亡くなる3ヵ月前にMV収録...子宮頸がん告知を受けたSHALさんが歌に込めた想い

亡くなる3ヵ月前にMV収録...子宮頸がん告知を受けたSHALさんが歌に込めた想い

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2022/09/22
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生きた証でもある新アルバム

8月初旬、かねてから子宮頸がんで闘病中だった、THE UNCROWNEDのボーカリストSHALさんが天国へと旅立った。子宮頸がんの前がん病変が見つかったのは、2020年6月のこと。それからというもの、抗がん剤治療から手術、放射線治療、再発、新たながん発症と、SHALさんは何度も困難に立ち向かってきた。

「同じ病気の仲間を励ましたい、子宮頸がんの予防啓発になるなら」とFRaUのインタビューにも応じてくれた。会えば、優しい言葉をかけてくれたり、お土産を持ってきてくれたりする気遣いの人だった。

徐々に体調が悪化していき、食事が喉を通らない、呼吸が苦しいという厳しい状況の中でも、ファンに語りかけるSHALさんはいつだって明るい未来を見ていた。すべての人へ、ポジティブなパワーを与えてくれる稀有な存在で、多くの人に愛されていた。

おはようセカイ!
おやすミライ

これはTwitterでのSHALさんのおなじみの挨拶だ。

「いつでも素敵な未来を見ていたいよね」
「皆さんからのメッセージ、ひとつひとつが大きな励みになっています。私は一人じゃない」
「ピースできるくらい元気!ハッピーピースだよv(´∀`*v) 今週も素敵に元気に、一週間頑張りましょうね♪」
「まだまだ生きていたい。人生いつだってこれからです」

最後の投稿となった8月1日も、「新しい月の始まり。私らしく生きていきたいです!」とつぶやいていた。きっとまた立ち上がる。SHALさんだもの…。そう願っていたのは筆者だけではないと思う。

そんなSHALさんが、命を削って作り上げた、セカンドアルバム『WITNESS』が、9月21日にリリースされた。アルバムとしては約6年ぶり。SHALさんは、ファンとの約束を果たすために、残された時間を不屈の精神でアルバム制作に費やした。

歌詞の多くは、闘病中にSHALさんが書いたものだ。SHALさんには、「子宮頸がんのことを知ってもらいたい。子宮頸がんという病気に偏見を持たないでほしい」という、強い思いがあった。がんで先に逝ってしまった友に捧げた歌もある。今回のアルバムは、SHALさんが懸命に生きた証であり、THE UNCROWNEDの集大成とも言える作品となっている。

SHALさんの生き様をもう一度、皆さんに伝えたい。そして彼女が伝えたかった子宮頸がんという病気のこと、病気と闘った仲間への想いが多くの人へ届きますように。バンドリーダーのTakeshiさんが、生前のSHALさんの姿とアルバムに込めた想いを語ってくれた。

THE UNCROWNEDのリーダーのT

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akeshiさん(左)と生前のSHALさん(右)。写真提供/THE UNCROWNED

生き生きと躍動するSHALさんの歌声

「WITNESSというタイトルは、目撃者とか、証人という意味なんです。作品には、SHALの生き様も多分に盛り込まれていますので、皆さんにその証人になってほしいという想いをこめました」と話すTakeshiさん。

SHALさんとは9年前に共通の知人を通して出会った。その2年後、Takeshiさんが所属していたバンドが解散し、新しいボーカルを探していたとき、偶然彼女の歌声を聴いたTakeshiさんが、SHALさんを説得しTHE UNCROWNEDへの参加が決まった。

「なんといってもあの存在感が素晴らしいと思いました。昔から人気のあるアーティストって、聞けばその人とわかるような個性的な声をしていますよね。SHALの声質にはそんな魅力がありました。

1stアルバムは、SHALがバンドに参加する以前からメタル寄りの音楽性でいくという構想が決まっていたので、実質、僕のソロアルバムでSHALが歌ってくれたというような作品でした。それが本作では、何度も話合いを重ね、SHALの意見がかなり反映されていますし、彼女がこだわりを見せる場面も印象に残っています。そういう意味では、今回のアルバムが、THE UNCROWNEDの実質の1stアルバムという見方もできるんじゃないかと思います」

病を押してレコーディングしたとは思えないほど、歌声は力強く生きる気力に満ち溢れている。

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病を押してのレコーディング。でも、歌声はとてもパワフルだ。写真提供/THE UNCROWNED

「そうなんです。力強くも哀愁を感じさせるメロディーと、SHALの唯一無二の歌声という自分達の軸となる部分は不変ですし、90年代のJ-POPが好きだった方にも気に入っていただける作品になってるんじゃないかな」

こうTakeshiさんが話すように、これまでのメタル色は薄れた一方で、ポップな部分が存分に磨かれ、生き生きと躍動するSHALさんの歌声を聴くことができる。

YouTube/THE UNCROWNED -2nd Album「WITNESS」 Official Trailer

「生前のSHALは、『売れなきゃ意味がないんだ』とよく言っていたんです。たくさんの人に届いてほしいという思いがあって、メタルという枠を取り払い、自分たちなりのメロディックなロックを目指そうという話になりました。ポップさが前面に出たのは、SHALの希望でもあるんです。これまで応援してくれたファンの皆さんには、雰囲気は変わったけど、やっぱりTHE UNCROWNEDっていいなと、思ってもらえるとうれしいです」

首に別のがんが発覚、手術を乗り越えて

曲の半分以上は、SHALさんが子宮頸がんとわかってから書いたもの。治療をしながらのレコーディングは、決して平坦な道のりではなかったはずだ。

「自分のギターは、自宅のスタジオでレコーディングしました。SHALが元気な頃は東京でレコーディングしていたのですが、彼女の体調が悪くなってからは、僕が彼女が住む栃木に出向いて、出来るだけ負担がないようにしていたんです。『今日は調子が良さそう』と彼女から、LINEに連絡があれば、すぐに駆けつけ、その日にレコーディングするという状況でした」

以前FRaUの記事でもお伝えしたが、子宮頸がんの治療中に首にしこりが見つかり、子宮頸がんの転移ではなく、別のがんであることが発覚。腫瘍を切り取るために、耳の後ろから首、そして鎖骨近くまでメスを入れることになり、喉の近くにメスを入れ、その手術の影響で声質が変わってしまった。それでも「歌えることがうれしい」と語っていた。Takeshiさんに、彼女の歌声はどんなふうに聞こえていたのだろう。

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首に新しいがんが見つかったときのSHALさんのツイート。Twitter(@shal_uncrowned)

「彼女の病状を知っていた方は、今回のMVやアルバムでの強い歌声に驚かれるかもしれません。でも、あれがデフォルトのスタイルなので、それをずっと聞いてきた立場としては、改めて何か感じることは特にないんですね。それよりも、その声を維持するために彼女が地道なトレーニングを続け、やり遂げてくれたことに感謝しています。心から『ありがとう』を言いたいです。

決して万全の状態ではなかったけれど、SHALの中で、自分の声の魅力やその生かし方がわかってきたタイミングでもあったと思います。歌の説得力であったり、表現力という点では、過去の作品を超えていると思います」

先日公開されたMVも「素晴らしい完成度」と大きな反響を呼んでいる。撮影は5月9日に埼玉某所で行われた。亡くなる3ヵ月前のことだ。

MVにはタイトル曲の『WITNESS』が選ばれた。当初、Takeshiさんとしては、この曲は脇役という位置付けだったそうだ。

「でも、SHALがこの曲をMVにしたい、笑顔で歌える曲がいいと言ったんで、アレンジを何度も練り直しました。星空の場面を入れたのは、SHALの希望です。出来上がったMVを見たら、SHALが本当に可愛く素敵に撮れていてよかったなあと思いましたね」

YouTube/THE UNCROWNED - WITNESS ( Official Music Video )

このころの病状は、肺にもがんが転移していて咳も出ていた。

「だいぶ苦しそうでした。抗がん剤治療を受けていた影響で、撮影前日に熱が出てしまい、深夜に病院に駆け込んで処置をしてもらったそうです。朝方帰宅した後も調子が悪かったようで、ほとんど寝ていない状態なのに、自分で車を運転してスタジオ入りしたんですよね。苦しかったと思いますが、現場に着いてからのSHALは、とにかく元気に振舞っていました。メイクも衣装も、全部最後まで自分でプロデュースして。そんなところもSHALらしいんですけど、撮影が終わって二人になった時には、さすがにぐったりしていましたね」

ファンとの約束…不屈の精神でやり遂げた

撮影は過酷を極めたが、SHALさんはやり遂げた。それがどんなにすごいことなのか、Takeshiさんの言葉から想像できるだろう。

「ツイッターを見ていると、元気の塊のようで、割と大丈夫そうって思った人も多いんじゃないかなと思うんです。とにかく前向きな姿勢を貫いていますから。でも、僕は彼女のつらそうな姿を見てきていました。処方されている薬だけでは痛みが治まらず、痛みで眠れない日々が続いたり、痛みに耐えきれず病院に駆け込むことが何度もあったんです」

痛みは、がんによくみられる症状のひとつであり、進行したがん患者の方では3分の2にみられる。原因の多くはがん自体によるものだが、それ以外にも、がんに関連した、筋肉のつりやむくみ、などによる痛み、治療に関連して起こる痛みもある。がんの痛みは我慢しなければならない症状ではなく、通常がんに自体が原因の痛みに対しては、WHOが提唱している「がん疼痛治療法」が行われ、70-90%の患者で効果的に痛 みの軽減が得られることが明らかになっている(※1)

※1:日本緩和医療学会 患者さんと家族のための がんの痛み治療ガイド 増補版
https://www.jspm.ne.jp/guidelines/patienta/2014/pdf2017/patienta.pdf

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アルバムのジャケ写撮影時のSHALさん。痛みもある中、撮影にもこだわったという。写真提供/THE UNCROWNED

制作の途中には、「最悪、アルバムをリリースできなくても仕方がない、誰も責めないよ」という話をしたこともあったそうだ。

「だって、アルバム制作を止めてしまえば、彼女が残りの人生で自分のために使える時間が増えるわけですから。でも、彼女は絶対に諦めませんでした。『ファンの人達と約束したから』と、最後までやり遂げたんです。彼女のメッセージとは違うかもしれませんが、作品を完成させたこと自体が、彼女なりの感謝の気持ちの表現なのだと思うんです。そう、受け取ってもらえたらうれしいですね」

ひとつひとつの楽曲に、特別な想いが込められていることも、このアルバムが特別なものである理由になると思う。アルバムの9曲目、『LAST MEMORY ~四月の風~』は友人に捧げた歌だ。

今日もこの歌を歌いながら 君を待ち続けるから
空の上から見ていてほしい
二人でまた笑顔で会える日を 心待ちにしているよ
忘れないでいてね
四月の風 過ぎてく

『LAST MEMORY ~四月の風~』より

「アルバムの制作中に、SHALの友人ががんで亡くなったんです。彼女がその友人に捧げる曲を作りたいと言って書き上げた歌です。今聴くと、SHALが友人を思っていたように、自分がSHALに向けた思いと重なって、胸がいっぱいになるんですよね」

お母様からいただいたメッセージ

子宮頸がんの再発後の5年生存率は5%以下と言われている。FRaUのインタビュー記事の中で、2022年2月、Twitterでファンに向け余命宣告を受けたことを報告したときのことをSHALさんは「正直きつかった、心が折れそうになりました」と語っていた。
「でも、私も子宮頸がんの末期ですと告白してくれた人もいて。みんなを絶望させたくない想いもある。やるだけやって『私は生きます』って言い続けるって決めたんです」とも言っていた。

その言葉通りSHALさんは、力の限り生き抜いた。その姿で、歌詞で、改めて私たちに生きる意味を教えてくれる。生きているだけで、やれることは無限にあると。それはとても幸せなことなのだと。そして改めて、子宮頸がんというがんの過酷さを思い知らされる思いだ。

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SHALさんの生き様を体現するようなこの写真も忘れられない。写真提供/SHALさん

Takeshiさんは、SHALさんがなくなったあと、彼女の母親からこんなメッセージを受け取ったという。

「SHALが子宮頸がんだとわかってから、親戚の15歳の子は、HPVワクチンを接種しました。子宮頸がんは、ワクチンで予防できる唯一のがんです。ぜひとも啓発運動をお願いできればと願っております」

子宮頸がんは、マザーキラーとも呼ばれ、妊娠・出産を控える若年世代の女性に多く発症する。1日にすると8人近く、3時間に1人の命が、子宮頸がんによって失われている。このがんによるリスクを下げるには、ワクチンで子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐとともに、子宮頸がん検診によってがん病変を早期発見することが重要になる。

2022年4月から、HPVワクチン定期接種の積極的勧奨が再開された。対象は、小学校6年から高校1年相当の学年の女子。それに積極的勧奨がストップしていた間、ワクチンを打てなかった女性も無料で接種できる(平成9~17年度生まれ:誕生日が1997年4月2日~2006年4月1日)。さらに現在、男子への接種も定期接種とすることが検討されている。

SHALさんとご家族の「多くの人に『子宮頸がん』を正しく知ってほしい」という想いを受け取ってほしい。

後編では、SHALさんの人となりとアルバムに込めた思いを、さらに深く掘り下げていく。Takeshiさんが、多くの人に聴いてもらいたい楽曲として選んだ曲の歌詞も紹介する。

【後編】はこちらから
「希望でありたい」子宮頸がん告知から2年、バンドリーダーが語るSHALさんの生き方

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THE UNCROWNED (ジ・アンクラウンド) 2ndアルバム 「 WITNESS 」
レーベル:Walküre Records (ワルキューレ・レコード)

THE UNCROWNED ウェブサイト
https://uncrownedband.wixsite.com/uncrowned
Takeshi ツイッターhttps://twitter.com/takeshi_guitar_
SHAL ツイッターhttps://twitter.com/shal_uncrowned

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