朴槿恵大統領の「辞意」表明は、超高度な政治的奇手

朴槿恵大統領の「辞意」表明は、超高度な政治的奇手

  • ハーバー・ビジネス・オンライン
  • 更新日:2016/12/01
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photo by Republic of Korea via flickr(CC BY-SA 2.0)

11月29日午後2時30分、青瓦台において韓国・朴槿恵大統領が3回目の国民へ向けた談話を発表した。約4分を超える談話の内容は以下の通り。

(談話内容の抜粋)
・自身の不察により国民に迷惑掛けたことを謝罪
・政治生活18年間、国家と国民のためにすべての努力をささげた
・一度たりとも自身の私益を求めなかったし、私心を持つこともなかった
・今回のことも国家のために推進したことであったし、個人的な利益は求めなかった
・自身の周辺について管理が出来ていなかった。
・今回の事件の経緯については、近日中に詳しく話す
・自身の任期短縮を含めた進退の問題を国会の決定に委ねる
・国政の混乱を最小化し、安定的に政権の委譲が出来るならば大統領職を辞する

ポイントは2点ある。

今回の一連の事件の原因は、“自身が「周辺の管理を怠ったこと」で起こったことであり、大統領自身には、国家国益のためという思いこそあれ、私利私欲は無かった”という点。

もう一つは、“自身の進退は、任期短縮を含め、国会に一任する”と言った点だ。

週末ごとに100万人の国民から「下野」を叫ばれ、検察に「共謀者」の烙印まで押された大統領の注目の発言は、自身の容疑を否認し、そしてまだ下野しないということであった。

◆大統領の「辞意発表」の思惑は何なのか?

速報で流れたニュースの表題だけ見れば、朴大統領が早々に辞任するかのように受け取らがちだが、これは「崔順実ゲート事件」に関わる一連の政治スキャンダルで追い込まれた朴大統領の「奇手」であると思っている。

そもそも、今週の金曜日には野党を中心に、朴大統領の「弾劾訴追」の決議が国会にかけられる予定となっていた。国会の過半数(300議席)に満たない野党であるが、与党・セヌリ党からも「非朴系」と呼ばれる議員40名程が「造反」すると見込まれており、「弾劾」は時間の問題であった。

しかし今回の談話によって、「非朴系」の議員たちが「弾劾」に賛成しない可能性が出てきた。本人が「辞意」を発表したのだから、無理やり「弾劾」をする必要はない。与党議員として造反のリスクを負う必要もない。野党の「弾劾訴追」の決議が空転する公算が高くなった。大統領の談話発表後、与党議員から弾劾日程の再検討の声も上がっている。

仮に「弾劾訴追」を行わなければ、朴大統領のいう「任期短縮」へと舵が切れる。

大統領の任期や権限等は韓国憲法に明記されているので、「憲法改正」を行わなくてはならない。安定的な政権の委譲が大前提であるならば、「憲法改正」も慎重にならざるを得ない。

一言で「時間稼ぎ」だ。なんのために。一つは国民世論の鎮静化を図るため。もう一つは、次期大統領たる人物の準備を整えるため。大統領の権限の矮小化も視野にある。国政を大統領の手から離し、議会制民主主義への移行のステップを踏むかも知れない。

◆新たな権力者の「防弾盾」に成り果てた朴大統領

そもそもの大統領の任期は2018年2月。同じ2月には平昌五輪も開催される。「崔順実ゲート」は平昌五輪にも深く触手を伸ばしており、ただでさえ工期の遅れや予算不足が憂慮されているなか、政治的な混乱が重なれば、開催自体が危機的な状況になる。

週末ごとに開かれる国民の「100万人デモ」、ゼロに等しい支持率、次々に検挙される容疑者たち、国政の混乱。このような状況下において、朴大統領が任期を全うするのは不可能である。

今回の談話が、朴大統領の真意なのか。それは誰にも分らない。ただ、いまや朴大統領は、崔順実の「操り人形」から、新たな権力者たちが時間を稼ぐための「防弾盾」になり果てた。「100万人デモ」の主催者たちは、今週末には「300万人」の参集を呼び掛けている。今回の朴大統領の「決断」が、逆に退陣を加速化させる結果になるかも知れない。

<取材・文/安達 夕 photo byRepublic of Korea via flickr(CC BY-SA 2.0) >

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