カーエレクトロニクスの進化と未来 第148回 ドメインアーキテクチャのゲートウェイICのサンプル出荷を開始したルネサス

カーエレクトロニクスの進化と未来 第148回 ドメインアーキテクチャのゲートウェイICのサンプル出荷を開始したルネサス

  • マイナビニュース
  • 更新日:2021/10/14
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ルネサス エレクトロニクスは先般、車載向け半導体戦略を発表。これからのドメインアーキテクチャを推進すると共に、買収したDialogが持つ製品群を車載向けの製品ポートフォリオに加えウィニングコンボ(Winning Combination)として強化できることを強調した。ルネサスの戦略は、強い車載用をますます強くすると共に、売り上げ増という成長路線に載せていくという決意である。

ルネサス、次世代R-Carを活用した車載ゲートウェイソリューションを発表

自動車産業ではエレクトロニクス化がますます盛んになり、使われるECU(電子制御ユニット)の数は増えてきた。高級車では80~100個搭載され、大衆車でさえ20~40個搭載されていると言われている。例えばドアウィンドウを開けるのに今や、手回しで開けるクルマは見当たらない。こんなところにもECUが使われ小型モータで窓を開閉する。左右の方向指示器であるウィンカーもかつては電磁式のリレーだったが、今は音のしないSSR(固体リレー)に代わっており、カチカチという音を創り出している状況だ。これもECUで動く。

しかし、ECUだらけになると、ECU装置だけではなく配線もセンサとアクチュエータの間に必要とされ、クルマの重量は増すばかりだ。そこで、関係するECUをいくつかまとめてしまおう、という考えが出てくる。これが「ドメインアーキテクチャ」である(ルネサスはゾーンアーキテクチャと呼んでいる)。これまでのクルマがつぎはぎ的にECUを増やしてきた分散化に対して、車両系やインフォテインメント系を1つのドメインと考え、それぞれのドメインごとに複数あるECUをまとめてしまおうという考えである。

例えば、ボンネットやドアなどのボディ系や、サスペンションやステアリング、タイヤなどのシャーシ、トランスミッションやドライブシャフトなどのドライブトレイン系など各ドメイン内のECUをまとめてしまう、という発想である。CMOSイメージセンサやレーダー、LiDARシステムを1つにしてこれらのセンサ情報をまとめて解析するセンサフュージョンをドメインとして管理する。今の所、中央集権的に1つのコンピュータがすべての処理も制御も行うという考えはまだないようだ。

ただし、これからのクルマは、V2V(Vehicle to vehicle)やV2X(Vehicle to Everything)といった外部とのワイヤレス通信(やり取り)が不可欠になる。この通信を通すことによって無線によるソフトウェアの更新(SOTA:Software Over the Air)ができ、利用効率が上がる反面、サイバー攻撃に出会うというリスクが増えるようになる。そこで、外部からの通信フロントエンドの役割を担うゲートウェイにしっかりとしたセキュリティを確保する必要がある。このゲートウェイは、各ドメインにつなげる役割も持つ。図1に示すように、外部通信とのゲートウェイを通過したのち、各ドメインであるHMI/コックピット、ボディ/シャーシ、自動運転、ADAS、アクチュエータやセンサなどにつなげていく。

ルネサスが10月6日に発表した新しいSoC「R-Car S4」は、このゲートウェイに相当する(図2)。このゲートウェイを通してセンシングや認識、デジタルコックピット、ボディ/シャーシ制御へとつながっていく。各ドメインとの通信インタフェースとして、センシングや認識、デジタルコックピットなど高速データが必要なドメインへはギガビットイーサネットを通して通信し、ボディやシャーシなどの制御系へはCANやCAN FD、FlexRayなどのインタフェースを通して通信する。

このゲートウェイはR-Car S4だけではない。買収した旧IDTのタイミングICやDialogのPMIC(パワーマネージメントIC:電源IC)と共にゲートウェイソリューションとして提供できる。ゲートウェイでは、高速のギガビットイーサネットで高速転送が求められるため、タイミングクロックの高い精度が要求される。IDTは元々タイミングICを得意としていた半導体ベンダだ。基地局やデータセンター用のタイミングクロックICだけではなく、クルマでもここに活かすことができた。

高速イーサネットを利用して同期をとりさまざまなマシンを同時に同じクロックで動かすことのできる新技術TSN(Time Sensitive Network)スイッチ回路も集積しているR-Car S4チップは、産業用以外の車載用途でTSNを応用する恐らく最初のチップになるに違いない。また、このゲートウェイは外部と接続するための通信モジュール回路と接続してアンテナとつなぐ。通信モジュール回路にはセルラーネットワークのLTEだけではなく、5Gにも対応し、それもIoT専用のNB-IoT回線も用意しておく。

R-Car S4には、Arm Cortex-A55コアに加え、リアルタイムコアであるCortex-R52コア、さらにマイコンRH-850コアも組み込んでいる(図3)。マイコンを組み込んだのは、起動時のセキュリティを確認するためのセキュアブートを動かすためで、TSNスイッチにも対応する。クルマの制御系は特に安全には最高レベルのASIL-D規格に準じている。また、HSM(ハードウェアセキュリティモジュール)回路を集積し、暗号化回路と暗号キーの管理などを受け持つ。

これまでと同様、ルネサスは顧客が自分で差別化するプログラムを組むためのソフトウェア開発キットやハードウェアのリファレンスデザインボード、さまざまなドキュメントなどをR-Car S4向けに完備しているという。10月からサンプル出荷を開始した。

ルネサスは、この新製品に限らず、Dialog買収でチップセットとしてユーザーを開拓できるウィニングコンボが充実してきたと話している。R-Car SoCの電源回路となるPMICや、Bluetooth LE(Low Energy)チップ、ハプティクスドライバやLED照明ドライバなどDialogのチップをルネサスのSoCやマイコンと一緒にチップセットとしてユーザーに売り込むことができるようになった。例えば、Bluetooth規格ではBLE5.0までは親機と子機の関係が最大8台しか接続できなかったが、BLE5.2以降の規格ではもっと多くの子機にも対応できるようになるため、1チップに12~14個のバッテリセルを管理するワイヤレスBMIC(バッテリマネジメントIC)用のチップセットもウィニングコンボになりそうだと期待している。

津田建二

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