『何者』がホラー映画である5つの理由

『何者』がホラー映画である5つの理由

  • シネマズ
  • 更新日:2016/10/19
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(C)2016映画「何者」製作委員会

現在公開中の『何者』は、一見すると若者の就職活動を描いた“青春ドラマ”な映画にも思えます。

しかし……はっきり言って、本作のジャンルは“ホラー”と言っても過言ではありませんでした。なぜ本作にここまで身が震える恐怖があるのか、その理由を以下に書いていきます。大きなネタバレはありません。

1.仲が良さそうだったのに、“気まずくなっていく”雰囲気が怖い!

本作は5人の男女(+理系の先輩)を主軸として、就職活動(以下、就活)の物語が展開します。彼らは、表面上は“仲良し”に見えますが……徐々に、徐々に、“それだけではない”ことに気付けるでしょう。

例えば、“就活対策本部”の部屋に住んでいるはずの二階堂ふみと岡田将生のカップルには、一般的な常識で考えれば、“おかしな”なところが見えていくのです。その他にも、良好に見える人間関係に、どんどんどんどん“ひずみ”が垣間見えていく…その“じわり、じわり”が怖いのです。

監督・脚本を手がけた三浦大輔さんは、『ボーイズ・オン・ザ・ラン』や『愛の渦』でも、「いたたまれない!痛い!この場からすぐに出て行きたい!」と心の底から思わざるを得ない、イヤ〜な“空間”をねちっこく(褒めています)描いていました。就活という人間関係がギスギスしやすい題材に、三浦さんは超適任と言えるでしょう。

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(C)2016映画「何者」製作委員会

2.自分の人生を決めなければいけない就活そのものが怖い!

この映画に限らないことですが、就活とは今後の自分の人生が変わってくる大問題です。みんなが必死になるのは、当然でしょう。

作中でそのことを最も意識しているのは、有村架純演じる女子学生です。彼女は単に自分のやりたいことだけを選んではいられず、家庭や経済的な問題のために、より真剣に就活をしなければならなくなるのです。

その一方で、岡田将生演じる青年は、「俺は俺で生きていたいからさ」と、就活自体に価値を見出しておらず、自分という人間に価値を付加していこうと考えている男です。しかし……その気持ちは、彼の意思に反して、変わらざるを得なくなっていきます。

こうした問題と恐怖は、タイトルの『何者』にも表れています。就活で面接やエントリーシートなどに落ちると、自分を丸ごと否定されたような気持ちになる、単に生活がかかっているだけでなく、自分が“何者”にもなれないような気もしてくる……。これがホラーでなくて、なんと言うのでしょうか。

なお、その他の登場人物も、さまざまな就活生の姿を、極端にデフォルメしたような性格付けがなされています。きっと、本作を観ると「こいつは自分に似ているな」「いや、あっちにそっくりな面もあるな」と共通点を見つけられるのではないでしょうか。

こうして自身を登場人物に投射することで、より就活の問題を身近に感じられるようになっているのも、本作の優れたところの1つです。

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(C)2016映画「何者」製作委員会

3.“他者への偏見や嫉妬”や“自分へのウソ”が怖い!

佐藤健演じる主人公は、大学内で同じ劇団サークルに所属する友人のブログを読んでおり、その内容に辟易しています。その理由の1つは、“まだやりきってないのに、「これがんばっていますアピール」をしている”から。彼は、そういうことを“痛々しい”と勝手に認識し、他人を見下しているところがあるのです。

さらに、ある人物が“自分もいい感じに就活が進んでいる”ことをウソでもいいからアピールしたり、自分を過度に表現しすぎるがあまりに他人からドン引きされてしまうシーンもあります。

そして、こうした“他者への偏見や嫉妬”や“自分へのウソ”は、後でしっぺ返しとなり、登場人物たちをさらに苦しめていきます。“自業自得”と言ってしまえるものではありますが、彼らがそれを“せざるを得ない”心理状態になっていることが、怖いのです。

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(C)2016映画「何者」製作委員会

4.SNSに書き込まれている内容が怖い!

作中では、登場人物の考えが“140字の文字”で表されるときがあります。そう……Twitterです。本作ではTwitterなどのSNSを使いながらの、現代ならではの就活のやり方が描かれるのですが、これもまた“ある理由”により、怖くて仕方がないのです(詳しく書くとネタバレになってしまうので控えておきます)。

また、作中では、企業側がメールアドレスから簡単にSNSのアカウントを検索し、学生の素性を調査しているという事実も提示されています。自分の(ときには偏見や嫉妬に満ちた)考えを、誰にもわからない人間に“読まれてしまう”というのは……これまたやっぱり怖い!

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(C)2016映画「何者」製作委員会

5.映画でしかできない演出が怖い!

本作は朝井リョウさんによる同名小説が原作であり、大筋の物語はほぼそのまま映画で描かれています。

しかし……終盤の“とある演出”は完全に映画オリジナル、それも、絶対に小説ではできない、“映画ならでは”の手法が使われているのです。

これにより、本作がより“ホラーであること”が強調されています。次々と表現される“それ”を見たときは「勘弁してくれ!」「もうやめてくれ!」と叫びそうになってしまいました。

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(C)2016映画「何者」製作委員会

まとめ.人生に立ち向かうという恐怖を乗り越えてこそ、見えてくるものがある!

本作は、世間的にはかなり賛否両論を呼んでいるようです。爽やかな青春モノではなく、ギスギスした人間関係が描かれている、居心地が悪すぎる空間ばかりを描く、人間の醜いところを見せる、という作風なのですから、合わない方も当然いるでしょう。

しかし、そうした作風に意義を見出せる若者には、本作を大いにおすすめできます。なぜなら、映画を通じて、現実で誰もが直面する、就活という大問題への“準備”ができるからです。

もちろん本作は、これから就活をする方に具体的なアドバイスを与える映画ではありません。しかし、ある一定の“間違い”には気付くことができるのではないでしょうか。とくに、“現実世界でのコミュニケーション”においては……。

同じく朝井リョウ原作による映画『桐島、部活やめるってよ』は、他者の見方や、自分の浅すぎる価値観などを、“痛々しいまでに”見せつける傑作でしたが、本作も、観る人の中にあるかもしれない“痛さ”や“醜さ”を客観的に考えられる内容になっています。

“心がえぐられる”内容ですが、それはきっと人生の糧になるはずです。これから就活をする若者はもちろん、とことん“ゾッとしたい”人も、ぜひ劇場に足を運んでください。

(文:ヒナタカ)

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