話す。

米当局者は金氏を合理的な人物だとみているが、核兵器の取得が金氏の目標達成に向けた最善の手段だとは考えていない。元政府当局者は「彼が理性的だからといって、彼が正しいという訳ではない」と述べる。

金氏は国民に多大な代償を負わせることで、高度な核兵器の開発を進めている。ある情報当局高官は「国民が飢えに苦しんでいる時に核兵器実験を行うことは、理性的ではないとの見方もある」としたが、「この兵器が自らの生存に不可欠と考えるなら、そこまで不合理でもない」と指摘する。

合理性を示す兆候の1つとして、米軍当局者は北朝鮮による軍備増強の兆しがないことを挙げる。軍の移動や、地域に展開する米軍艦や軍用機に対する挑発行為などもないとし、これは金氏が性急かつ軽率な軍事行動に出ないことを示しているという。

だが、金氏の指揮系統や管理体制など、北朝鮮に関して理解できていない部分もあると米国は認める。

一方、韓国当局者も、金氏に関して米国と同様に結論に至った。2014、15年に金氏側近との協議に臨んだ元政府高官は、金正恩体制下の北朝鮮の交渉アプローチは合理的で、熟考されたものだったと語る。側近らは頻繁に休憩を挟んで指導部に交渉の状況を報告し、主要な決定はほぼ確実に金氏が下していたという。

軍事衝突の危険が高まっていた2015年の協議では、北朝鮮は当初、南北軍事境界線近くの非武装地帯(DMZ)で地雷の爆発により韓国兵2人が重傷を負った事件について、話し合うことを拒否していた。

だが謝罪を求める韓国の圧力を受けて、北朝鮮は戦略を変更し、遺憾の意を示すとともに危機を緩和することで合意したとその高官は明かす。その上でこう述べた。「金正恩体制はわれわれが想定していたよりも良い」

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