《レペゼン地球解散トラブルを弁護士が解説》DJ社長を縛る「独占禁止法違反になる可能性がある」契約とは?

《レペゼン地球解散トラブルを弁護士が解説》DJ社長を縛る「独占禁止法違反になる可能性がある」契約とは?

  • 文春オンライン
  • 更新日:2021/06/11

《レペゼン地球解散の内幕》H氏に直撃取材「身内のもめ事だと思っていた」 DJ社長は5000万円の札束を見せて…から続く

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6月1日、YouTubeチャンネル「Repezen Foxx(6 月6日時点のチャンネル名)」で、公開された動画が話題を集めている。

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6月1日に公開したYouTube動画は6月3日時点で680万回再生されている

《自分でここまで大きくした会社をクビって……悔しいよ……》

動画で涙ながらに語っているのはRepezen Foxx(元レペゼン地球)のリーダーDJ社長だ。DJ社長は、レペゼン地球が2020年12月26日の福岡ドーム公演で突然解散した原因には、前所属事務所Life Group株式会社との諍いがあると主張している。

文春オンライン編集部は、DJ社長と、前所属事務所の筆頭株主兼代表取締役であるH氏の双方に取材(DJ社長編#1H氏編#2)。彼らの主張にはいくつもの相違点があるが、主にはこの6つが争点となっている。

1 Life Group株式会社の株を100万円でDJ社長が買い戻せるか
2 H氏からの4800万円の退職金要求は妥当か
3 H氏が楽曲の権利やレペゼン地球の商標権を主張するのは妥当か
4 メンバーとLife Group株式会社の専属契約は適切だったか
5 専属契約締結の方法は適切だったのか
6 H氏の経営は適切だったのか、背任や横領の疑いはないのか

それぞれの点で、「分がある」のはどちらなのだろうか。株式の譲渡や芸能関係の契約書について、それぞれ詳しい弁護士2名に話を聞いた。

「書面を交わしていない約束で、株を取り戻すのは難しい」

まずは、【1 Life Group株式会社の株を100万円でDJ社長が買い戻せるか】。

2015年1月、約6000万円の借金を背負っていたDJ社長に代わってH氏が100万円を出資し、Life Group株式会社を立ち上げた。DJ社長によると「H氏は、借金の返済が完了したら、設立時出資した100万円で会社を譲ると約束をしていた」ため、DJ社長は2019年初頭にH氏の持つLife Group株式会社の株を100万円で買い戻したいとH氏に主張した。

しかしH氏は拒否。文春オンラインの取材に対して、100万円で会社を買い戻させるという約束自体について、「覚えていないのでわからないです」と回答しており、双方の主張は平行線だ。

このやりとりに対し、「書面を交わしていない約束で、H氏名義の株を取り戻すのは難しい」と解説するのは、牛島信弁護士だ。牛島弁護士は一般企業法務、M&A、ガバナンスなどを専門分野にし、企業経営者等に対して、正しい企業統治に係る啓発や情報発信を行う「日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク」の理事長も務めている。

「問題点は口約束だったということ。法人を設立するにあたり、信頼関係があろうとも書面を交わさなかったということがDJ社長の最大のミスです。借金返済を済ませた後、DJ社長に全ての株式を譲渡するという内容の契約書を、この時点で結ぶべきでした。

また、仮に現在のLife Group株式会社の全社株を、会社設立当時の資本金である100万円で売買を行なった場合にも問題が発生します。設立当時に比べ、Life Group株式会社の売り上げは格段に上がり、会社としての価値も上がっていると考えられる。この状況でH氏が全社株を100万円で売ると、本来の株の価値との差額をDJ社長へ贈与したことになり、受け取った側に贈与税の支払い義務が発生してしまいます」

「この契約内容はタレントにとってあまりに不利」

2020年6月、この株の売買をめぐって、H氏がDJ社長にある契約書を送っている。そこには、4800万円の退職金をH氏へ支払うこと、楽曲の権利をH氏に委譲することなどが記載されていた。

DJ社長はこの契約書について「あれもこれも欲しいと要求された。自分たちの作った楽曲は自分たちで持っておきたい」と主張。ファンの間でも、【2 H氏からの4800万円の退職金要求は妥当か】【3 H氏が楽曲の権利やレペゼン地球の商標権を主張するのは妥当か】について議論されている。

前出の牛島弁護士が解説する。

「【2】についてですが、退職金の金額は、通常、会社に退職金規定がある場合はそれを元に金額を決定しますが、会社にその規定がない場合は自由に決定することができます。しかし、その金額の支払いを決定するには株主の合意が必要です。ですから今回は、共同代表で株主でもあるDJ社長に『退職慰労金支給に関する合意書』を送ったのでしょう。

もっとも、その金額の支払いのためには株主総会の決議が必要です。しかしH氏は過半数である51%の株を所有しているので、DJ社長が認めなくとも退職金の支払いは可能です。

【3】についても、H氏の主張が間違えているとは言えないでしょう。双方が取り交わした専属契約書には、権利帰属についての文面があり、それによるとレペゼン地球の商標権や楽曲の権利はLife Group株式会社に帰属していますから。DJ社長らは契約を終了した時点で、楽曲やグループ名を自由に使用できなくなります」

しかしながら、エンタテイメント法務や知的財産権関係、芸能トラブルなどに詳しい伊藤海弁護士は「この契約内容はタレントにとってあまりに不利」とも話す。

「確かに今回問題となっている権利は、公の秩序や強行法規に反しない限り当事者が契約により自由にその帰属を決定できます。ですから今回のケースでも、DJ社長らがLife Group株式会社との契約を終了した時点で楽曲の権利やグループ名の商標権を手放すことになっても、法律上直ちに問題とはならないのです。

ただ、今回はDJ社長自身が制作している楽曲です。タレント側に立つならば、契約の終了とともにタレントに権利を帰属させるというのが望ましい。もしくは、契約終了時に協議をするというのがお互いに譲歩した内容ではないでしょうか。

エンタテインメント先進国のアメリカでは日本と違い、タレントが強い。タレントの才能があるからこそ作品が作られるという考えなので、その才能が生み出したものをタレントに帰属させるのは当たり前という考えがあります」

芸能活動制限については過去に訴訟へ発展した事例も

DJ社長らがH氏と和解しない限り、レペゼン地球というグループ名を名乗ったり、過去の楽曲を使用したりすることは難しそうだ。しかし一方で、伊藤弁護士によると契約書には「適切ではない」項目もあるという。

伊藤弁護士が着目したのは、《本契約終了後3年間、日本国内又は国外を問わず、乙は以下の行為を行わないものとします》とし、DJ社長が契約終了後に他の芸能事務所に所属したり個人事務所を設立することを禁じる条項だ。

DJ社長らはLife Group株式会社との契約を更新しなければ、3年間にわたって、YouTuberとして活動ができなくなってしまうとする契約で、「独占禁止法違反になる可能性があり、憲法上保障されている職業選択の自由(憲法22条1項)を侵害されかねない」(伊藤弁護士)という。【4 メンバーとLife Group株式会社の専属契約は適切だったか】を判断するうえで重要なポイントとなりそうだ。

「2006年12月、同じような事例で訴訟に発展しています。芸能事務所と2年間の専属契約をした歌手が、契約期間満了前に契約解除の申し入れをしました。契約書には、契約終了後2年間の芸能活動を制限する条項が記載されていたのですが、裁判所はこの条項について『実質的に芸能活動の途を閉ざすに等し』いため、『契約としての拘束力を有しない』と判断しています」(同前)

また、2019年9月25日には、公正取引委員会がタレントの契約終了後の活動制限について、プロダクション側に正当な理由がない限り、原則として独占禁止法違反にあたると発表。これを受けて、最近では「芸能事務所側はタレントとの契約書を見直すなどをしている」のだという。

「現在はタレントが不利になるような契約が見直されている時代です。そんな状況の中、DJ社長らに課せられた3年にわたる活動制限は長いと言わざるを得ない。タレントに過大な不利を与えるとされ、公序良俗に反するとされる可能性もあります。事務所はタレントの芸能生命を脅かす様な契約を行うべきではありません。

ただ、2006年12月の判例では、事務所は所属タレントの活動のために資金等を費やしていることから、所属タレントがその資金を上回る利益を事務所にもたらさないうちに専属契約が終了した場合は、『事務所が支出した費用を所属タレントが補填する』という契約には有効性があるとしています。

今回のケースでも、DJ社長らがLife Group株式会社が彼らに投資した額を上回る利益を還元していないのであれば、会社側がそれを補填する額を請求することができると判断される可能性はあります」(同前)

『優越的地位の濫用』に該当する可能性

DJ社長はこうしたタレント側に不利な契約を結んだことについて、文春オンラインの取材で「社長としての責任を果たせていなかったことは後悔しています」と悔恨の念を吐露している。しかしDJ社長は「何度か(契約書を)更新して締結しているが、ライブ前に楽屋でいきなり書面を持ってきて書いてと言われたこともあった」と、【5 専属契約締結の方法は適切だったのか】について疑義を呈してもいるのだ。

前出の伊藤弁護士は「民法上の原則からすると違法ではない。しかし、場合によっては『優越的地位の濫用』に該当する恐れがある」と見解を示した。

「契約書をライブ前の時間に楽屋などで締結したということ自体は違法ではありません。ただ契約内容を理解させないまま契約の締結をしたり、今すぐに契約を迫る、無理矢理契約をさせたりなどしている場合、『詐欺・脅迫』により契約が取消しの対象となったり、そもそも契約が『錯誤』により無効となる可能性があります。

また、タレント側が断りにくい立場にあり、立場が上の人物が不利な契約を迫った場合は、独占禁止法で禁止されている『優越的地位の濫用』に該当する恐れもあります。優越的地位には、タレント側の無知に付け込むような行為も該当し、タレントの年齢が若い場合は無知であると認められます。元レペゼン地球のメンバーのように20歳を超えたばかりなど、若ければ若いほど無知と認められる可能性は上がります。

『優越的地位の濫用』に該当する場合、独占禁止法第19条(不公正な取引方法の禁止)及び一般指定第14号(優越的地位の濫用)に抵触するとし、契約を無効にする『排除措置』などが命ぜられます」

事務所側はタレントが納得できる契約を結ぶ努力を

DJ社長とH氏の正当性を考える際には、契約書の内容が適切だったかどうかが大きな焦点になりそうだ。

加えて、前出の牛島弁護士は「DJ社長には、個人として49%の株主でもあるのなら、H氏の経営が適切だったかどうか追及する権利がある」とも語る。【6 H氏の経営は適切だったのか、背任や横領の疑いはないのか】という点だ。

「DJ社長は、H氏が、高級ブランド店での買い物や複数の賃貸マンションなど私的な用途で経費を使ったこと、本来は計上すべき売上金の一部を計上していなかったこと、勤務実態のない親族に給与を支払っていたことなども主張しています。この主張が事実であれば、H氏を背任や横領で刑事告訴することができます。

DJ社長はLife Group株式会社の株を49%保有している株主です。株式を有する株主は、会社に対して書面をもって、取締役の責任を追及する訴訟(会社による責任追及等の訴え)を提起するよう請求する権利があるのです」

DJ社長とH氏のすれ違いはどこで起きてしまったのだろうか。前出の伊藤弁護士は「私見になってしまいますが」と前置きし、こう語った。

「大前提として、契約は芸能事務所、タレントの双方が好ましく納得できるものであるべきです。そのためには、事務所も目先の利益だけでなく、中長期的にタレントが所属しやすい環境になる契約書を作成することが望ましい。

これまで様々なタレントやアーティストの相談に乗りましたが、人気が出て伸びる人は、事務所との信頼関係が厚いことが多いんです。だから、事務所側は自社の利益を守りながらも、タレントが納得できる契約をする努力をすべきです。タレントを拘束したり、不利にさせる契約は、結果的に自分の首を締めることに繋がってしまいますから」

タレントと事務所のトラブルは後を絶たない。DJ社長とH氏はどのような条件で決着を迎えるのだろうか。

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))

「文春オンライン」特集班

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