最高時速370km、最大重力加速度10G!世界最速のモータースポーツ「アクロバットフライト」の世界

最高時速370km、最大重力加速度10G!世界最速のモータースポーツ「アクロバットフライト」の世界

  • @DIME
  • 更新日:2016/11/29

3次元で戦う世界最速のモータースポーツ・シリーズ「レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ(Red bull Air Race World Championship)」。 空気で膨らませた高さ25mのパイロン(エアゲート)で作られた低空のコースを、最高時速370km、最大重力加速度10Gの中で競い合うレースだ。

以前、日本人で唯一シリーズへ参加する室屋義秀選手が操縦するアクロバット機に、報道関係者が招待され同乗できるという機会が設けられた。エアレースとはどんな世界なのか? 曲芸飛行との違いは何か? 世界最高峰のフライトテクニックとは何か? 恐怖におののきながらも、体験搭乗に向かった。

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■脱出用のパラシュートを着用しろ、って……

昨年、福島県福島市にある「ふくしまスカイパーク」で行なわれたフライト体験。使用された飛行機は『エクストラ300L』というドイツ製の機体だった。全長約7m、全幅約7.4mの複座機で、9000ccの水平対向6気筒空冷エンジンが絞り出す300馬力の出力は、2mの直径を持つプロペラへと伝えられ、時速400kmを超すスピードを生み出す。

この飛行機は、直線でのスピードを追求するというよりは、操縦性や回頭性を高め、クイックなレスポンスを目指すタイプ。空虚重量682kgと極めて軽量なので、その動きは機敏そのもの。最大10Gの重力加速度でも問題なく旋回が可能なモンスターマシンだ。エアレースでは基本構造がほぼ同じながら単座タイプで高性能の『エッジ530』、『コルバスレーサー』、『MXS-R』が使用される。

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地上での移動には大人1人でも押せるくらい軽いボディーだが、剛性(強度)はとても高い。そんな軽量骨太な飛行機に乗り込む前に、体験搭乗するメンバーが試乗についての説明を受ける。「コースの説明かな?」と思っていたら、さにあらず。なんとパラシュートを背負いなさいと言われたのだ。

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「万が一のためですよ、万が一」と係の人から声をかけられるが、一同総じて顔色が青ざめていくのがわかる。マジか……もう逃げられない状況であることに気づき、後悔の念をぬぐいきれなくなる。

■室屋選手のデモフライトにビビリは頂点へ

フライト直前に恐怖体験をした我々試乗体験者は、さらに奈落の底へと落とされることになる。室屋選手のデモフライトを見てしまったからだ。そのデモとは……。

滑走路から離陸すると一転、ほぼ垂直に空へと飛び上がっていく『エクストラ300L』。「小さくなったなぁ~」と思っていたら、急に180度旋回し、すぐさまロールを10回転もしただろうか、真っ逆さまに地上へ向かう。

そして地面すれすれまで落下したら反転、S字を描くようにスラロームしながら滑走路上をフル加速。そこからまた上空へ一気に垂直上昇、そのまま大きなループで背面回転。いくらなんでもこれはマズい! こんなフライトに耐えられるわけがない。心は完全に折れていた。

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室屋義秀さん。1998年、日本初の「競技志向型エアショーチーム」として、世界最高峰のエアロバティックス(曲技飛行)専用機スホーイ26で鮮烈なデビューを飾って以来、日本全国・世界各地を飛び廻り、各地でデモンストレーションを実施。2009年には世界最速のモータースポーツ・レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップに初のアジア人パイロットとして参戦し、ルーキーとしては異例の6位に入賞を果たす。2014年、3年ぶりに復活したレッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ、マスタークラス14名のパイロットの1人に選抜される。

■覚悟を決めて着座、そして離陸。

意気消沈する我々試乗部隊は、もはやまな板の上の鯉。観念して複座のフロントシートに乗り込む。タンデム(縦列)複座の本機は機長が後ろの席から操縦するので、試乗は前座で行なわれる。これがまた怖い。頼れるものが目の前にないのだから。

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乗り込むとすぐにスタッフのみなさんが安全のためにシートベルトをギュウギュウと締め上げてくれる。安全のためとはわかっているが、パラシュートを事前に装着しており、すでに我が身をギュウギュウ締め上げている上での荒行だ。離陸前からもう、ぐったりしてしまう。そうこうしているうちに9000ccのエンジンに火が入り、やがてインカムから室屋選手の優しい声が聞こえてくる。

「そろそろ行きましょうか。離陸前にエンジンをチェックしたらスタートしますね」

はいはい、わかりました。もう、観念してます、なんて反抗心を示す気持ちの余裕なんて無い。けれども、地上で見送ってくれるみなさんに意地で笑顔を作り、手を振る。行ってきます! 生きて帰って来れると信じてます……

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■離陸してちょっとだけ周回飛行。その後は文字通り〝真っ逆さま〟

滑走路の端まで移動しエンジンのチェックが終了すると、そこからエンジンが唸り音を上げて急速回転し、強烈な加速が始まった。強烈なGがかかり、体がシートにめり込む。ほどなくして離陸。グングンと高度を上げていくが、垂直上昇とまでではない。あれっ、もしかして楽しいかも~~

「左に見えるのは磐梯山ですよ~。旋回すると右手が仙台方向です」

意外なことに、室屋選手が空のガイドをしてくれた。ちょっといい気分になってきたぞ~

「さぁ、そろそろ行きますよ~。まずは垂直上昇して落下します」

ちょっと待って、ちょっと待って、お兄さん……あっ、あ~ぅ。ぐぐぐ……

声にならない悲鳴をあげながら踏ん張るものの、無重力状態からの急降下に為す術はなし。そして降下から反転、急上昇すると体がシートに押さえ込まれる。

「今、4Gくらいかかってます。大丈夫ですか?」

室屋選手が話しかけてくれるけれど、こっちは耐えるのに必死で、返事もおぼつかない。

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「では、次はロール(横転)します。最初はぐるっと一周。次は90度ごとに回転を止めます」

ロールとは進行方向に対して機体を回転するテクニック。一気に一周するのはまだ良いが、途中で止まると天地がまったく逆になる瞬間がある。あぁ、地面が上に見えるなぁ~。もう、どうでもいいや。この辺から抵抗することを一切あきらめた。

すると「飛んでいる」という感覚ではなく、「空に浮かんでいる」という気分になってきた。宇宙遊泳はしたことないけど、こんな感覚なのかな……自分は確かに、このフライトを楽しんでいる。

■5Gを体感。そして高速スラローム体験

心は完全に高揚していた。大丈夫、このフライト体験を楽しめる…そんな気分でいると、またまた課題を室屋選手が提供する。

「では、ループ(宙返り)します。加速の瞬間は5Gくらいになりますよ」

機体は一時降下し、そこから急上昇で円を描くように宙返りをする。降下から上昇に切り替わるタイミングでGがかかる。5Gとは、体重が5倍になる感覚で、実際に体感すると頭からグリグリとシートへ強烈に押さえつけられているようだった。声なんか出せないし、血の気も失せる。楽しいことは楽しいが、ここまでくると体がついてこない。

「最後にエアレースと似た動きをしますね。地上のパイロンをすり抜けるイメージで、左右にスラロームします。はい、行きます!」

室屋選手が参加する「レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ」は、地上15mを時速370km、10Gの世界で競技する。その疑似体験なので、恐らく切り返しの反応速度は1割にも満たないだろう。にもかかわらず、切り返す瞬間は体が左右に持って行かれるというよりは、横からひっぱたかれたかのような衝撃だ。

「バンッ、バンッ、バンッ…」

切り返す度に叩かれる。痛い。

■フライト終了。足が震えて力が入らない。

楽しくも厳しい、10分ほどのフライト体験も終了。着陸後に滑走路を抜けてエプロン(駐機施設)へと戻る。エンジンが停止し、機体も停止。コクピットを覆っていたキャノピーが開けられて無事帰還を果たした。シートベルトなどの安全装備を外してもらい、機体から地面へと降り立つが、足がガクガク震えてまともに立っていられない。楽しかったので心はウキウキしているけれど、体は悲鳴を上げているようだ。

これで5Gレベル。レースでは10Gになるというのだから、想像を絶する世界だ。このような過酷な環境でも冷静に機体をコントロールし、世界中の猛者達と渡り合っている室屋選手のタフさに心服する。

正直、吐き気もある。心もカラダも楽しむためには、並々ならぬ訓練を重ねなければいけないと思った。いや、訓練してもムリかもしれない。

3次元のモータースポーツとは、実に過酷な世界だ。機体を降りた後、室屋選手を見る目は一変した。ひたすら尊敬の一念である。

■関連情報

http://www.redbullairrace.com/ja_JP

http://www.yoshi-muroya.jp/

http://www.ffa.or.jp/fsp/

http://www.breitling.co.jp/

文/中馬幹弘 写真/江藤義典

編集・ライター。アメリカンカルチャー誌編集、アパレルプレスを経た後、モノ雑誌に長く関わり携帯電話やデジタル製品、ファッションなどトレンド情報に明るい。証券会社勤務があり金融事情通でもある。

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