
"東京都教員採用試験の1次試験会場に入る人たち=2023年7月9日、東京都武蔵野市、高浜行人撮影"
全国の公立学校教員の採用試験の志願者が減り続けている。教職が敬遠される主な要因となっているのは、長時間労働だ。
教員採用試験の開始を待つ人たち=2023年7月9日、さいたま市中央区、高嶋将之撮影
文部科学省が4月に公表した公立学校教員の勤務実態調査の結果によると、1カ月あたりの時間外勤務(残業)は、中学校で77%、小学校で64%の教諭が文科省の定める上限基準(45時間)に達し、長時間労働が常態化している。
同省が昨年2~3月に実施した委託調査で、教職課程を履修しながら教員免許を取得しなかった大学4年生にその理由を複数回答可で聞いたところ、26・3%が「学校関係者から得た情報で職場環境や勤務実態に不安を持った」を挙げた。最多は「民間企業などへの志望度が高まった」(49・6%)だが、「報道で得た情報で職場環境や勤務実態に不安を持った」(20・2%)、「SNSで得た情報で職場環境や勤務実態に不安を持った」(17・3%)との回答も目立ち、労働環境に懸念を抱く学生が多い実態が浮かんだ。
岐阜県教育委員会が今年3月、教育学部に在籍しているか、教職課程を履修した県内の大学の4年生を対象に実施した調査では、教員以外の進路を選んだ学生の79・0%が、理由として「休日出勤や長時間労働のイメージがある」を挙げた。「職務に対して待遇(給与など)が十分でない」との回答も64・4%に上った。最多だった「他にやりたい仕事がみつかった」(88・4%)に続き、労働環境への懸念が2、3番目を占めた。
それでも、教員の仕事に魅力を感じている学生は少なくない。
7月9日、東京都の教員採用試験の1次試験があった。会場から出てきた小学校教員志望の男性(22)は「教員は子どもの成長を一番近くで見られる魅力のある職業」。SNSで長時間労働を嘆く現役教員の声などに接しても、「憧れが強いので、やれると思った」という。
同じく小学校教員志望の女性(24)は「教育実習では定時で帰らせてくれたし、先生方には早く帰ろうという雰囲気があった。長時間労働が問題になっているが、改善も進んでいるのでは」。実習で午後9時まで帰れなかったと話す友人もいるが、「大変かもしれないけどまず一回経験してみてから考えたい」と話した。