世界的ヒット 中国ラブドール業界、主要メーカーの“S級B級製品”全部見せます

世界的ヒット 中国ラブドール業界、主要メーカーの“S級B級製品”全部見せます

  • 文春オンライン
  • 更新日:2019/05/27

米中貿易戦争といったハードな話題はさておくとして、最近の中国B級ニュース界隈で人気の話題のひとつが、本来は男性向けのアダルトグッズである「ラブドール」の著しい進歩だ。おそらく、この手の中国ラブドール・ニュースの先駆けになったのは、私が2017年秋に『SAPIO』(2017年11・12月号)で報じたAI搭載ラブドールの記事である。

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5月20日、私は中国の性事情に特化した新著『性と欲望の中国』を文春新書から刊行した。同書中では、大連の中国最大手ラブドールメーカーのEXDOLLへの工場見学記や、内陸部の貴州省の山奥でラブドール8体と暮らす「ラブドール仙人」の自宅にホームステイした話、仙人と一緒に上海の性文化展(チャイナ・アダルトケア・エキスポ2018)に行った話など、知られざる中国ラブドール事情について詳しく紹介している。

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※貴州省の自宅で取材を受けるラブドール仙人(右)。未来に生きている60歳。2018年5月に仙人自宅で安田撮影

だが、同書でも紹介しきれなかった話もある。例えば、群雄割拠の状態にある中国の主要なラブドールメーカー各社の詳しい紹介と、その製品(主に造形クオリティ)についてのレビューだ。業界最大手である遼寧省大連市のEXDOLLについては『性と欲望の中国』のなかで詳述したので、以下はそれ以外のメーカーについてご覧いただこう。

イケメン社長、イケてるドールを作る

まず、トップバッターとして紹介するのは広東省東莞市に本社を置く人造人科技(GYNOID、RZRDOLL)だ。ドールの造形師で会社のCEOでもある一刀氏は、30代前半ぐらいの爽やかなイケメンである。

一刀氏はもともと映画の大道具を作っていたらしく、同社のシリコーン製ドールの造形技術はかなり高い。ラブドールは通常、オリエント工業などの日本メーカー製品を含めてヘッド部とボディが別々に作られる(なのでメンテナンス時などは頭を外す)のだが、人造人はなんとヘッドとボディが一体化した製品の開発にも成功してしまった。

業界最大手のEXDOLLが、やや萌え系の美少女ドールを得意としているのに対して、人造人は大人っぽいお姉さん系を得意としている。貴州省から上海の性文化展にやってきたラブドール仙人は、美少女系が好みなので「質は良いが趣味に合わん」とイマイチな評価を下していたのだが、人造人の造形レベル自体はEXDOLLと競える水準だ。

私は人造人の造形に感心し、彼らと微信(中国のチャットアプリ)の連絡先を交換した。結果、帰国後に同社の関係者から何度も「ラブドールを日本で販売する手伝いをしてくれないか!?」とメッセージが送られてくるようになった。副業としてやってみるのもアリかなーとも思うのだが、なかなか勇気ある第一歩を踏み出せないでいる。

なぜか社名が日本語のメーカー

次に紹介するのは、遼寧省瀋陽市に本社を置く中堅どころのメーカー、ドール奇她(Qita)である。理由はよくわからないが社名がニセ日本語だ。ドールの顔立ちの造形は美少女系であり、コンセプトとしては業界最大手のEXDOLLに近い。角を持つエルフっぽいモデルなど、ファンタジー系の製品も多く作っている。

ドール奇她の製品を仔細に眺めていたラブドール仙人いわく、同社は最近の技術の進歩がめざましい注目株のメーカーらしい。前出のEXDOLLや人造人科技を含めて、ここらへんまでは、必ずしも性的な用途を目的にせず撮影やコスプレのモデルとしてドールを購入するコレクターからも注目されているメーカーである。

ブヨブヨの素材でナイスバディ系ドールを作る

ここまで紹介した3社のドールは高級なシリコーン製なのだが、それよりも安価なTPE(熱可塑性エラストマー)を用いた製品を作っているメーカーも少なくない。TPEはゴムのような弾力性を持ちつつも、加熱によってプラスチックのように自由な成形ができる新素材だ。

とはいえTPE製のドールはシリコーン製のドールと比べて、製品の表面に油が浮きやすかったり独特のニオイがあったり、ドールの顔の造形がやや大味になったり……といった問題が生まれやすい。ただ、そこそこの外見のクオリティを保ちつつ、シリコーン製の3分の1~半額くらいの製品(市場価格が十数万円程度)を作れるので、市場において一定の需要がある。

TPE製のドールはシリコーン製と比べて触感がブヨブヨしているので、それを利用して「ぽっちゃり系」やナイスバディ系のドールを多く作っているメーカーもある。例えば広東省東莞市の俊影(JYDOLL)がそうだ。

また、広東省中山市の金三(WMDOLL)は、もともとマネキン会社からラブドール製造に鞍替えしたメーカーで、やはりTPE製のドールを作っている。ドールの造形はけっこう微妙なのだが、女社長の劉さんが相当なやり手であり、商売っ気が強い会社である。

金三も、AI搭載のラブドールの商品化に成功したと主張しており、日本でも『SPA』や『クーリエ・ジャポン』など複数の媒体で紹介されている。ただ、私が実物を観察したり、YouTubeに上げられた動画(WM Doll Interview,Shanghai ADC Expo)を見たりするかぎり、会話AIの品質はあまり高くなさそうだ。

中国のラブドールメーカーは、なぜか特定の省に集中するという特徴もある。EXDOLLとドール奇她がある北方の遼寧省と、人造人科技や俊影・金三などを擁する南方の広東省が、中国の主要なラブドールの「産地」である。さらに、後述するもっとチープなドールを作っているメーカーは、浙江省の寧波市や温州市に拠点を置いている例が多い。

もっと“アレな”ドールは浙江省で作られる

いっぽう、TPEすら使わず、ビニール風船やキューピー人形みたいなチープなドールを作り続けているメーカーもまだまだ存在している。比較的高級感がある等身大人形を指す「ラブドール」ではなく、「ダッチワイフ」という表現を用いたほうがしっくりくるようなドールたちだ。

これらのドールは1体あたり、日本円で千円~数万円程度と激安である。いちばんチープなドール(すでに「ドール」と呼んでいいのかも不明)ともなれば、以下のような感じだ。

中国では市場の拡大に伴い、ラブドールやダッチワイフの不法投棄も社会問題化しており、用水路などに捨てられたドールを死体と勘違いした住民による通報で警察が出動する事件も相次いでいる。

同様の事件が多いためか、最近はみんな慣れっこになっているらしい。2017年3月には広東省広州市で住民から「川にダッチワイフが捨てられている」と通報があり、警察が当該の物体を引き上げてみたところ本物の遺棄死体だったという事件も起きている。

性と欲望と格差の中国

かつて計画生育政策(一人っ子政策)のもとで親による意図的な「産み分け」がなされた影響もあって、現在の中国では女性100人に対して男性が118人程度(他国であれば105人程度)と男女比が極端に偏っている。貧富の格差が大きいこともあって、一生結婚できない男性は3000万人規模にのぼるとも見られている。

EXDOLLや人造人科技などの高級メーカーの顧客層には、一種のコレクションや癒やしアイテムとしてドールを購入するような人たちも少なくない。なかにはコスプレが趣味の若い女性が、等身大の着せ替え人形として買う例すらある。だがいっぽう、ドールの価格が安価で造形がチャチになっていくほど、貧しい暮らしのなかで異性を求める人たちの生々しい欲望が垣間見えるようになる。

性と欲望の世界からも、中国社会の裏側がちょっとだけ見えてくるのだ。

(安田 峰俊)

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