Chim↑Pom『また明日も観てくれるかな?』レポ 歌舞伎町で渦巻いた狂気の一夜

Chim↑Pom『また明日も観てくれるかな?』レポ 歌舞伎町で渦巻いた狂気の一夜

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  • 更新日:2016/11/29

10月28日、アーティスト集団・Chim↑Pomが開催した展覧会「『また明日も観てくれるかな?』〜So see you again tomorrow, too? 〜」において、オールナイトライブイベント「ART is in the pARTy Day 2」が行われた。

「Scrap and Build」「全壊する展覧会」をテーマに掲げたこの個展は、10月末日をもって解体される歌舞伎町振興組合ビルを占拠する形で実施され、解体工事の開始とともに展示物もまた解体され、2017年、高円寺にあるChim↑Pomのアーティストランスペースにて再構築される。

このレポートは、カオスと熱狂にまみれた一夜の記録となる。

取材・文:町田ノイズ 撮影:稲垣謙一 編集:コダック川口

歌舞伎町のど真ん中、解体直前のビルで行われた個展

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来場客はまず「青写真」をテーマに据えたビル4階に案内され、窓から天井までざらざらの青写真の青に染まった一室からスタート。進路は上階からフロアを逆行していく形となる。

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床の中心は正方形の吹き抜けとなっており、スクリーンに映される映像作品「BLACK OF DEATH」や、むき出しのコードやパイプ、ベニヤ板、コンクリートまでもがさらけ出されている。

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新宿を模したジオラマに新宿で捕獲したというネズミの剥製が配置される「SUPER RAT -Diorama Shinjuku-」など展示物が点在。

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雑然とした残骸の真横で、ペンキのローラーを引きずるロボット掃除機。

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やがて到達した1階の中央に鎮座している、事務用品や家具などぶち抜かれた3階分の床のバンズに挟んだ「ビルバーガー」を横目に通路を進む。

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真新しいビルの模型が無表情に展示されていた。新たな創造と構築、夜ごと刷新される事象の手前で、言葉のない骸が過剰な装飾に紛れ、やがて忘れさられる。

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その空疎さの過程をありありと再現した会場の外では秋雨が降り注ぎ、肌寒さに場違い感を覚えるハロウィンの仮装に身を包んだ人々と、ライブの開始時間を待つ客の列があった。

地下1階で行われた「ART is in the pARTy Day 2」

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「ART is in the pARTy」のメイン会場はビルの地下1階。コンクリートの密室に無理矢理穴をあけたような内装で、照明は裸電球がいくつかぶら下がっているばかり。

薄暗い場内に詰めかけた100人前後のオーディエンスの少し戸惑ったような顔と、BGMの「東京音頭」の軽妙さが、どこかちぐはぐな空気をつくり出していた。

「ART is in the pARTy」トップバッターは大森靖子

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定刻の21時。観客をすり抜けるようにして登場したのは、トップバッターの大森靖子さん。

アイボリーの薔薇でデコレートされたアコースティックギターを携え、ビールケースの舞台に立った彼女は、30分の持ち時間で1曲でも多くを演じるために、早口でまくしたてるように歌い続ける。

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誰ひとりの表情も取りこぼすまいという決意がみなぎる視線に縛り付けられたファンは、「私 新宿がすき 汚れてもいいの」と口ずさむ彼女を固唾を飲んで見守った。

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ギターの震音とスマホのシャッター音、どれだけ離れていても耳元で呼号されているような気迫に満ちた歌声で構成された空間は、ピンクのサイリウムで彩色された「ミッドナイト清純異性交遊」で幕を閉じた。

どついたるねん登場!

イベントは完全入れ替え制となっているため、1組終わるごとにオーディエンスは退場する。これもどこか忙しなく入れ替わり立ち替わりを繰り返す歌舞伎町の性質を象徴しているようだった。

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30分の転換の後、登場したのはバンド・どついたるねん。

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暑苦しいほどのビジュアルの情報量とは相反して、奔放なパフォーマンスは極限にまで削ぎ落とされ、音楽のみに純化したシンプルなステージングに、解き放たれたかのような笑顔が乱れる。

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ミクスチャーロック、R&B、ヒップホップなどあらゆる要素のなかで、最小単位の幸福が落とし込まれたリリックがまぶしく光る。もしかしたらパンクネスが目指すのは、ひとりひとりの充足した時間がこうしてパズルのピースのようにぱちりと集約される光景なのかもしれない。

目を合わせてはならないリアル 鉄割アルバトロスケット

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「俺が脇でバイオリン弾いて……」といった不穏な打ち合わせが漏れ聞こえてきたパフォーマンスグループ・鉄割アルバトロスケットは、シュールという文言に逃避したくなるようなオフビートのコントを目まぐるしく連射。

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永遠に始まることのないビンゴゲーム、限界値まで歪んだ顔から吐き出される荒唐無稽なジャンキーの主張、テキ屋のがなり声。

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LSD音頭、LSD三兄弟。“笑い”に括られた表現のなかで、猥雑な街の端っこで見つけてしまった「目を合わせてはならないリアル」が淡々と顔を覗かせる。

小室哲哉&河村康輔のコラボレーション

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4組目はシークレットゲストとしてアナウンスされていた小室哲哉さんと、コラージュアーティスト・河村康輔さんのコラボレーション。

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デスクトップPCと、祭壇めいた大型のアナログシンセサイザーのコックピットから、窒息しそうなレイヴ感が1時間半にもわたり放出される。

多層なビートが重なっては抜かれ、また新しく積み重なり、エレクトロからクラシカルなピアノへ、また激流のノイズへと変遷。

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その重低音と振動は地上の無関係な通行人の足を引き止めるほど強靭で、湾曲した男女が砂漠の惑星で抱き合う河村さんのコラージュ作品と奇妙なほどにシンクロしていた。

康芳夫&平井有太の語り

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続けて自称・虚業家の康芳夫さんとライター・平井有太さんによるDJタイムだが、おおよその人間が思い描く“DJ”の定義から大きく逸脱した時間だった。

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流れる音といえば、三島由紀夫の演説から始まり、モハメド・アリの記者会見につながれ、燃え盛る炎のようなジャズ、「燃える闘魂」を通過し、武満徹からローリング・ストーンズの「PaintIt,Black」に終着するまでの30分間、音源が途切れて無音となるのもお構いなしにキース・リチャーズや山下洋輔さんのエピソードを無邪気に語り続ける康さんに聴衆は釘付け。

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音楽を聴くのではなく、彼の一挙手一投足を見守る場となった。膝をついて氏に音源を確認していた平井さんも素晴らしい。

「どうして日本がこんな国になっちゃったのか反省する会」 会田誠

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シケモクにビール片手の会田誠さんのDJも負けず劣らずの異質さで、「どうして日本がこんな国になっちゃったのか反省する会」と称して、YouTubeから拾ってきた80年代アイドルの動画を上映しながら自身の性癖を吐露するという内容。

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キャンディーズでは誰が好きだったとか、このアイドルのこの瞬間の表情が可愛いからもう一度再生しようとか、ともかくそういったことを日本のロリコン文化を振り返りながら、自ら歌って踊って論じるのである。

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“深夜の新宿”でなければ許容されることはないであろうリーガルとイリーガルのあわいで、オールナイト特有の疲労感を忘れるように笑うしかなかった。

光と轟音に満ちたENDONのステージ

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そこからの緩急は凄絶であった。

7組目に登場したエクストリーム・ノイズ・バンドのENDONは、ギリギリまで落とされたほの暗い場内のステージ後方から、プリズムのような光芒がすっと伸び、風圧が巻き起こりそうなほどの轟音ノイズを照射する。

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ボーカルの叫喚を先頭に、瞬く間に浸食する演奏はグラインドコア/ハードコアが混在した強靭さで、先ほどまでの脱力感を瞬く間に消し去ってしまった。フィジカルにもメンタルにも打撃を与える。

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その凶悪さはどこか美しく、耳を塞ぐ客は誰ひとりとしておらず、ある者は笑いながら拳を掲げ、ある者は最前線のモッシュピットに飲まれて行った。

漢a.k.a. GAMI、菊地成孔、DJ BAKUのセッション

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イベントも佳境に入ったころ、漢a.k.a. GAMIさん、菊地成孔さん、DJ BAKUさんのリハが終了したが、機材トラブルで1時間押しに。それでもファンの待機列は長々と続き、リタイアする気配はない。ここまできたら何としてでも終幕を見届けようという精神がうかがえた。

予定時間を大幅にすぎた午前5時近くにいよいよスタート。

菊地さんのエロスと突き放すようなストイシズムの共生したサックスとDJ BAKUさんのセッションから始まると、疲労でどろどろになった体を引きずった観客が我先にと押し寄せ、バーカウンターの上、そして階段ステージ後方の階段まで人間で埋め尽くされた。

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10年もの間、歌舞伎町の住人であった、この日にうってつけの男である菊地さんと、まさしく新宿のアンダーグラウンドで生きてきた漢a.k.a. GAMIさんによるラップが扇情的に絡み合う。ハードコアかつクール、そして仕組まれたような猥雑さが微細に入り組んだステージは、1時間以上にわたって展開された。

締めはChim↑Pom エリイの胴上げ

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タイムテーブル上ではこの後、Chim↑Pomのライブで締めくくられるはずだったが、地上にて泥酔したエリイさんの胴上げが行われた後、展覧会名である「また明日も観てくれるかな?」に観衆が応える形で締めくくられた。

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午前7時、最初から最後まで子供のようにはしゃいでいた彼女の、隙のない金髪が灰色の曇天模様にすっぽりと収められるのが見える。

それでようやく、さっきまでいたあの場所が残り3日かそこらで木っ端微塵になることに物悲しさを覚えた。

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まやかしの不夜城、わざわざ汚されにくる場所、ぎらついたネオンに目を細める路地、音楽とアルコールに陶然とする時間。

人間の欲求とイメージ次第でいかようにも変容する、蜃気楼のように不確かで都合のいいこの空間のすべてが、ほんのつかの間あの地下室に集約されていた。

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しかし、それも今となっては過去の話だ。感傷に浸る暇もなく、消えては浮かび、また浮かんでは消える、うたかたの街の明かりのひとつの可能性。

あるいは大量生産・消費の速さに鈍化してしまった危機感や痛覚を呼び覚ますための、歌舞伎町の一端の崩落と再生を使用したインスタレーションは、あらゆる人々の思い描く“新宿”を融解させ、記憶の隅に打ち付けられたまま終わりを告げた。

『また明日も観てくれるかな?』フォトレポート

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