トランプ政権の難問:サウジとの距離

トランプ政権の難問:サウジとの距離

  • WSJ日本版
  • 更新日:2017/11/13
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【ワシントン】米トランプ政権は、長年友好関係にあるサウジアラビアと政策面でどれほど共同歩調をとるべきか、またサウジとイランの緊張が高まる中で共通の敵国イランにどれほど強硬な姿勢をとるべきか、という難問に取り組んでいる。米政権の現・元関係者が明らかにした。

サウジ政府が9日、市民にレバノンからの即時退去を命じたことで、イラン政府とつながりの深いレバノンのイスラム教シーア派組織「ヒズボラ」の影響力を巡る論争が激化した。米国によればイランが提供し、イエメンのシーア派系武装組織「フーシ」が放った弾道ミサイルを、サウジは数日前に撃ち落した。サウジは、これがイランの戦争行為に等しいと非難した。イランはフーシへの兵器の提供を否定している。

ホワイトハウスはサウジの主張を支持し、この問題でイランを糾弾した。ドナルド・トランプ大統領は、サウジが週末に実施した同国エリート層の粛清も支持する姿勢を打ち出した。

米政権内で分かれる意見

だがトランプ政権の複数の元関係者によると、中東におけるイランの影響力を弱めようとする米国の取り組みを巡り、政権内で意見が分かれている。

ある米政府の元関係者は「対イラン戦略をどのように実行するかについて、米政府内に統一見解はない」とし、「実際、手法を巡り大きな意見の隔たりがある」と話した。

国務省や米軍の関係者の間には、イランを刺激することを警戒する声もある。一方、ホワイトハウスや国家安全保障会議(NSC)の関係者からは、さらに強硬な手段を求める意見も聞かれる。

トランプ氏は先月、イラン軍関係者に新たな経済制裁を科すという新戦略を発表した。この戦略は、イランによるヒズボラへの支援を弾圧する上でサウジやイスラエルをはじめとする中東の同盟国との連携を強化することを想定している。イラン政府の姿勢が変わらない場合は、バラク・オバマ前大統領の政策から転換するお膳立てになる。トランプ氏は先月、イランが核合意の条件を順守していると認定することを避けた。

米政府の関係者によると、トランプ政権はイランの軍事組織「イスラム革命防衛隊(IRGC)」をテロ組織に指定することを検討している。だが米軍関係者は、指定すればイラクとシリアで代理戦争が勃発し、米軍が直接標的にされかねないと警戒している。

イスラエルとサウジの両政府はトランプ政権の新戦略を歓迎した。両国は米国がイランに対し一層強硬な手段を取ることを期待している。

一歩間違えば紛争に発展

だがトランプ政権の現・元関係者の一部は、サウジ政府が米国をイランとの予測不能で長期にわたる紛争に巻き込む可能性があると懸念。サウジが今年、カタールを孤立化させる動きに出たことに言及した。中東地域での利害対立の均衡を取ろうとするトランプ政権にとって、この件はいまだに解決されない頭痛の種だ。

レックス・ティラーソン国務長官は、サウジが主導するグループと、米軍が司令部を置くカタールとの対立関係の解消に素早く動いた。だがトランプ氏はサウジ政府の肩を持った。

元政権関係者は「一歩間違えば紛争に発展するという状況に、いかに対応するべきだろうか」とした上で「サウジには『激化する対立に関与すればどうなるか。米国はいつ、どのように巻き込まれるのか』と聞きたい」と語った。

サウジが市民にレバノンからの退去を命じたことは、中東に緊張がくすぶっていることを示す新たな合図だ。しかし、トランプ政権は直ちに対応を取らなかった。サウジ政府が支援するレバノンのサード・ハリリ首相はサウジ滞在中に突如、辞意を表明した。ハリリ氏の連立政権にはヒズボラも参画していた。ハリリ氏はイランとヒズボラが中東の情勢不安の原因だとしてきた。

トランプ政権関係者はサウジ首脳ととりわけ緊密な関係を築いた。イランを抑え込み、イスラエルとパレスチナの新たな和平協定を形成するという米国の取り組みの成否の鍵を、サウジが握っているためだ。

トランプ氏の娘婿で上級顧問のジャレッド・クシュナー氏は先月下旬にリヤドを訪問し、サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子と会談した。ホワイトハウスによると、両者はパレスチナ和平を中心に予定より長時間、協議した。ある米政府関係者によると、当時間近に迫っていたサウジ国内の粛清については一切、話題にならなかった。

クシュナー氏のサウジ訪問にはNSCナンバー2のディナ・パウエル大統領次席補佐官と外交交渉の特別代表を務めるジェーソン・ブラット氏が同行した。

一部の米政府関係者によると、サウジは国内の粛清やハリリ氏の辞任についてトランプ政権に予告しなかった。そのため、米国側は依然として事態の把握に努めている。

オバマ政権で中東政策担当の国防次官補代理を務めたアンドリュー・エグザム氏は、ハリリ氏が辞任したことで目先はヒズボラを弱体化させられる可能性もあるが、レバノンで宗派対立を招きかねないと指摘した。

エグザム氏は、最も喫緊の課題はイランからイエメンへの新兵器の導入だと指摘。これが軍事対立の激化を招き、ひいては重要な輸送ルートを危険にさらす可能性があるとした。「イランが地球のあの部分に対艦巡航ミサイルを持ち込むことの戦略的な含みを熟慮していたかは分からない」と、エグザム氏は話した。

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