安倍・自民党の幼児教育無償化 保育の専門家たちが「ちがうだろーー」

安倍・自民党の幼児教育無償化 保育の専門家たちが「ちがうだろーー」

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  • 更新日:2017/10/12
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東京都内の街頭で支持を訴える自民党の安倍晋三総裁(右)と公明党の山口那津男代表 (C)朝日新聞社

衆議院議員選挙に突入したまさに同時期、未就学児を抱える親たちが「保活」という闘いに突入しようとしている。多くの自治体で認可保育園の入園案内が配布され、一次募集の申し込みが始まる“保活シーズン”が今年も本番を迎えているのだ。預けたい人が安心して預けられる保育を実現してほしい――。そんな切実な思いを持った親たちにとって、今回の選挙は投票先に迷う選挙になっていると言えるだろう。

ある母親の匿名ブログ「保育園落ちた日本死ね!!!」を国会に持ち込み、待機児童問題に改めて注目を集めた山尾志桜里氏が、不倫疑惑でつまずいた直後の衆院解散。子育て世代は旗印を失ったまま、自民党が目玉施策として子育て支援、「幼児教育の無償化」を打ち出した。

【写真】「保育園落ちた日本死ね」で流行語大賞の受賞挨拶をした山尾志桜里氏

子育て支援策に限って見ると、自民党の選挙公約に記されているのは<2020年度までに、3歳から5歳までのすべての子供たちの幼稚園・保育園の費用を無償化します><0歳から2歳児についても、所得の低い世帯に対して無償化します>という内容。党首の安倍晋三首相は消費税率を10%へ引き上げ、増えた税収のうち約2兆円を教育無償化などに充てると宣言している。

何となく「子ども思い」に聞こえるこの政策が、実は保育の専門家たちにすこぶる不評。「ちーがーうーだーろーー」という声が聞こえてきそうだ。

日本や海外の保育行政に詳しい日本総合研究所主任研究員の池本美香さんはこう疑問を投げかける。

「保育料は既に応能負担の考え方で世帯所得に応じて減免されていて、生活保護世帯の保育料は無償化されています。マニフェストで無償化の対象とする『低所得者』が何を指すのかわかりませんが、これ以上どう進めるのでしょうか。意図がわかりません」

待機児童問題で親たちが求めてきたのは預け先の確保であり、保育の質を守ることだった。妊娠中から保活を始め、出産と同時に預け先や職場復帰に不安を抱える現状を変えてほしい。仕事の形態によらず預けたい人が預けられる、安全で柔軟な保育を。それが働く親たちの願いだったはずだ。

別の専門家は「安倍さんは、問題を理解していないのでは」と辛口だ。

前出の池本さんはこう言う。

「いまのニーズは多少負担額が上がったとしても、信頼できる保育士がいる安全な園に、きちんと入れるようにしてほしいということ。それを先延ばしにしたまま、幼児教育の無償化をさらに進める必要があるでしょうか。子育て支援というキーワードが選挙や憲法改正など別の目的のために利用されてしまったのではと感じます。ほかの政党の公約をみても、立憲民主党や公明党が保育士の処遇改善を掲げているぐらいで、保育に関して将来ビジョンを持って積極的に訴える政党も議員もいないのがとても残念です」

自民党のマニフェストには待機児童対策について<「子育て安心プラン」を前倒しし、2020年度までに、32万人分の保育の受け皿整備を進めます>とある。だが、そもそも「子育て安心プラン」は安倍首相が民主党から政権を奪って約4カ月後の2013年4月、5年後までに保育所の定員を40万人分増やすとした「待機児童ゼロ」の目標が実現できず、3年先延ばしにしていたものだ。保育士不足や財源の確保など課題が山積している中で、具体的にどう進めていくのか不明な点は多い。

福祉や保育がなかなか話題に上らない今回の選挙では、政党や各候補者の待機児童に関する考えは有権者から見えにくい。大事なのは選挙後だとジャーナリスで東京都市大学客員教授の猪熊弘子さんは指摘する。

「保育についての問題は、どうしても野党の女性議員が中心になることが多く、活動する親たちも政治的に分断されてしまう傾向があります。ただ、待機児童を含めた保育の問題は超党派で解決していくべき国難です。実際に法律や制度を変え、問題を解決していくためには与野党を超えた議員の動きが不可欠です。選挙後に政治の中枢に立つ議員たちにどう働きかけ、保育や子育てに詳しい議員を増やしていけるかも大事なのです」

保育関係者の中には、民主党政権時代を「暗黒の2年間」と呼ぶ人もいる。社会保障と税の一体改革の柱の一つとして掲げられた、幼稚園と保育園の機能を一元化する「幼保一体化」が実質的には進まなかったからだ。一方で「自民党寄り」とされる保育の業界団体で安倍離れも漏れ聞こえてくる。

個別の政策だけでなく、保育を含めた子育て施策のグランドデザインを描けるか、実行する能力があるか。それを見極めて票を託し、意見し続けることも重要かもしれない。

(AERA dot.編集部・金城珠代)

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