たった3語で地球上どこでもピンポイント、メルセデスが採用する最新ナビ

たった3語で地球上どこでもピンポイント、メルセデスが採用する最新ナビ

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2017/09/18
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いまや、クルマに地図を乗せている人は少なくなっただろう。日本で開発されたカーナビと呼ぶGPSナビが普及してきたからね。

でも現実には、カーナビにイライラすることも少なくない。使いにくいシステムもあるし、特に輸入車のカーナビは残念ながら情報が古いこともある。また、目的地に近づくと勝手に案内が終了になったり、完全に1ブロックずれていることも。

そんな不便さを解決する革命的なシステムが、What3Words(以下W3W)だ。使い方はとても簡単だが、確実に目的地の住所を見つけ、案内してくれる。

ロンドンに生まれたスタートアップであるW3Wは、全地球を3m×3mの方眼57兆で区切り、それぞれに3つの単語をつけたのだ。このわずか3つの言葉で、誰でも正確に目的の地点を見つけ、それを他の人と共有することができる。しかも、曖昧さはなく、非常に精確に。

9月12日に開幕したドイツ、フランクフルト・モーターショーでは、メルセデス・ベンツがこの画期的な住所システムを同社の2018年型モデルから採用すると発表した。W3Wは、これまでに国連と赤十字社が紛争地域で活用している。

「メルセデス・ベンツは、住所システムが確立した先進諸国であっても問題は生じることを認識して、私たちのシステムの採用を決定した」と、W3Wのマーケティング担当、ジャイルズ・リース・ジョーンズは話す。「もちろん、メルセデス・ベンツ社のカーナビは、従来の方法も使えます。それに加えてW3Wが実現した3m×3mグリッドでの検索もできるようになります」

この新しい地点認識システムは、文字と音声いずれでも使うことができる。目的地に割り振られた3つの言葉を、1つずつ読み上げるとシステムがそれを理解して、間の「.」をはさんで表記してくれる。

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試しに、ニューヨーク市のメトロポリタン美術館を探してみよう。ここの3単語は「cage.rocks.gladiators」だ。もし、一文字違ったり多かったときも、心配ない。例えば、sがついている「cages.rocks.gradiators」と名付けられた地点は4000キロ以上離れたカリフォルニアに配置されているからだ。

また、音声入力した際、あなたがきちんと発音していても、初めの2つめの単語からsが抜けて、システムが「cage.rock.gladiators」と認識してしまうこともある。でも、それはイギリスのある地点になっているので、あなたが行きたい場所でないことは一目瞭然。一瞬で、自分の目的地を選択できるわけだ。

「似た言葉の組み合わせは、できるだけ距離を隔ててあるので、戸惑うことはありません」と、クレア・ジョーンズCCO。エラーを見つけ、正しい言葉や組み合わせを照会する機能も用意されている。また、サンプル数も多く、ひとつの単語がさまざまなアクセントで発音されることを、システムが学ぶようにしたという。

「このW3Wがいかに役に立つかを社会が認知し始めたので、これからいよいよ成長します。モンゴルとナイジェリアでは、W3Wが郵便制度として採用されました。ナイジェリアのすべてのバス停には、3語の組み合わせがつけられています。また、英・グラストンベリー・フェスティバルでは救急支援のためにW3Wが利用されました。会場が大きく観衆が多くても、これならピンポイントで救援が必要な人を見つけられますからね」とジョーンズ。

「また、国際配達サービスのアラメックスも、住所制度や居住者表示が徹底していないアフリカと中東で使い始めました」とリース・ジョーンズも自信を見せる。こういう成功例を見ると、メルセデスが業界で真っ先にW3Wを採用した理由も納得できるだろう。

ところで、これほど革命的なシステムの誕生には、どんなストーリーがあるのだろうか。

実はこのSF小説のようなアイディアの生みの親は、あるミュージシャンだ。彼は、住所表示の曖昧さに非常に不満を抱えていた。そして、友人である2人の数学者と共同で、地球を丸ごとマッピングし、どこへ行っても正確に目指す地点に行きつける方法を模索し始めたのだった。

同社の共同創立者となった発案者、クリス・シェルドリックには、確実に目的とする地点を見つける方法がどうしても必要だった。というのも、彼のバンド機材が演奏する場所から次の場所へ移動する際に紛失することが何度もあって、業を煮やしていたのだ。

2013年、ついにシェルドリックは、数学者のジャック・ウェイリー・コーエンとモウハン・ガイネサリンガムと共に、どうしたら最も信頼性が高く有効な住所システムを創れるか、ブレインストーミングを始めた。

3人が気づいたのは、どんなに簡素化しても18桁のGPSの組み合わせは複雑すぎて一般人には手に負えないということ。そして、アルゴリズムによって組み合わせられた3つの言葉なら、誰にでも覚えられるだろうという名案が生まれ、わずか3語で住所を表すというアプリケーションの最初のリストが創られた。

では、どうして彼らは57兆の方眼にしようとしたのだろう。まず地球全体を3m×3mのグリッド・パターンで区切るにはそれだけの数が必要だったからだ。3語ずつの組み合わせで、ひとつずつのグリッドにこの惑星で唯一の名前をつけるのに、4万語だとその3乗、64兆の組み合わせができる。57兆より少し余裕がある。

メルセデスベンツがそのカーナビにW3Wを採用したのに伴って、他のカーメーカーからのアプローチも始まっているそうだ。とある日本のカーメーカーとのディスカッションのために、近く日本にも来る予定だという。「来年は、中国、日本、韓国へ行きます。現地の言語でのシステムも開発します」とジョーンズは話す。

現在、地球をすべて覆うこのシステムには英語3語の組み合わせで住所が決められている。それを、モンゴルで実行したように、アジアの3か国でも現地語で作っていくというのだ。その中で一番難しいのは、使ってはいけない言葉を見つけ出すことだという。複数の意味を持っている語や、罵りに使う言葉も避けなければならない。「制作段階でそういう語は除外していきます。そして、アクセントにも注意します」

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W3W社のスタッフは現在15人だが、年内に30人位まで増やそうと計画されている。壮大なアイデアのアプリケーションだが、メインテナンスはそれほど必要ではないそうだ。

これまでこのアプリを採用した組織や企業、モンゴルやナイジェリアといった国々は、使っていくうちにこのシステムがいかに有効かを学習した。顧客対応も向上させ、コストを削減でき、何よりも人命を救うことができる、とジョーンズは胸をはる。

彼らは、W3Wをグローバル・スタンダードとすることを使命と考えている。ただし、今のところ銀行口座を開くなど法的な用途では使えない。でも、これからはW3Wを採用するメルセデス車に乗っていれば、もう道に迷うことがなくなることは確実だろう。

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