NASA、ドローンで土星の衛星タイタンを探査へ - 生命の痕跡探す

NASA、ドローンで土星の衛星タイタンを探査へ - 生命の痕跡探す

  • マイナビニュース
  • 更新日:2019/07/05
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米国航空宇宙局(NASA)は2019年6月28日、土星最大の衛星であるタイタンに向けて、ドローン型の無人探査機「ドラゴンフライ」を打ち上げると発表した。

打ち上げは2026年、タイタン到着は2034年の予定で、空を飛んでさまざまな場所に赴き、生命の起源や痕跡などを探る。

○土星の衛星タイタン

タイタンは土星を回る衛星のひとつで、62ある土星の衛星のなかでいちばん大きく、太陽系のなかでも、木星の衛星ガニメデに次いで2番目に大きな衛星である。体積だけでいえば、惑星である水星よりも大きい。

タイタンには、約97%の窒素と約3%のメタンを主成分とする大気があり、大気圧は地球の1.5倍、密度は4倍にもなる。地表の温度は約-180℃前後で、これはメタンの融点、沸点に近い。そのため、地球の水のように、タイタンではメタンが雲や雨、氷に変化して循環し、気候を作り出しており、さらにメタンの湖や氷の大地が存在することもわかっている。

また、メタンのような有機化合物は生命を作る材料としても知られ、そして現在のタイタンの環境は、大昔の原始地球に似ているとされる。さらに、タイタンの地下には液体の水が存在する可能性も指摘されている。

こうしたことから、タイタンを探査することで地球の生命の発生を理解する手がかりになり、あるいは、いまなおタイタンになんらかの生命がいる可能性もあるとされ、メタンのなかで生きる生命体の理論的な研究なども進んでいる。

タイタンは、1979年に「パイオニア11」が、1980年、81年には「ボイジャー1」、「同2」が通過して観測し、2004年にはNASAと欧州宇宙機関(ESA)の土星探査機「カッシーニ」も探査。そして、カッシーニに搭載されていた着陸機「ホイヘンス」がタイタンへの着陸に成功し、初めて地表の様子が明らかになった。

ただ、生命がいるのかどうかはもちろん、生命由来の複雑な有機化合物があるのかどうか、本当に原始地球と似た環境なのかどうかもはっきりとはわかっておらず、まだ多くのことが謎に包まれている。

○ドラゴンフライ

そうした謎の解明のため、NASAとジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所(JHU-APL)が開発するのが「ドラゴンフライ(Dragonfly)」である。計画は、NASAの大型宇宙探査計画「ニュー・フロンティアーズ(New Frontiers)」の一環として実施される。

トンボを意味するその名のとおり、ドラゴンフライはタイタンの空を飛ベるマルチコプター型のドローンである。この能力により、数十か所の地点を転々と探査し、化学組成や、生命の可能性を探る、きわめて野心的なミッションである。

タイタンは地球より重力が小さく、そのうえ大気の密度が高いため、地球よりも効率よく、言い換えれば簡単に空を飛ぶことができる。また、地球以外の天体の空を航空機が飛んだ例はなく、成功すれば世界初となる。

探査機の質量は450kgほどで、探査機本体の大きさはソファーに近い。各ローターからローターまでの寸法は、それぞれ約3mほどになる。ローターの直径は約1mで、機体の前後左右、4か所に装備。また、各ローターは2枚重ねになっており、1枚が故障しても、もう1枚だけで飛べるようになっている。

飛行をはじめとする動力源には電気を使う。ただ、タイタンは太陽から遠く、地球の1%ほどしか太陽光が当たらないため、発電は放射性同位体熱電気転換器(RTG)を使って行う。ただ、RTGでは常時ローターを回し続けるだけの発電量が生み出せないため、いったんバッテリーに充電し、それにより飛行。バッテリーが残り少なくなったら着陸し、RTGで充電する、というサイクルを繰り返す。

ドラゴンフライの飛行速度は時速36km、最大で4kmの高度まで上昇し、1回の飛行あたり8kmほどの距離を飛べるという。

なお、地球と土星との間は、光の速度でも1時間以上かかるため、地上から無線操縦することはできない。そのため、ドラゴンフライは自律飛行できる、本当の意味でのドローンである。

探査機には、タイタンの地形をパノラマで撮影したり、着陸した先で岩石などを顕微鏡のように細かく見たりできる複数のカメラや、地表の化学成分などを分析できる質量分析計、地表や大気の組成を調べるガンマ線スペクトロメータと中性子スペクトロメータ、そして気象センサ、内部構造を調べるための地震計などを搭載する。

打ち上げは2026年の予定で、2034年にタイタンに到着。着陸場所は赤道の北にある「シャングリ・ラ(Shangri-la)」と名付けられた砂丘地帯が候補となっている。ドラゴンフライはカプセルに入った状態で大気圏に突入。パラシュートを開いたり、カプセルや耐熱シールドを分離したりしながら降下し、ある高度まで降下したら、パラシュートも切り離して自律飛行に移り、着陸できそうな最初の場所を探す。その後、「セルク(Selk)」と呼ばれる直径約90kmのクレーターを目指して飛行。セルクには、有機化合物があるほか、過去には水もあったと考えられている。

運用期間は地球時間で2年間の予定で、その間、ドラゴンフライは約175km以上飛ぶことができるだろうとされる。これは、すべての火星探査機がこれまでに走行した距離の2倍に匹敵する距離になる。

ドラゴンフライの主任研究員を務めるElizabeth "Zibi" Turtle氏は、「タイタンはとても素晴らしい、そして複雑な目的地です」と語る。

「地球において、どのように生命の成分から生命が発生し進化してきたのかは良くわかっていません。ですが、その過程で見られたであろう前生物化学(Prebiotic Chemistry)に関する多くのことが、いまのタイタンで起こっていると考えられます。私たちはタイタンでなにが起こっているのか、なにが待ち受けているのか、探査できることに興奮しています」(Turtle氏)。

いまからあと約20年後には、タイタンに秘められた多くの謎の一端が明らかになるかもしれない。

○出典

・NASA's Dragonfly Mission to Titan Will Look for Origins, Signs of Life | NASA

・Destination: Titan

・NASA Greenlights Dragonfly, a Quadcopter Mission to Titan | The Planetary Society

・Dragonfly

・Overview | Titan - NASA Solar System Exploration

著者プロフィール

鳥嶋真也(とりしま・しんや)

宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。

著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。

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